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連鎖

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの三條×武智→飛来×武智。エロ少々だが有。起承転結の転しか無い感じになってます。

噛み締める唇を解かせようと指を差し入れれば、それは笛を扱うものだと知っているからか歯を立てない。
情事の最中ですらそんな理性の働く武智を、三條は可哀想にと想う。
明かりを抑えた寝所に二人きり。膝の上に抱え上げ貫く体はすでに溶け、無意識に揺れる腰を
もう止められずにいると言うのに、その表情にはいつまでも苦悶の色が残る。
眉間に深く刻まれた皺。
何故だろう。彼はいつも罰を受けるかのように、この行為に身を沈める。
確かに初め方は間違えた。それでもそれ以来無理を強いているつもりはないのに、武智の体と心の
乖離の溝は一向に埋まる気配を見せない。
それは淋しくも憐れな事だと三條は思う。だから、
含ませた指で口腔内を探り食い縛る歯列を割って、三條はその奥から彼の声を引き出そうとする。
「…あっ…やぁ…っ」
下肢をじわりとした緩やかさで突き上げながら、零れ落ちるその喘ぎが止められなくなるまで。
やがて含みきれなかった唾液が口の端を伝うようになる頃、三條は武智の口からそっとその指を
引き抜くと、それを武智の指と絡ませた。そして、
「自分のええようにしなさい。」
告げた言葉に、それまで力を失くしていた武智の瞳がわずかに揺れる。
傷ついた光をちらりと覗かせ、しかしそれはすぐに閉じられると、両の手を捕らわれたまま、
彼は自らその身を蠢かせだした。
「あぁ…っ…ん…ぁっ…」
快楽を追う。それはけして悪い事ではないだろうと思う。
人を欲しくなり、肌を合わせたくなり、共の快楽に溺れる事を望むのはけして罪ではない。
それを武智の身体は知っているようになのに、心だけは頑なにそれを受け入れようとしない。
「…ひ…ぁっ…もう…」
そして望むのはいつも終わり。
許してくれ。もう早く終わってくれ。その為ならば、と自分の上でその身体が淫らにうねる。
何もかもが裏腹な、そんな彼に沸き上がる感情は憎らしさと愛おしさ。
あぁ、自分までもが引き摺られる。
その自覚に微かな苦笑を浮かべながら、三條はこの時武智の手を引き寄せると、彼の望みを叶える為、
その体を自分の下に組み敷いていた。

「大丈夫ですか?武智。」
事が終わり、名を呼び、言葉なく茫洋と目を開けている武智の頬に手を添え、そう声を掛ければ、
それに彼は瞬間ハッと意識を戻したようだった。
「申し訳ありません…すぐに…」
上げすぎたせいか、すっかり掠れてしまっている声でそう言いながら、三條の腕の中から辞そうとする。
しかしこの時、三條はそれを許さなかった。
「まだ無理でしょう。もう少しここにおりなさい。」
言いながら膝の上、横向きに座らせた武智の身体を抱え直す。
それに武智は逆らわなかった。いや、逆らう力も無いようだった。
ぐったりと手足を投げ出し腕の中に収まる、その身がひどく重く感じるのは彼が疲れきっているからだと、
手に取るようにわかる。
相反する心と体に必要以上の気力と体力を削り取られている。
それでいてそんな行為から逃げようとしないのは、やはりこれが彼にとって罰だからなのだと三條には思えた。
「武智は、私が嫌いですか?」
それ故、思わず口をついた言葉。それに腕の中で武智の瞳が持ち上がった。
「……三條…さま…?」
「おまえはいつも私とこうする時つらそうだ。それは私が嫌いだからですか?」
「…そんな事は…っ」
「ならば好きですか?」
「…………」
「好いた相手にも、このような抱かれ方をするのですか?」
「…この…ような……」
言われた言葉に、戸惑うような武智の呟きが零される。
反応する所はそこなのか、そう思えば少しだけ可笑しくて、三條はこの時腕の中の武智を肩を
強く抱き寄せるとその言葉を続けた。
「別に責めているつもりはないのです。ただもしそうなら、たとえ好いた相手が私でなくとも
それは憐れな事に思えてね。」
「……あわれ…」
「望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事ではないのですよ。」
「………っ…」
「恥じる事でも、苦痛に感じる事でもない。それどころか自分の腕の中で共の快楽に溺れてくれれば、
それはひどく……愛おしい。」
伸びた指が武智のほつれた髪を撫でる。
それにこの時武智はひどく驚いたような目を向けてきた。
黒い瞳が行灯の淡い光を受けてゆらゆらと揺らめいている。
その動揺が、三條にはひどく不憫だった。それは、
「今まで、おまえにそう教えてくれる者は誰もいなかったのですか?」
彼の、おそらくは自分が知りえる事の無い、過去に対して。
「ならば、それはやはり可哀想な事です。相手も、おまえも。」
告げた言葉に返される声は無かった。
それは図らずしも己の推測の正しさを意味しているようだった。だから、
「変な事を言っていますね、我ながら。でもそう言わずにはおられぬほど、私はおまえが好きですよ。」
少しだけ笑みを含ませた声でそう囁き、三條はこの時もう一度武智の顔を胸元に押し付けるように抱き込む。
それに武智は抗わなかった。
しばしそのまま身を添わせ、その果て、

ありがとうございます―――

ひそりと耳に届いた小さな呟き。
それは好いた相手は自分ではない、別の者なのだと言う事を素直に告げていた。
けれどそれを三條は刹那、これでいいのやもしれぬと思う。
あれは、そんな自分だからこそ言ってやれた言葉だった。
これがもし、この愚直なまでに己に厳しく、それでいて誰よりも人寂しい魂を自分だけのものに出来る
可能性のまだある身であったなら、おそらく自分はこんなふうに彼を思いやる余裕など持てなかっただろう。
抱き寄せて、触れるぬくもりの柔さに知る恋情の深淵。
見える。
この魂が手に入るとなれば彼に想いを寄せる者はきっと、それはその想いが強ければ強いほど、

気が……狂うのだ――――

三條邸を辞し、その日予定していた他藩士との会合を済ませ、藩邸に戻ったのは日が西に傾く頃合だった。
まっすぐに自室へと向かい障子戸を閉めると、武智はそのままその場に座り込む。
頭がひどく重かった。原因はわかっている。昨夜、三條に言われた言葉のせいだ。
『望む相手と肌を合わせて気持ちようなる事は、けして悪い事ではないのですよ』
今日一日脳裏に巡っていたその言葉を、武智はそんな事……と胸の内で一人ごちる。
そんな事、これまで考えた事も無かった。
物心ついた頃から奪われ、汚されるだけの行為は、慣れてゆく身体と共に自分には嫌悪しか感じない。
だからこの身体も道具でいい。
けれどそんな嫌悪をあの人は罪ではないと言う。
好いた相手とならば違うのだと。
それどころか、それを知らなかった自分は可哀想だとまで……
うつむき、落とす視線を動かせぬまま、武智はそんな事はない、と心の中で否定する。
しかしそうする矢先にも、しかし…と揺れる想いが脳裏を埋ずめてゆく。
昨夜から何度この繰り返しに苛まれているのだろう。
その度に目の奥に浮かんでくる一つの面影に、武智はこの時その目元を苦く歪める。
浮かぶ顔はいつも自分を痛ましげに見下ろしていた。
心配そうに、そして時折つらそうに。
それを自分はずっと同情なのだと思っていた。
優しい者だったから、憐れに思い相手をしてくれているのだとも。
でなければ何故、わざわざこんな汚れていると知っている身を………
しかしそれでいて自分が彼に与えてやれるのも、またこの身体しかなかった。
心など伴わなくても男が快楽を追える事は嫌と言うほど知っている。
だから使ってくれればいいと思っていた。思っていたのに……
それすらあの人は互いが憐れだと言った。
ならば自分はどうすればいい。
思考の堂々巡りに知らず、深い息が口をつく。と、その時、
「失礼します。先生、お戻りですろうか?」
障子一枚を隔て、不意に聞こえた声に武智はびくりと肩を震わせた。
咄嗟に背後を振り返り、それでもなんとか返事を返す。
するとそれを合図とするように横に引かれた戸の向こう、姿を見せたのは収次郎だった。
「お疲れ様です……と、どうされたがですか?」
着替えもせぬまま座り込み、動けずにいた自分を見て、収次郎が不思議そうな顔をする。
しかしその眼差しはあらためてこちらをしかと認めると途端、怪訝な色を濃くした。
「なんや顔色が悪いようですが。気分でも悪いがですか?」
少しばかり慌てたように部屋の中に入ってきたその身が、立てずにいる自分の側近くに膝を
付いてこようとする。
しかし武智はそれを遮ろうとした。
「なんちゃあない。ちっくと疲れただけじゃ。」
言いながら逆に立ち上がろうとする。しかしそれはこの時、為される事はなかった。
不意に目の前を襲った暗闇。
それが目眩だと気付く前に、傾いだ肩に手が掛けられた。
「先生っ」
名を呼んでくる収次郎の声と、支える為にこめられた手の力。
それに武智は懸命に体勢を立て直そうとするが、この時目眩はなかなか治まってはくれなかった。
しばし収次郎に支えられたまま目を閉じる。それでも、
「……すまん…」
やがて平衡感覚がようやくに戻り、もう大丈夫だと武智はなんとかその身を起こそうとする。
しかしそれをこの時、収次郎は許してはくれなかった。
肩を掴む手に力を込められたまま、それを不意に強く引かれる。
えっと思う耳元に唇が寄せられ、落とされた言葉。それは刹那、武智の背筋を凍らせた。
「昨夜は三條様のお屋敷でしたか。」
「――――」
「ええ匂いがします。」
それは、おそらくは移り香だった。
昨夜一晩、その腕の中に包んでくれていた人の……
思い至った瞬間、武智は反射的に目の前にある収次郎の胸を強く押し返していた。
寄せていた身が離れる。
するとそんな自分の反応に収次郎は瞬間、困ったような、それでいてどこか悲しそうな顔を見せた。
が、彼はそれをすぐに表情から掻き消す。そしてその代わり、
「やはり顔色が悪いがです。布団を敷きますきに、今日は休んでつかぁさい。」
無理に作っただろう笑みをその口元に浮かべ、自分からその手を離してきた。
座り込んだまま動けない自分を置いて、立ち上がろうとする。
行ってしまう……
それに武智の胸はまた痛む。
傷つく?ならばそれは身勝手だ。支離滅裂ですらある。
しかし思い返せば、自分は彼に対していつもこうだった。
いつも……それはいったいいつから?
幼い頃からずっと側にいた。それが誰より近い存在だと思うようになったのはいったい…
前だけを向こうとしながら、それでいてどうしようにもなく揺れ惑う自分の背中を支えてくれた彼が
常に後ろにいてくれると知らず安堵するようになったのは……
しかしそんな彼に自分は与えられるばかりだった。
時折求められる、この身体ですらまともにやれてはいなかった。ならば、自分はこの先、
どうすればいいのだろう?
震える指先が宙に伸びた。背を向けようとする収次郎を止めるように、縋るように。
それに気付いた収次郎が少しだけ眉根を寄せる。
どういたがですか?先生?
こちらの身を案じるような声。
しかしそれを武智はいらないと思う。欲しいのは…わかって欲しいのは……
自ら触れれば伝わるだろうか。
心配げに戻ってきた収次郎の頬に触れる指先。
反らさず、目を見れば伝わるだろうか。
声が出ず、視線を絡ませる事しか出来ない。
けれどそれではきっといけない。だから懸命にせめて、
「……収次郎……」

名を呼べれば……伝わってくれるのだろうか―――

わからない。わからない事だらけだ。
自分は気持ちの伝え方などまるで知らない。
そんな事は……今まで誰も、教えてはくれなかった。

障子戸越しに禍々しいまでに赤い西日が部屋の中に射していた。
夕闇はもうすぐ近く。藩邸内では夕餉の時刻に合わせて人が騒々しく動き出す頃だろう。
ここにも誰かがまた声をかけに来るかもしれない。
そうわかってはいても今、武智を抱く欲を収次郎は止められなかった。
「……ぁ…あぁ…っ…」
布団どころか羽織一枚を脱がす手間さえ惜しんで、抱き込み畳の上に押し倒した身体は、
互いに袴だけを解き落とすような性急さでも、繋がる快楽に甘い声を上げる。
そんな武智の汗ばんだ首筋に収次郎は顔を埋める。
そして吸い込む、その匂いが堪らなかった。
それは武智自身のものでは無かった。土イ左のものでも、この藩邸内のものでもない。
自分のような者では気後れするような感覚を覚える、冷たくも高雅な薫り。
出所は一つしか思い浮かばなかった。
京の三條家。主家耶麻内家と縁戚関係にもあるその家の主と武智は、なにやら当初から
不思議と息が合うようだった。
それは思想だけでは無い。
剣術や学問、武に繋がるもの以外にも、絵や書などの趣に武智はよく通じている。
世の流れが流れでなければ、むしろそう言った方面に重きを置く穏やかさがその性質の根底にはある。
だから、仕方がないと思っていた。
この人はずっと苦衷の中にいた。
厳然とした国元の身分差の中、上に抑えつけられ溜まり続ける下の不満のやり場の無い怒りを
一身に受け止め、よもや暴走しようとする集団を懸命に理の方向へ導こうとしていた。
けれどそれは一人で背負うにはあまりに大きな負荷だった。
だから誰かに縋りたくなる、その心中は理解できた。
その誰かが自分ではない事は、悔しくも寂しい事ではあったが…
仕方がない、仕方がない。それでもこの人がそれで少しは楽になれるのならば。
けれどそんな自分の想いとこの人の弱さは裏切られた。
武智が心の支えとしていた者はある日突然、自分達の目の前から姿を消した。
事情はわからなかった。けれどそれ以来、武智はその瞳から光を消す事が多くなった。
言葉数は減った。笑う事も少なくなった。ただ悲愴なまでも厳しさで前だけを見るようになった。
それはまるで後ろを振り返り、そこにあったものを認める事を恐れるかのように。
強くて、不安定な背中だった。
何か一つのきっかけで瓦解してしまいそうな、強固ゆえの脆さがそこにはあった。
だから支えたいと思った。それがどんな形であれ。
昼の間の権謀術数。それに疲れたように時折壊れるその精神。
そんな人を身近で見つめ、手を差し伸べられたのは気付けば自分だけになっていた。
彼がいなくなり、自分だけになっていた。
それを自分は心のどこかで喜んでいた。
不在に付け込み、弱さに付け込み、それでも手に出来たその存在に心の奥、あったのは仄暗い悦び。
おそらくそれを天に見透かされたのだろう。
武智の前に現れた、自分にしてみれば雲の上のような存在。
その人の元に通うようになって、武智の雰囲気は明らかに和らいだ。
いつも張りつめていたような空気が解け、土イ左を出て以来、ようやく息が出来ているような表情を
見せるようになった。
それに自分が何を言えただろう。なんて事は無い。また元に戻っただけだ。
それであの人が楽になれるのなら……
武智不在の一人寝の夜に何度呟いたかわからない、しかしそれが欺瞞だと言う自覚は嫌と言うほどあった。
それが証拠に、
「…先生……武智…さん…」
今こうして腕に出来れば、後先を考えずその身を飢えたように貪る己を止める事が出来ない。
鼻腔を埋め脳裏をかき乱す、汗と見知らぬ男の匂いに対する情動と嫉妬。
昨夜の居場所と行為を何も隠せぬその身体が愛しくて、憎らしくて、でもやはり…愛しくて…
そんな愚かな自分に、武智はこの日少しおかしかった。
一度は突き離し、それでもすぐに手を伸ばしてきた。
頬に触れる。目を上げる。視線を絡め、そして、
彼はいつも抱かれる時、目を閉じていた。反らしていた。開いていても、そこに光は無かった。
それなのに今は……
「……しゅう…じろ…う…」
瞳がまっすぐに自分を見つめている。唇が動く。甘く掠れた声が自分の名を呼ぶ。
自分に抱かれてくれていた。
それに収次郎はこの時、人の欲の果ての無さをまざまざと思い知る。
仕方がない。そんな事は嘘だ。この人が楽になるのなら。でも苦しい。だってそれは、
「武智さん…わしは……」
ずっと想っていた。それはもう気が遠くなるほどの長い時間、一人だけを……だから、
「えぇ……しゅうじろう…えぇ…よ……」
訥々と不器用な響きで、それでも懸命に言葉を紡ごうとしてくる武智に、収次郎はもう己の本心を
抑え込む事は出来なかった。
自分のものにしたかった。他の誰にも渡さない、自分だけのものにしたかった。
背に武智の腕が回される。
縋るように、より深くに引き寄せるように着物越しに立てられる爪の感触。
それが収次郎の焦燥感を更に煽り立てる。
どうしたらいいのだろう。
焦がれる想いが、身の内で醜く昏い狂気に変わる。
過去の影を忘れさせる為に、包む優しい匂いを消す為に……
膝を取り、開かせた足の間の溶けるほどに熱い粘膜に乱暴なまでに深く捻じ込み、刻む己の存在。
上がる武智の悲鳴まじりの嬌声にも止められない自分が望むもの。
欲しかった。
それはどんなものでも構わない。
西日が射す。赤い光が畳の上に落ちる。その中に二人溺れながら、瞼の裏さえ物狂おしい赤に染めて、

今、この手にあらん限りの力を、収次郎はただ欲しいと願った――――

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
三條クリニックが書けたのは楽しかったです。


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