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オリジナル プラトニックラブ

生きていけるのだろうかと考えている、そんな時期だった。
それほど大層なことではないと、もの凄くよく分かっていたが、
言葉に甘え、俺はいつもそう思っていた。 

俺は、俺とYとの関係を、名づけることが未だにできない。
当時も、そして今も、当てはまる言葉を思いつけないのだ。
Yと俺の進む道の違いを認識してから、俺は気づいたことがあった。
このようなことを考えているのは、おそらく俺だけなのだ。

高校生の時、祭りの夜、何年生だったかはもう定かではない。
酒を入れ、浮かれていたYが、俺の首にキスをしたことがあった。
俺がその場のノリのまま「キスし返してやる!」とか何とか言い、
Yの頭を両手で掴んだとき、Yは逃げるように身をかがめ、
笑いながら、「口はだめだ!」と言った。
そのほんの一瞬、俺は笑いもせず、ひどく冷静に、「口はだめなのか」と思っていた。
その時の自分の心の平静さを、俺は今も、はっきりと覚えている。

Yにキスされたことを、俺がどう思ったのか、俺自身がそれを知ったのは
数年後のことだった。俺はその時、確かに喜んでいたのだ。
喜んでいたことを思い出したと言ったら正しいのだろうか、
俺はなぜか数年間、その時の感情を、そのように認識しなかったのだ。

Yとは小学校からの付き合いだったが、その後成人した俺達は、徐々に会わなくなっていった。
俺は、俺という人間のことをよく分かるようになっていたし、
Yもまた、そのような俺のことをよく分かっていた。
つまり、俺達は互いに、「俺達は気が合わない」ということを認め、
二人は、それぞれの好む方へと進んだのだった。

生きていけるのだろうかと、思っていた時期があった。
これは、その時の俺と俺の友人に関する、ひとつの記憶である。


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