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Are you cry?

半ナマ
ターミネーター2のT-800×ジョン

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 いままでポツリポツリと言葉を紡いでいたジョンが、急に黙り込んだので、"ボブおじさん"は「不思議そうな」とでも形容できる顔を向けた。
 トラックの下に潜り込んで作業をしているので身体ごと向けることは出来ないが、彼の機械仕掛けの頭脳はその必要はないと告げていた。
 作業を続けながら、首だけ横を向けてT-800は訊ねた。
「どうかしたのか」
 そこにあるはずのない気遣わしげな色を読み取って、ジョンは力なく笑った。
「なんでもない」
 ただ、ちょっとだけ不思議な気分だった。
 それは言葉では言い表せない気持ち。
 目の前のターミネーターから視線を外して、ジョンは彼の手元に目をやった。
「僕のパパは未来から来て、」
 少年は歌うようにつぶやいた。
「僕のママは指名手配されてる犯罪者」
 言いながら声をかけられる前にスパナを手渡す。
「そして僕は人類の最後の希望。未来のリーダー」
 少年は微笑んでいるのに。ターミネーターは少年がまた涙を流すのではないかと思った。
 人間がなぜ泣くのかはまだよくわからなかったが、わずかな経験で知覚したパターンに似ているような気がした。
 けれど少年は泣かなかった。ただほんの微かに笑っただけだった。
「泣かないのか?」
 だから素直に訊ねた。

 ジョンは弾かれたように顔をあげ、驚いた顔でT-800を見つめた。
「……君は未来から来たサイボーグ」
 そう言葉を続けて、じっと相手の顔を眺めた。
 ターミネーターも、ハシバミ色の淡い瞳を見つめ返した。
「…そうだ」
 なにか言わなければいけない気がして、同意を示した。
 答えに、ジョンはまた微笑んだ。
「どうしてそう思ったの?」
「…?」
「僕が泣くと思った?」
「違うのか?」
 問いかけの繰り返しに、ジョンはまいったなぁと笑った。
「君はやっぱり人間に見えるけど、サイボーグなんだね」
 その言葉の意味を定義することは難しかった。
 けれど言葉以外の部分で了解できたような気がした。
「普通の人間だったらって思うことがよくあったよ」
 唐突に、少年はつぶやいた。
 文脈も脈絡もない言葉についていけないサイボーグは、とりあえず続きを待った。
「ごく普通の10歳の子どもでさ。みんなと同じように学校へ行って、放課後は馬鹿みたいに遊んで。世界の終わりのことも、犯罪者で精神病院にいるママの事なんかも考えないで」
 少年は少しだけ遠い目をした。
 その表情の意味を、T-800は正確に窺い知ることは出来なかった。
 またわからないものが増えた。ターミネーターは思った。
 ジョンに関して理解の出来ないことは増えるばかりだった。
 今の表情もそうだ。

 相槌のないことにも慣れてしまったジョンは、目の前の男には構わず話を続けた。
「でもそれじゃ僕は僕じゃないんだ。パパはどこにでもいる普通の人間で。ママだってちょっと口やかましいけど戦争のことなんてこれっぽっちも考えていなくってさ」
 少年が、少し口篭もった。
「…"普通"がよかったのか?」
 感情の篭らないはずのサイボーグの言葉が妙に温かくて、ジョンは無性に泣きたくなった。
「……そうだね。"普通"なら、こんな目にあわなくてもいい。なんにも知らないで生きていける。きっとどんなに楽だろうね。でも……僕は僕だから」
 そう微笑む少年は、幼いながらも確かに人類のリーダーたるにふさわしい風格と自信を覗かせていた。
「それに…"普通"だったら、君に逢えない」
 ハイ、とスパナを受け取り、もう片手でレンチを差し出しながらジョンは言った。
「君に逢えて、よかったと思っている。だから、"今"のほうがいい」
 なんと答えるべきかしばし迷って、"ボブおじさん"は言った。
「私も、君に逢えてよかった、と思う」
 戸惑いがちに告げられた言葉に、ジョンの顔が驚きに染まり、そして満面の喜色に変わった。
「うん、ありがとう」
「なぜ礼を言う?」
 不思議そうな顔で、サイボーグが訊ねた。
「…嬉しいから、かな」
「……そうか」
 そこで、トラックの下での会話は終わりを告げた。
 二人は黙り込み、黙々と作業に励んだ。
 けれど無言の空間は、ほのかな柔らかさを漂わせていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
T-800←ジョンは鉄板だと思います


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