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江戸御菓子噺 其の弐

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガードラマの武智と飛来。>>347の続きで別ver。
ほぼ連投ですみませんが、あと数レスお借りします。

「なんですか?これは。」
「もらい物の菓子じゃ。今度は配れる数があっての。」
「今度は?」
「なんちゃぁない。」
武智が身支度を整えるのを待ちながら、通された部屋で収次郎は目の前に置かれた
風呂敷包みに視線を落としていた。
稽古が終わり、帰ろうとしていたところで呼び止められ、部屋で待つように言われた。
何事かと思えば、久しぶりに武智も藩の中屋敷へ顔を出すので共に行こうとの事。
そして汗を落とし着物を着替えた武智は、刀架から刀を取り上げると、それを腰に差しながら
この時、背後の収次郎にこう告げてきた。
「そう言えばおまん、伊蔵に何を言うた?」
「はい?」
唐突にそんな事を言われ、意味が把握できず間の抜けた声で聞き返す。
するとそんな自分に武智は微かに視線を後ろに流しながら、続きの言葉を口にしてきた。
「なんちゃあ嘆かれたぞ。わしは藩の屋敷におるよりも百井に世話になっておる方が
ええんやと、収次郎に怒られたと。」
「……っ、伊蔵っ、あいつ!」
「伊蔵を叱るなよ、収次郎。」
秘密裏に話した事を当人にばらされて、思わず声を荒げた収次郎に、しかし武智は穏やかな
戒めを告げてくる。そして、
「そんなに、わしに気を使うてくれんでもええぞ。」
まるでこちらの胸中を何もかもを見透かしたかのようにそう静かに諭してくる。
が、しかしそれに収次郎の憂いが取り払われる事は無かった。
いくら本人がどう言おうと、藩の屋敷にあればこの人は必然的に土イ左の下司全体の
まとめ役のような立場に立たされる。
それは言い代えれば、上司との交渉事において常に矢面に立たされると言う事と同義だった。
この人と上司との関係。
何を言われた訳でも、知った訳でもない。
あくまで邪推の域を出ない、しかしそれでも自分はこの人に必要以外に上司連中を近づけるのは
嫌だった。
それゆえに返事が出来ずに沈黙する。
そんな収次郎に武智はこの時、微かな苦笑を洩らしたようだった。
「おまんは、心配性じゃのう。」
柔らかな声の響き。それに収次郎がはっと顔を上げれば、そこには踵を返し、こちらに向け
優しい視線を落としてくる武智の姿があった。
「さて、行くがか。」
仕度が整った事を告げられ、収次郎は慌てて目の前の包みを手に取ると、立ち上がる。
しかしその間にも、目の中には先程見た武智の穏やかな表情が張り付いていた。
だから、
「…抱きたい…のぉ…」
無意識に自分の中に沸き上がった感情。
想うと同時に、目の前の武智の目が驚いた様に見開かれる。
その反応に収次郎はこの時初めて、自分が内心の想いを実際の声にしてしまっていた事に気付いた。
「あっ…いやっ、これはそのっ、そう言う意味やのうて…っ」
急ぎ取り繕ろうと言葉を発するが、それはなかなか意味あるものになってくれない。あげく、
「ただなんちゅうか、こう…柔らかそうや思うたら、触れとうなったっちゅうか、突つきとう
なったっちゅうか…っ…」
意味的には同じと言うか、むしろ変質的に更にまずいと言うか……
混乱してしどろもどろになる。そんな収次郎を武智はしばし無言で見遣っていたようだった。
だからその視線に居た堪れなさを感じて、収次郎はたまらず堅く目を閉じる。
が、そんな自分の胸元、不意にふわりと入り込んできた気配があった。
えっ?と思い、反射的に目を開ける。と、そこにあったのはひどく近くにある武智の姿だった。
「たっ、武智先生?!」
我知らず上擦った声が口をつく。
するとそれに武智は、やはりしばらくの間沈黙を守っていたが、それでもやがてこう呟いた。
「体は……別になんちゃあ変哲のない堅いもんじゃぞ。」
ひそりと落とされた、その言葉の真意を測りかねた収次郎が、思わずその顔を覗き込もうとする。
しかし武智はそれを許さなかった。その代わり、
「……それを、こんだけでええがか?」
重ねられた言葉。
許されているのかと理解をすれば、それは同時にそれだけと言われると少々困ると言う
欲深なものになった。
けれど、
「……はい…」
今は、目の前の僥倖を享受する事にだけ目を向ける事にする。
手にした包みごと、腕をその背に回す。
初めは触れるか触れないか程に恐る恐る。
しかしそれにも武智が逃げない事がわかれば、腕の力はたまらず強いものになった。
深く胸の中に引き寄せ、抱き締める。
強く、誇り高く、それゆえに脆く、心のどこかで己を厭うている人だった。
そんな人が抱き締められた腕の中で少しだけ可笑しそうに呟く。
「おまんも伊蔵も……阿呆じゃ。」
慕う自分達をそんなふうに言って笑う。
そんな武智が、今の収次郎にはひどく寂しく、そして愛しかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
先生を幸せにしてやりたかった。

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