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項垂れる曇り空

お借りします。
・邦楽、一角獣の双子コンビ(notカプ)
・年下組が仲良くしてるのが好きな人推奨。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

暖かくなってきたし遊ぼうや、と連絡をしてきたのは亜辺だ。
前に会ってからたいして間も空いていないのに、二つ返事で朝から車を走らせた。
いつもなら車に必ず積むゴルフセットに一瞬手を伸ばし、すぐに引っ込めた。
玄関から一歩外に出ると、青空とはほど遠い色をしている空が視界に飛び込む。

連絡をしてきたのは自分だというのに、わざわざ呼び寄せて置いて亜辺は何も考えていなかったらしい。
すっかり馴染みになったカフェに連れ出され、二人して今にも雨が降り出しそうな曇り空を見上げて
同時にため息を吐く。
「昨日夕焼け綺麗だったから、絶対晴れると思ったんだけどなー」
「夜の天気予報で雨降るって言うとったぞ」
「そっかー……」
「何じゃ、何の考えも無しに電話してきたん?」
「うん。ちょっと迷ったけどね」
今忙しいでしょ、皆。呟いた言葉は湿っぽい空気にじわりと解けて広がる。

怒濤の2年間を終えようやく各々が自分のペースで動き始め、
飽きるほど顔を合わせることはなくなった。
かといって、打ち合わせやちょっとした秘密の集まりは不定期にやっているし、
それ以外でも誰かと誰かがこそこそやってるのも知っている。
別に会いたければ連絡でも何でもすればいい。昔のように変に勘ぐられることもないし、
むしろ会いやすい環境になったと思う。

「何かさあ、ぎゅっと凝縮され過ぎちゃった感じしない?」
平気な顔をして自分たちは一人に慣れていたつもりだったのに、
実は全然そうじゃなかった、と気付いてしまった。
5人でいるときの独特の空気感や、バカなことをしてギャーギャー笑ってしまいには笑い疲れる、
そういう時間の居心地の良さを思い出し、その中に自分の居場所があることはとてつもない安心感があった。
「馬鹿騒ぎし過ぎたっちゅー見方もあるけどな」
「いいじゃん、そういうのがうちらっぽいじゃん。でも、失敗したかなあって思うこともあるけどね」
「何をよ」
「……現場行ってあの甲高い笑い声が聞こえないとさ、『あーそっか、今日は一人なんだー』って思っちゃって。
ま、俺の仕事だから当たり前なんだけど」
結局そこにいくんかい、とツッコミを心の中だけで入れ、頬杖をつく亜辺の横顔をぼうっと見つめる。
(……あー、あいつ今ツアーで飛び回ってんだっけか)
同じくツアー中の最年長と地元で仲良くやっていたことを思い出し、
灰が落ちかけていた吸い殻を灰皿に力一杯押しつける。
あのブログを見たことも知られたくないし、ちょっとだけイラッとしたことは
もっと知られたくない。プライドに賭けて。

「連絡すりゃーええじゃん」
「でもさ、『ごめんね、忙しいから~』とか言われたら心折れちゃうっしょ」
「中学生か、おまえ」
40過ぎて恋だの何だのの話題をこいつとすることになるなんて思わなかった、と冷めかけたコーヒーを啜る。
それこそ、再結成前の自分が亜辺にまで隠していたことと同じようなもので、
要はおおっぴらに言うか言わないかの違いだけだ。
ただ、隠していたつもりだったはずのその辺りのことは亜辺どころか周辺の人間にはバレバレだったらしく、
あの鈍感な海老にまで指摘されたのは未だに心外だ。
『多三男は隠せてたつもりかもしんないけど、だだ漏れだったよねえ?』
自慢げに胸を張る海老を睨みつける多三男、の図に呆れたように笑う彼もまた同じような状況の中にいて、
自由奔放に振る舞い続ける相手に振り回されるお互いを見ては苦笑いをするしかないのだ。今も。

「お土産買ってきてくれるんだって」
「海老が?」
「ん。買ってくから楽しみにしててね、とか言われちゃったらさー……待つじゃん、
俺そういうとこ素直だし」
「で、その連絡が来ないと。で、耐えられんから俺を呼び出したと。そういうこと?」
うん、と子供のように頷いた一つ年下の友人の頭を思いっきりはたきたいのを堪え、次の言葉を待つ。
「広島でその話、河弐っさんにしたら『成る程、んじゃ俺も買ってこ』って
言ってたらしいけど、連絡ないの?」
「……おっさん、絶賛合宿中だから。明後日帰ってくるけど」
「なら、そろそろ連絡来るんじゃね?」
「……だといいけどな」
相手のことだったらこんなにも親身に考えられるのに、俺たちは自分のことになると途端に素直じゃない。
お互いに一向に鳴る気配のない携帯をちらちら気にしながら次の煙草に火を点け、
違う相手のことを思い浮かべながら長く、それでいて甘ったるい雰囲気を漂わせるため息を吐いた。

本当に、恋なんてもんは厄介で仕方ない。
でも、そんな厄介な感情に振り回されてる自分たちは案外嫌いではない。

□STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
何言いたいのかよくわからなくなったけど、この2人の阿吽の呼吸以外の何物でもない会話が好きだ。
何だかんだでこの人らは事ある毎にこそこそキャッキャしてると思う。

  • 振り回される2人も、振り回す2人も愛しくって仕方がない -- 2014-09-07 (日) 21:35:20

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