余裕、時々焦燥
更新日: 2011-04-24 (日) 20:16:50
棚50「自信、時々嫉妬」の当主と保守
・・・を想像しながら書くも、オフなのでオリジナルとして読んで頂けたら
両方に妻子がいる設定です
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
りんごあめを持った少女が目の前の喧騒の中を駆けて行った。
母親は近くにいるのだろうか。
「あの子、近くに母親いるんでしょうかね」
隣を歩く彼の一言に頬が緩んだ。
「何笑ってるんですか」
「別に」
襟巻きをつまんで口許を隠す。髭を生やした隣の彼は、その風貌に似合わず
子供のように「気になるなあ」と口を尖らせた。
家族水入らずの初詣だったのだが、午後から関係者へ挨拶に行かねばならないので、
先に一人帰ることになった。
後ろ髪をひかれながら、とぼとぼ帰りの参道を歩いているところで
年下のチームメイ.トから声をかけられた。去年一番向き合うことの多かった人物だ。
彼もまた、家族と別れて一人での帰り道だった。
「スーツならこのまま直行しても良いんですけどねー。コレだから」
と、彼は袖口を持ってぴんと腕を伸ばす。
お互い、紺の着物に羽織を纏っていた。
「面倒なんですけど、この方が正月って感じしますよね」
「そうやね」
屋台の喧騒の中からやっと抜け出し、人通りのまばらになった通りに差し掛かる。
袖の中で組んでいた腕を解いた。
「お前それ似合ってるしな」
「へ?」
「男前やで」
「どの顔が言ってるんですか!」
普段は言えないが、こんな日くらいは良いだろう。
慌てる彼を見ているのも楽しい。
「そっちだって、めちゃめちゃ男前じゃないですか。大勢の人の中で一際格好よくて」
強い口調に思わず隣を向くと、彼の視線と合った。
一瞬で、捕えられた。
先程までの余裕は消え、どうにか逃れたいと焦りだす。
「・・・何言ってんの」
「だから見つけられたんです」
眼差しが強く刺さる。
いつの間にか二人の足が止まっていた。
からりからりと足音。背後から家族連れが通り過ぎる。
途端、目の前の彼のことよりも、先程の話を聞かれていたのでは、という恥ずかしさが増す。
それは彼も同じだったらしく「・・・すみません」と項垂れて歩き始めた。
「別にええよ」
隣に並んで歩く。ざ、ざ、と雪駄が地面を擦る音。
「お前に誉められて、嬉しくないわけないやろ」
ばっと彼は顔を上げる。
その視線に捕らえられないように、もう一度襟巻きで口許を隠した。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンデ カレラニキモノヲキセタイダケデシタ!
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