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境界の橋

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
タイガーなドラマの上司×武智で伊蔵→武智で涼真テイストもちょっぴりなエロ有り注意話。
自己矛盾でグチャグチャな先生を書いてみたかったが、他の何より文がグチャグチャに…
色々史実捏造+少し先の展開なので、それらがダメでしたらお避け下さい。

畳の上に光と共に色濃い翳を落とす橙色の蝋燭の灯り。
通されたのは屋敷の奥座敷だった。
その時点で何が起こるのかは容易く想像がつき、そしてそれはその通りになった。
待たされ、対面し、少し言葉を交わした後、さも当たり前のように手を伸ばされ、
圧し掛かられ、袴を剥ぎ取られた。
抵抗など出来るはずのない。そしてそれは相手も見透かしている。
だから散々に弄ばれた末に、力の入らなくなった下肢をうつ伏せの形で貫かれた。
何を塗り込められたのかもわからない接合部から立つ水音は、人払いがされ静寂の落ちる
室内に淫らに響き、耳を覆いたくなる。
けれどそんな事は許されるはずもなく、どころかその耳に背後から熱い息を吐く唇が寄せられ、
舌先で輪郭をなぞられるのと同時に耳朶に柔く歯を立てられれば、刹那背筋を這い上がる
痺れるような感覚に肌が震えた。
唇から溢れそうになる声は、認めたくない響きを纏う。
だから肩から落ち、手元でわだかまっていた着物の袖を懸命に噛んで息を殺す。
せめてもの抵抗。しかしそれはするだけ無駄な抗いだと言う事ももう自分は知っていた。
どれだけ真面目に誠実に生きようとしても、それだけではどうしても叶わない事があると
思い知らされてもうどれくらいの時が経つのだろう。
綺麗事だけでは何も出来ない。欲しいものを手に入れる為には捨てなければならないものもある。
悟り、身を汚し、心も汚して、そうしてまで望んだのはここでは無い遠い地。
名は江戸。
息がしたかった。光が見たかった。
愛する者も、守るべきものもここにはあったけれど、それでも一度でいい。外に出たかった。
自分が望んだ事だ。自分で決めた事だ。だから悔いなどしない。けれど、
腰だけを高く持ち上げられたその前に手を潜り込まされ、隠しようのない昂ぶりに指を絡められ、
その反応を耳元近くで揶揄されれば、内容より先にその言葉自体に嫌悪が沸いた。
国ではめったに聞かない流暢な江戸言葉。
生まれも育ちも江戸で、国元訛りなどまるで知らぬげなこの上役の口から溢れる言葉で
焦がれる程に求める唯一の光を汚されるのはたまらなかった。
『慣れているな、今までに望みを叶える為に何人咥え込んだ?』
そんな数などもう覚えていない。覚えていた所でしょうがない。
思い、無言を貫けば、不意にうつ伏せていた体を表返された。
そのまま投げ出された両の手首を頭上で一纏めに握り込まれる。
と、その形に瞬間、脳裏に蘇る声があった。
それはもう遥か遠くに思える昔に聞いた『あきらめてください』と自分に頼む優しげな声色。
それが今はひどく悲しく、縋るように自分を呼ぶ。
『こんなこと、やめてつかぁさい』
やめて……やめてどうなるのだ。誰が自分を助けてくれると言うのだ。
おまえにはわからない。自分は人の手など望まない。自分の事は自分でけりを付ける。
覚悟は出来ている。なのに……どうして……
今、眦に涙が伝い落ちる?
嫌だった。こんな涙は相手を誤解させ、喜ばせるだけだとわかっている。
案の定、上になり自分の顔を見た男は、下肢の繋がりを解かぬまま爛れた粘膜を穿つ動きを激しくしてきた。
畳の上、剥き出しの肩が擦れて赤くなる程に揺さぶられ、体を内から暴かれる。
嫌だ。
そう思うのに、噛み締める物の無くなった唇からは甘く掠れた嬌声が溢れ落ちた。
駄目だ。
そう思うのに、堅く閉じた目の端を流れ落ちる涙を止める事も出来ない。
綺麗なままではもういられない。いたいと望む資格も自分にはもう無い。
わかっている。覚悟もしている。それなのに、
『やめてつかぁさい、武智さん!』
心と体を乖離させる。
そんな自分の名を呼ぶ遠いその声が、今の武智には愛しくも……哀しいほどに憎かった。

喘ぎとも悲鳴ともつかない声を発し続けた喉は渇き、涙の流れ続けた目元は熱く腫れぼったい。
嬲られ続けた下肢は重く後始末などされているはずもなかったが、その不快さに耐え
武智が身を起こした時、部屋にはすでに自分以外誰もいなかった。
炎が揺れる蝋燭はかなり短くなっている。
それに過ぎた時間を思い、武市はおもむろに自らの着物に手を伸ばすと、そのあられもない着崩れを
無言で直し始めた。
襟元や裾を重ね合わせ、傍らにわだかまっていた袴にも手を伸ばす。
爪まで重い指先で、のそりと引き寄せる。その時、その袴の上からことりと落ちる一通の書状があった。
まるで投げ捨てられていたかのような、それを手に取り、開き見る。
中にあったのは旅手形だった。
自分が望み、払った代償として与えられたもの。
自分の物は既に持っている。
己が身一つならばなんとでも、どうとでも。
しかしそれ以上を望む事が、この国ではあまりに困難で……苦しい。
一方の与える側にしてみれば、それは胸先三寸の戯れに近い、軽い行為であるにも関わらず、だ。
たった一枚の紙片にさえ思い知らされる現実の昏い溝に、知らず指先に力がこもり、手にしたそれを
握り潰しそうになる。
けれど武市は寸前の所でそれを止めた。
そんな事をしたところで、何が変わる訳でもない事も自分は知っている。
どれだけの理不尽に憤ろうとこの紙自体は必要なもの。
湧き上がる感情とそれを押さえつける理性が交互に入り乱れ、結局は発露出来ぬ想いが澱となって
身の内に沈んでゆく。
積み重なってゆく。
それを自覚しながら、しかし指先はこの時手にした紙をもう一度丁寧に折り畳むと、それを静かに
懐へと収めていた。

土イ左の城下は上司と下司の居住区域がはっきりと分けられている。
屋敷を辞してその上司区域を抜け、本来の場所に辿り着いた時、それまで懸命に堪えていた武智の体の
倦怠感は限界を越えていた。
人通りの完全に絶えた町の橋の袂で、思わず倒れかかる様に欄干に手を掛け膝をつく。
口元に当てられる手。
気持ちが悪い。
それでも胃の中には吐く物など何も入ってはいなかった。
ならばいったい自分は何を吐き出せば楽になるのだろう。
苦痛に苛まれるその耳に、この時不意に聞こえた声があった。
「先生?」
聞き覚えのある、その声に反射的に顔が上がる。
視線を上げて見る。そこには橋の中央、手にした提灯の灯りでこちらを伺おうとしている伊蔵の姿があった。
どうして、と思うより先に確信を持った彼の方が提灯を投げ捨てる勢いでこちらに向け駆け寄ってくる。
「どういたがですか?先生!」
うずくまる自分を抱き起こそうと肩に伸ばされかけた手が、しかし寸前で触れていいのかと迷いを見せた。
「気分が悪いがですか?」
その代わり、心配そうに口早く告げてくる。
だからそれに武智はこの時、懸命に声を振り絞っていた。
「大丈夫じゃ。先方で少し酒が出てな…」
強がりと嘘。しかしその声を張る事までは出来ない。
それが彼の不安を更に煽ったのか、伊蔵はそんな武智に尚も言い募ってきた。
「なら、わしの肩をつこうて下さい。家まで送ります。ああ、でもわしじゃと背が足らんか。
これが涼真じゃったら、」
自らの小柄を嘆き、突然一つの名を出す。
それに武智は瞬間、臓腑に更に鈍い痛みが走るのを感じた。
「……ない…」
だから小さな呟きが唇から零れ落ちる。
「えっ?」
「今、涼真は関係ないじゃろ…」
静かながらも語尾がきつくなる。そんな自分の語調に、伊蔵は気圧されるように慌てて謝罪を口にしてきた。
「すいませんっ」
うろたえの中に混じる自分に対する脅え。
厭われる事を恐れる。
それを隠さない彼のまっすぐな感情の表れは、しかしこの時自分に新たな自己嫌悪を呼び起こす。
彼が自分に怒られる必要など何もない。
けれどそれを今、素直に告げる事はどうしても出来なくて。
「それより…おまん、どういてこんな所に?」
はぐらかすように問う。それに伊蔵はまたしても勢い込むように返事を返してきた。
「収次郎さんに聞いて。」
「収次郎?」
道場に通う男の名を思わず鸚鵡返しにする。と、それに伊蔵は力強く頷いた。
「先生が、江戸への修行にわしを同行させるよう動いてくれちょると。それで今日も夜分遅うに出掛けられたと
聞いたきに、居ても立ってもおられんくなって。」
飛来は今度、自分と共に江戸での修行が許された者だった。それゆえに明かしていた、それを聞いたのか。
事が成ってから伝えようと思っていた。しかしならばもういいだろうと、武智はこの時自らの懐を探る。
そしてそこから折り畳まれた手形を取り出すと、それを伊蔵へと差し出した。
「おまんの分じゃ。」
「…先生…」
「藩命ではなく私費での扱いになるが、金ならわしがなんとか工面しちゃるきに、」
先程謝まる事が出来なかった。その代わりとばかりに告げる。
「一緒に来いや、伊蔵。」
命じると言うよりは願うように口にしたその言葉に、最初伊蔵はその大きな眼を呆気に取られたように見開いていた。
肯とも否とも答えない。
だからそれにたまらず不安が募り、武智が「伊蔵?」ともう一度その名を呼べば、それに彼は瞬間ハッとした
ように肩を震わせると、そのまま地面に手を付き、自分に向け深くその頭を下げてきた。
「あっ、ありがとうございます!」
歓喜に打ち震えるような、しかしその声さえも武智は複雑な思いで聞く。
本当は、彼は自分に礼を言う必要も無いのだ。
自分が彼を連れていきたいと望んだのは、実はどこまでも私欲なのだから。
いつの頃からこんな事を思うようになっていたのだろう。
純粋に自分を慕い、憧憬の眼差しを向けてくる彼の大きな瞳は、自分の罪を映しだす鏡のようだと。
向けられる度に、汚れる事を受け入れた自分の業を自覚する。
だから傍に置いておく。それは罪に対する戒めの罰。
自らが望み、自らが決めた道だ。けれど……
それでも今、その眼差しが痛く、居た堪れず、棘のように胸に突き刺さるから。
伊蔵が顔を上げる。それに武智は見るなと思う。
近づかれれば酒など飲んでいない事を悟られる。目元の腫れを見咎められる。
思う焦りは動きとなった。
伸ばす手が体を起こした伊蔵の首筋に回り、それを引き寄せると武智は彼の肩に強く顔を埋めた。
「先生?!」
驚いたような伊蔵の声を耳元近くで聞く。
しかしそれにも離れる事は出来ず、どころか逆に回した腕の先で拳を握れば、掴んだ薄い彼の
着物の布が手の中でキリキリと鳴った。
しばし、そうして身を添わせる。と、そんな武智の耳にこの時届く声があった。
「守るきに。」
それは静かに、しかし力強く吐き出された告白。
「わしが命に代えても武智さんを守るきに。」
それまでの敬称ではなく、名を呼んでくる。
彼のその境目は何なのか。
わからないまま目を閉じ思い出す、それはこの国の古来からの言い伝え。
橋は彼岸と此岸、異界の境に掛けるもの。
正しく、清く生きたくて。しかし出来ずに汚れた我が身の脆弱さが許せなくて。
その真意を見透かしたように自分を止める声の持ち主が憎く、でもそれを失いきる事も怖くて。
揺れて揺れて揺れ続けて、自分はどちらの界に堕ちるか。
わからないまま二人で留まる橋の上で、
「伊蔵……」
この惑いの道連れにするかもしれないと予感しながら、それでも今自分が呼べるのは、
唯一つ彼の名だけだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
実はノベライズを読んでないので先の展開は知らないまま勢いで書いた。
でもトサ弁からはかなり逃げた…後で七転八倒する覚悟は出来ている…


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