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唯、今は心淡く。

GCCXゲーム科長は名探偵パロ。方向音痴→(←)飛距離バント。相変わらずです。
ナマなのか半ナマなのか微妙ですがナマモノ注意でお願いします。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・;)ジサクジエンガ オオクリシマース!

今日も1日の業務が終わる。
漸く戻って来た自分の作業着を脱ぎながら大きく息を吐いた。
「裏川!お疲れさん」
「あ、有埜さん。お疲れ様です」
振り向くとドアの所に科長が立っていた。
額には冷えぴったん。って事は、残業だろうか。

「今日はもうあがりか?」
「はい。有埜さんは・・・」
「俺まだ仕事あんねん。ホンマきっついわ~戻って来たら俺の分の仕事手つかずでちゃーんと残ってんもん」
「・・・大変、ですね」
「せやろ?まぁ確かに暫く工場の仕事出来んかってんけど」

有り得へんよ~とぼやきながら目を擦る。目の下には薄っすらと隈が出来ていて。
この人が会社や取引先を巻き込んだ大きな事件を解決して戻って来たのは、つい先日の事だった。
誤認逮捕されて、逃げ回って。俺も色んな事で手助けはしたつもりだけど体力的にも精神的にもきつかっただろうと思う。
工場も緊急体制に入ってて気にしてる暇なんかなかったけど、だ。

「・・・有埜さん、後どの位残っとっとですか?」
「ん?後は書類記入と納品かな~向こうも時間が時間やし早よ行かんと迷惑かかるなぁ」

確かにもうそろそろいい時間だ。
今から行ってギリギリ間に合う位の・・・

「俺、行きますよ」
「へ?」
「其のROM届ければ良かっですよね。俺行って来ますから有埜さんは書類記入しとって下さい」
「え?いや、でもお前もう帰るんやろ?」
「届け終わってから直帰しますから。有埜さんも其の方が早く終われるでしょ?」

ちょっと強引にROMを受け取る。じゃなきゃきっと有埜さんは遠慮すると思ったから。
会社の危機を救ってくれた人、出来ればゆっくり休んで欲しい。
「事件の事もあって、あんまり休めとらんとじゃなかですか?早く帰って休んで下さい」
「裏川・・・じゃあ頼もかな。有難う」
「いえ、じゃあまた明日」
「おう、また明日」
軽く手を振る科長に背を向けて、ロッカールームを出た。
ちょっと急げば余裕で着くだろう。
自分も早く帰宅するべく、足を速めた。

「・・・・・・・あれ、何やろ。何かひっかかるな・・・しまった!」

近道に、と細い路地を通って暗い道に出る。
此の先を曲がれば取引先に着く・・・筈なのだが。

「・・・・・あれ?」

行けども行けどもビルが見えない。寧ろ会社らしき建物が無い。
えらく鄙びた・・・
「此処、何処だろ・・・」
まさかとは思うが。

「・・・・・迷った?」

思わず頭を抱えたくなる(て言うか、泣きたくなった)
普段から確かに方向音痴だと言われてはいるが、こんな時に。
考えている間にも時間はどんどん過ぎていく。
ちょっとランニングも兼ねて小走りで来たとは言えど、もうヤバい。本気でヤバい。
結構ギリなこの時間に納品という事は間違いなく至急で必要な物だ。
届いてないとなったら有埜さんだけでなく会社にも迷惑が掛かる。
つぅ、と冷や汗が流れるのを感じながら立ち止まった。

「・・・・・」

どうするか。取り敢えず道を戻ってみるしかない。
ダッシュで戻って、思うのと逆の道を行けば着く(かもしれない)
嗚呼、取引先にも連絡を入れておかなければ。
そう思って踵を返した時。

「裏川!」

呼ばれて思わず足が止まる。驚いて、俯いていた顔を上げて。
其の先に居たのは。

「お前ROM何処持って行く気や、此処湖やろ!」
「さ、笹乃さん!」

息を切らして、駆け寄って。思い切り肩を叩かれる。
あーしんどい。そう言う笹乃さんを冷静に見ながら頭は混乱しっ放しで。
さっき俺が会ったのは有埜さん1人だった筈だ。何で。何で笹乃さんが?
「あ、有埜さんが慌てとったから、何事かと思って、話聞いたら・・・お、お前、いい加減ちゃんと自覚せぇよ」
「は、はい、すいません」
有埜さんが。そうか、俺と別れた後気付いて・・・でも、だ。
ふっ、と疑問が浮かんだのと同時に。

「先方には、連絡しといたから。行くで」
「え・・・!すいません!」
「謝ってばっかやな」

困った様に微笑まれて。きゅっと胸の辺りが締まった感じがする。
久々走って疲れたと漏らした言葉、此処まで走って来てくれたのだろうか。
いや、何処に行ったのか分からないのだから、きっと此処まで来るのにもっと掛かってる。
そう思ったら、側に寄った体温はいつもより高い気がした。
自分の情けなさに溜息を吐きたくなったけれど、それとは別に、もう1つ。

わざわざ自分を捜しに、この人が出て来てくれた事。
そして今、直ぐ側に。手を伸ばして、触れられる位置に居る事。
其れを不謹慎に喜んでいる自分が居る。
困らせて、迷惑かけて。凄く申し訳ないのに、だ。
邪な考えを振り切る様に視線を外した。
申し訳程度に夜道を照らしている街灯が目に痛い。本気で泣きそうになっているのかもしれない。
ゆっくりと、気付かれない様、息を吐いた。

「・・・そんな落ち込むな。向こうも時間大丈夫やって言ってくれたから」
「・・はい」
「有埜さんも助かったって言うてくれてたし」
「はい」
「でも行く時言えな、ちょっと寿命縮んだから」
「はい、すいません」

ちらと視線だけ向けると端正な横顔が照らされて、前髪を掻き上げる。
絵になるなぁなんて何となく冷静に考えながら、また邪な感情が湧いて来そうだった。
ぐっと唇を噛み締めて言葉を飲み込む。ホント、どんだけだよ。
言ってしまえればきっと楽になるんだろう。でも。きっとまた別の苦しさが出て来る。
其れは言い訳だ(知っとる、そんな事)

「裏川、」
「あっ、はい」

歩くスピードは変わらない。
この距離も、この関係も。

「終わったら、飲みに行くか」

・・・だけど、今は。

「いつもの店、多分まだ開いてるやろ」
「・・・はい」
「あ、俺荷物置きっ放しやった。取りに行かな」
「や、待っときます。大丈夫です」
「そっか、ほな急ぐか」

優しい声、ぐしゃぐしゃ髪を掻き回されて思わず頬が緩む。其の掌が温かい(手汗のせいか)
肩を並べて歩く。苦しい、心地良い其の距離を保って。
ぶらりと下がった手が、たまに触れそうになりながら。
其の度にぎゅっと拳を作って、何処の中学生だと笑う。

どうして居場所が分かったのか、来てくれたのか。
浮かんだ筈の疑問は、何処かへ飛んでいって訊く事はなかったけれど。

□ STOP ピッ ◇⊂(-∀-;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!
すいませんまさかのゲーム萌えでした・・・
前の話にGJ頂いた姐さん方有難う御座いました!まだ萌えてます。


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