Top/55-181

理性、時々衝動

65-68「余裕、時々焦燥」の続きです
好きな子で想像して頂けたら
両方に妻子がいる設定です

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

初詣の神社で、偶然彼と出会った。
午後からの関係者への挨拶の為、家族より先に自宅へ戻る途中のことだった。
参道を抜け、二人揃ってタクシーを待つが、なかなか来てくれない。
「今日は挨拶だけですか」
「いや、ジム寄って体も動かしていく。年末は忙しくて十分にでけへんかったしな。お前は」
「俺は・・・今日は、すぐ帰ります」
「そっか」
変に気を遣わせてしまったかな、と思った。
雲ひとつない、澄んだ青空を見上げ息を吸い込む。
「気持ちいいな」と呟くと、「そうですね」と隣の彼は応えた。
一緒にいるのも気持ちいい、とまでは流石に照れくさくて口にできなかった。
シ一ズン中、彼の与えてくれる信頼は、大きな自信になった。
例え次のシ一ズン彼と組めなくても、この自信を生かしたいし、その努力も惜しみたくない。
彼の為にも。
袖の中で腕を組んだ。ふと、何かが足りないような気がした。財布は持っている。
「あ!」
思わず声をあげてしまい、同じくタクシーを待っている家族連れがこちらを向いた。
隣の彼も「どうしたんですか?」と深刻な声で尋ねる。
「家の鍵がない・・・」

彼の住むマンションに着き、エレベーターに乗った。
紺の着物を纏った彼の後姿を見つめる。壁にもたれると、背中に機械音が伝った。
彼からスーツと靴を借りることになってしまった。
ついでに余っているからとトレーンングウェアまで貰うことになった。
さすがにそこまでは、と言うと
「元旦から予定が狂うなんて嫌です」と彼自身の予定でもないのに、言い切った。
「背丈は同じくらいじゃないですか。他のサイズがなあ。昔作った小さめのやつなら、誤魔化せるかな
それより趣味に合うかどうか」
「別に何でもええよ」
「まあ男前ですから何でも似合うと思いますけど」
と、振り向いてニコリと笑顔を見せる。
不意を突かれて、返答に迷うと、彼は気まずそうに再び背を向けた。
もうこちらを向いていないのに、恥ずかしくなって襟巻きで口許を隠してしまった。

「はい、どうぞ」
ドアが開かれ、他人の家を実感させる独特の香りがした。
彼が先に入って、スリッパを置く。
「すんません。寒くて。何か飲みますか?」
「いや、ええよ」
「えーと、そこの畳の部屋へどうぞ」
彼がさっと襖を開けたので、先程履いたスリッパを脱いで座敷に上がる。
「ちょっと待ってくださいね。取ってきます」
「悪いな」
すうっと襖が閉まる。
壁際に子供の玩具を無造作に集めた箱が置かれていた。
窓から差し込む光のあたる場所を踏んでみる。
ガラス越しに外を眺めていると、同じマンションだった頃を思い出した。
あの時はまさかお互い去年のような一年を過ごすなんて思ってもいなかったな。
懐かしくなって、頬が緩んだ。

日に当たっているとホカホカと暖かくなってきた。襟巻きを外して、羽織を脱ぐ。
ちゃりんと金属音がした。何かと思い、羽織を取り上げて振る。
目の前の襖が突然開いた。
「スーツなんですけど、コレ・・・」
彼の声に顔を上げると、ぽとりと何かが落ちた。
「「あ」」
声が重なるのと、しゃがみこむのが同時だった。
額に固い衝撃。
お互いがそれを拾おうとしたので、額がぶつかり、バランスを崩してしまった。
「わ」
背中から畳に倒れる。上から圧し掛かる重力。
恐らく倒れるのを助けようとしてくれたのだろうが、逆に彼が覆い被さるような形になってしまった。
「う・・・ん」
「すみません!大丈夫ですか」
「つ・・・か、上どけろ」
見上げると、彼が心配そうな表情で見下ろしていた。
そんな顔するな。大丈夫だから。
彼の細目を見つめていると、じわり、と触れた部分から熱が伝わった。
「え」
気付くと同時に顔が降りてきた。
その視線に、捕らえられてしまった。

彼の唇が優しく下唇に触れて、離れて、もう一度味わうように吸い付く。
舌が歯をなぞる。口を少し開けると、遠慮がちに中に入ってきた。
先が、ちょんと触れて、絡む。
もっと、とせがむように背中に手を回すと、彼の手は腰に回り帯を外そうとした。
外しにくそうだったので腰をわずかに上げてみる。熱が強く押し付けられる。
「ちょ、それは」
まずい、と言いたげに彼は唇を離す。
今さら何を言っているんだ、と足を絡ませて、彼の羽織紐を指先で引っ張り、ほどいた。
彼の唇が再び近づいて首筋をなぞる。髭がこそばゆくて、声が漏れた。
しゅるり、と衣擦れの音を立てて彼の手が帯を解いていく。
脇腹に彼の手がぺたりと触れて、思わず目を閉じる。熱に触れようと手が下腹部にゆっくり降りてくる。
彼の袖をぎゅっと握りしめた。

ムームー

はっとして、彼は体を離した。脱いだ羽織から携帯が震える音がした。
起き上がり、羽織を探って携帯を取る。同時に音が止んだ。液晶には妻の名前があった。
「すみません。ここに置いとくんで!」
彼は散らばったスーツとシャツを隅に置き、部屋を出て襖を閉めた。
しん、と静まりかえる。
頭の中の靄がはれて、冷静になって考える。
何だ、さっきのは。何をしたんだ。
二人の間に、突然生まれた衝動、行為、感情。
「嘘やろ。ありえへん・・・」
思い出すと、恥ずかしくなって両手で頭を抱えた。
落ち着くために、一度深呼吸をする。
体に中途半端に巻き付いた帯を外し、部屋を見回した。
ないと思っていた自宅の鍵が、ぽつんと畳の上に転がっていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンデ キモノヲヌガセタカッタ ダケデシタ!


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP