際限ない夜の短い終わり
更新日: 2011-04-24 (日) 20:22:36
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. // 生 || ∧(゚Д゚,,) < 元ネタはゲイビ、その改変。※トーンもほぼそれ系注意※
//_.再 ||__ (´∀`⊂| < ※売り買いシチュ、アニャル・精液嫌いの方も要注意※
i | |/ ||/ | (⊃ ⊂ |ノ~
| | / , | (・∀・; )、 < …それでは、しばしお目汚し
.ィ| | ./]. / | ◇と ∪ )!
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. / /_,,| |,/]:./ / し'´し'-'´
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|_____レ"
ほの暗いフロア全体を揺らすような、重低音の効いたダンス・ミュージック。
そのリズムに合わせ踊る――というよりは身体を揺すりながら、
ダンサーはカウンターの上でライトを浴びていた。
身につけているのはすべて黒。
皮の重たげなブーツ、リストバンド、それにぴったりしたショーツのみ――。
ダイヤを煌かせた白い指がそれに伸びると、彼は背中を向け、腰をたわめた。
そしてショーツをゆっくりと下へずらす――日に晒されたことのないような白さの膚が現れ、
影に縁どられた滑らかなカーブと中央の割れ目とがライトの下で扇情的に揺らめく。
遊びなれた様子の女は、手にしたチップをそこへ滑りこませた。
同様に手馴れた仕草でショーツを元に戻しながら紙幣を収まりのいいサイドへ移し、
ダンサーは正面のフロアへ向き直った。
客筋はいわゆるセレブリティ。
金と守りたいプライバシーとを持ち合わせ、あらゆる意味で安全に遊びたがっている連中だ。
安全さこそ第一で、それさえOKなら最先端のフロア・デザインや選曲である必要はない。
たまに現れるイタリア系オーナーは、常々そう口にした。
「だが、酒とダンサーだけは最高でなくては」
バイセクシャルの彼は、ダンサーのオーディションにだけはいつも同席するらしい――というのは、
クラブスタッフの間で周知の噂だった。
オーナーの趣味を反映してか、
客層は女性にゲイ、女性連れの男性、ドラッグクィーンも時々――セクシャリティも同様にまちまちだ。
ダンサーにチップを与えたがるのは、ここでは女性が多い。
男性はもっと直接的だ。金で買ってバックルームで愉しむほうを望む。
そう――この場所にはバックルームという秘密の小部屋がいくつかあり、
ごく限られた上客だけがそれを使うことができた。
気に入ったダンサーを今すぐファックしたいと思ったなら、
いつも影に控えている仏頂面の黒服を呼び、金を握らせればいい――。
さっきから絡みつくような強い視線が自分に向けられているのを、エリックは感じていた。
客たちがくつろぐあたりはライトが落とされ、おおよそのシルエット以外ははっきりと見て取ることができない。
だがたぶん、長めの黒髪のスマートな女連れ――ああ、いま彼が手を挙げた。
黒服のアンドレアスが客からの耳打ちを受け、
ついでこちらへとまっすぐやってくる――メッセンジャーよろしく。いや、ポン引きか。
「連れも一緒に、ってなら嫌だよ」
カウンターの上でしゃがみこみ、声が音にかき消されないよう頭を黒服に近づけながら、
開口いちばんにエリックは言った。
普通クラブダンサーがそうでないのと同様に、ここでもダンサーは男娼ではない。
だから指名を拒否できるぐらいの自由は、ダンサー側もとりあえず持ち合わせていた。
「いや、男だけだ」
ごく簡潔に、アンドレアスは答えた。
彼はいつも事務的に取りつぐだけで、それ以外の何も態度に示すことはない。
「――どんなやつ? 常連?」
「新顔だ。一見ワイルド、だが手のエステを欠かさないタイプ」
エリックは短く笑った。
ボディガードを兼ねているので端的な観察に長けているとはいえ、
無骨で全く手のエステなど縁がなさそうなアンドレアスが言うのはちょっと可笑しかった。
「OK、行くよ」
と、軽い身ごなしでカウンターから降りた。
そして控えへと向かうのを見て取った客が立ち上がり、バックルームのほうに消えるのを
アンドレアスはサングラスの下から見送った。
個室として仕切られているとはいえ、
そこもフロア同様腹から揺さぶるような重い響きのダンス音楽で満ちていた。
客がまっさきに望んだのは「ダンス」だった。
自分ひとりだけのための、特別なダンス。
どうやら、いきなりしゃぶらせたり突っ込みたがったりするタイプじゃないらしい。
エリックは客が充分目で愉しめるよう意識しながら、ゆっくりと手足を開き、蠢かせた。
壁に手をつき、脚を広げながら腰をたわめ、突き出して見せる。
ショーツを少しずつ下へとずらし、背中、腰、太腿に手を這わせ、腰を揺らす。
いちばん無防備で劣情を自ら呼び込むようなそのポーズを、大抵の客たちは好んだ。
今も――誘われるようにソファから立ち上がり、男が近づく。
「……あ!」
手にしたグラスの酒を背中に落とされたのは、かなりの不意打ちだった。
身体を震わせた拍子に、その窪みから琥珀色のそれが滴り落ちた。
「動かないで――」
再度、男はエリックの背中に酒を零した。
「――そう、いい子だ」
エリックの頭を撫で、男は酒を啜り、舌で舐めとった。
さらに、酒が腰に注がれる――それが割れ目をつたい脚へ流れる感触に、エリックは呻きをもらした。
グラスをテーブルに置くと、男はぐいっと強引にショーツを引き降ろし、エリックの尻を割った。
しげしげと、その部分が他人の目に晒される気配――
これだけは、いつまでたっても馴れることができない。
そして酒で濡らされたそこへ、ふうっと息を吹きかけられる。
前へ回された手は左右の胸から腹、脚の付け根で止まり――まだ直接触れられることはない。
思わず背後へ顔を振り向けると、男がその目を捉え、満足げに笑った。
「――こういうのは好きか?」
問われるままこくんと頷く――男はさらに顔を近づけ、吐息まじりに囁いた。
「どうして欲しい――?」
エリックは腰の位置をずらした。
勃ちあがりかけたそれを、男の手に擦りつける。
そして片方の手を男の頭に伸ばし、甘えるように髪ごと撫でた。
手の中で増していく熱を楽しみながら、男がさらに問いかける。
「前だけでいいのか?」
呻きを噛み殺しながら、エリックは頭を左右に振った。
「――どうして欲しい? はっきり言葉で…とまでは言わないが」
大きく肩で息を吐き、エリックは自らの腰に手をあてた。
それから邪魔なショーツを急くように脱ぎ落とし、片足をソファの上に掛けた。
さっきよりさらに尻が顕になるのを意識しながら自らの指を舐め、そのまま中心に触れる。
「ん……」
ゆるく円を描くように、エリックは自らの指を動かした。
職業上の身だしなみとしてきれいに処理されたそこは、無防備で、清潔で、淫らでもあった。
その手をはらいのけ、喰らいつくようにあてがわれた口と息の熱さに、エリックは戦慄き我を忘れた。
精を放ったばかりのそれはまだしっかりと硬く――
まるで賛美するかのようにエリックはなお無心に吸い、
そっと舌を這わせ舐めまわすのをやめなかった。
身体を離すと玩具を取り上げられた子供のようにエリックが自分を見上げるのを
男は満足げに眺め、息をついた。
「残念だが、今夜はあまり時間がない――」
男はじっとエリックの顔を見つめると、長い、深いキスを与えた。
自分の余韻を味わうのも厭わない、貪欲なキス。
何の躊躇いも計算もなく、エリックも同じくらいの貪欲さでそれに応えた。
ぐったりとソファに伸び、うとうとと眠りに落ちてしまいそうなエリックをよそに、
男は手早く身支度を直した。
そしてもう一度だけエリックを振り返り――何も言わず部屋から去った。
数分後。ドアが開いて誰かがやってきた気配に、エリックはしぶしぶ目を開けた。
黒服のアンドレアスと目が合うと――といってもサングラス越しだが――黙って手にしたタオルを放ってよこした。
だがエリックが受けそこなって、タオルは床に落ちた。
「自分で拾えよ」
「……だめ。動けない」
その言葉どおりまったく動こうとしないエリックを見やり、アンドレアスはソファに近づき、タオルを拾いあげた。
「ありがとう、やさしいアンドレアス……」
「――寝ぼけるな」
アンドレアスは手にしたタオルでエリックの汗ばんだ顔を拭い、それから全身も同様にした――ごく淡々と。
「さっさと上がって帰れ」
喉奥で短く、エリックは笑った。
「ああ……払いのいい客だったものね」
「愉しんだんだろ、お前も――今夜は」
エリックは目を閉じ、息をついた。
「――うん。まあ、たまにはそんなこともないとね」
頬に当てられた手の甲の感触に、エリックは目を開き、アンドレアスの顔を見上げた。
その腕を掴み、なお瞬きもせずエリックはアンドレアスを見つめた。
「ねえ……目を見せてくれない? サングラスはずして」
黙ったままの男に、エリックは望みを繰り返した。
「――ねえ、お願いだよ。ちょっとだけでいいからさ」
あまり気乗りがしない、とでも言いたげにアンドレアスは首を傾げたが――
サングラスをはずし、その目をエリックに向けた。まっすぐに。
かなり薄い空色のブルー――冷たいと評されがちなそれをじっと見つめ、にっこりとエリックは笑った。
「うん、ありがと」
ぎゅっと腕を掴んだ手に力を込め、離すと、また目を閉じた。
その顔――そして全身からセックスの高揚感と熱が抜け、代わりに重たげな疲労の影が覆っていくのをアンドレアスは見てとった。
「あと2、3分したらここを空けるから――お疲れ」
サングラスを掛け直し、アンドレアスは部屋を出た。
フロアに戻ると、ちょうどエリックを買った男が出口へ向かってくところで――
その全身から怒りが滲むような勢いと足取りだった。
その背中に短く叫び、確か連れだった女が追う。
痴話喧嘩か――と苦く、アンドレアスは思った。
カウンターのスポット下では、
エリックではない別のダンサーがチップを受け取り、女性客に笑いかけている。
もうしばらくしたら――いや、あるいはこの一瞬あとでも――客の誰かが自分を呼びつけ、
金を握らせようとするだろう。
次の夜も、その次の次も、この場所の夜がつづく限り延々と。
だが少なくとも、エリックの夜は今日は終えられた。
彼にとって、ラッキーなほうの夜として――。
いつのまにか硬く握りしめていた掌を開き、アンドレアスは息をついた。
そしてフロアから自分に向けて振られた手に気づくと、その主へと近づいていった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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