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特別な数字

生です。竜の31←有袋類(ほんのり31×有袋類風味)
捏造注意。エロ無し。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 Mr.Dと呼ばれた男が、22年間背負ってきたもの。背番号「3」
若い選手が、躊躇無く声をかけられるような背中ではなかった。
毎日チームに帯同している裏方でも、一拍の呼吸をおいてから声をかけたものだった。
背番号「3」の鶴の一声で、チーム全体に緊張感が走った。
このチームに関わる者のほとんど全てが、何かしらの特別な思いを持って
「3」という数字を眺めていた。
それは尊重であり、尊敬であり、憧憬であり、時には畏怖でもあった。

 ── そう、背番号「3」とは、遙か遠いところにあったもの ──

 ド荒は事あるごとに、ベンチに顔を出しに行く。
グラウンドでも、タイミングが合えば、気の合う選手にちょっかいを出す。
構ってくれる選手やコーチ、裏方さんはたくさんいる。
その中でも特別に構ってくれた、いや、むしろ特別扱いをしないでいてくれた、
仲間としてさらりとあしらい、時には下手な司会者より上手く自分を弄ってくれた、
そんな男の背中の数字は「31」

 自分は口下手なのだと「31」は良く言う。だから野王求で語りたいのだと。
ド荒は良く、その「31」を目で追っていた。
無論、スキができたら絡みに行こう、構ってもらおうという魂胆だったが、
それと同時に、真剣に野王求と向き合う、その瞳をいつも見ていた。
野王求で語る「31」は、いつもより少し、遠いところにいるように見えた。

 練習を終えた「31」が歩いてくる。
ただベンチに帰るだけ。そう思うが、通るであろうルートにいないでいられない。

 ── 今日は座ってみよう。

ベンチの前の白線際で、いつもの体育座りをする。
姿はただじっと座っている。心はドキドキと音を立てている。

 近づいてきた「31」は、自分の通り道に座っているド荒にチラリと目をやると、
視線を前方に戻し、さも興味が無さそうな顔をしながら同じペースで歩き……
そして通りすがりに、ド荒の頭をポカリと叩いた。

うわぁあああああっ!

期待を裏切らない「31」のリアクションに、音を立てていた心がさらに躍る。
すかさず立ち上がり、振り向いて「31」を追いかける。
何で殴るんだよ! 酷いじゃないか! と訴えるような動きで、
でも本当は、嬉しくてたまらない気持ちを、その身体いっぱいに溢れさせて。

 バタバタと自分を追いかけてくる気配を感じつつも、一度も振り向かない。
けれども、その口元には笑み。
「31」は、遠いようで近い番号。
野王求で語る為に少し離れても、すぐにド荒の傍に戻ってくる。そんな数字。

 オフシーズン。その「31」が、来年から別の選手のものになるという。
では元「31」はどうなるのかと、ド荒は親しい裏方さんに尋ねた。

 ── どうやら、「3」になるらしいよ。

 ド荒の脳裏に、Mr.Dと言われた男の背中が浮かび上がる。
ヒー□ーインタビューや記念撮影、そういった益子ットとしての役目上以外で、
あの背番号「3」に近づけた事が、一体何回あっただろうか。

遊んでくれ、弄ってくれと、うかつに近寄れるようなものではなかった。
無理に近づこうとすれば、周りの人達から必死に止められた。
Mr.Dは「3」という数字に、中曰というチームそのものを込めて背負い、
22年間立ち続けていた。ド荒の手の届かない、遠い遠い、高いところで。

 今までだって、あいつはコロコロと背番号を変えてきたじゃないか。
背番号が変わって、それで何かが変わったことなんて、一度も無かったじゃないか。
そう自分に言い聞かせるド荒も、やはり中曰の一員だった。
背番号「3」の意味するところを、嫌でも考えてしまう。

 遠くて近かった「31」は、「3」の立つべき、遠く高いところに行ってしまうのだろうか。
いや、本人にその気が無くても、「3」を背負ったその瞬間に、
自然と遠いところに、引きずり出されていってしまうのだろう。
背番号「3」というのは、そういう数字なのだ。
それを、「31」だった男が背負うのだと言う。

 ド荒はたまらなく寂しくなった。無意識に、顔が下を向いた。

 数日後、新たなニュースが流れた。元「31」が「3」を背負うことを拒んだという。

 ── 自分には、まだ早い。

彼はそう言った。まだ、自分はそういう数字を背負うべきではない、と。

 一部のファンが「3」の永久欠番を望んでいたこともあり、
元「31」の謙虚な姿勢は、世間で概ね好意的に受け止められた。
いつか、誰もが納得する形で「3」を背負えれば良い。
特別な数字は、一旦王求団預かりとなった。

代わりに与えられた数字は、「31」から1つ減った「30」
階段を1つだけ上がったような、そんな数字。

 ド荒はそのニュースを聞いて、胸の中に広がっていた痛みが
穏やかに和らいでいくのを感じていた。

そうやって、一息に遠くに行ってしまわないで、
少しずつ、少しずつ、上がって行ってくれるなら、
その背中を、遅れずに追いかけていけるような気がしたから。
いつか彼が新たなMr.Dになったとしても、ずっと追い続けていられたなら、
それほど遠くない存在のままで、いられると思ったから。

 ド荒は、新しい数字を背負った元「31」を思い浮かべ、
ふう、と安心したように息を吐いた。
ポカリと頭を叩いて、いつも振り向かずに歩いて行ってしまう彼が、
今日は待っていてくれたような気がした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

分かりにくいネタだったかもしれません。すみません。
有袋類の為に足踏みしてる感じがしちゃったもので、つい書いてしまいました。


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