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月夜の川原

大鳥 リバ・・・かな?差残・鍬多氏「moon(和訳)」を聞いて

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

快晴の夜、仕事帰りに、2人で原付を飛ばす。こうして一緒に走るのもどんくらいぶりかな・・・
「和歌囃子、明日は午前の仕事が無いだろう。午後のためにしっかり休んでおけよ」
「分かってるよ。お前に心配されるようじゃ、俺も終わりだな」
「何言ってる、粕画はあんたを気遣ってやってるんだよ?・・・ま、そーいう意地っ張りなとこも好きですがね」
「ばーか」

交差点で止まると、珍しく粕画が横に並んできた。どういう風の吹き回しかとそっちを向くと、いつもの調子でまた声をかけてきた。
「とにかく明日は、和歌囃子の分まで頑張ってきてやるから」
「はいはい頑張れよ」
こっちもいつもの調子で返すと、顔を見合わせて2人でくすっと笑った。
「じゃあ、また明日」「ああ」
白線越しに握手を交わして、交差点で別れた。

途中で家路をそれて、川沿いの道を走る。
ちょっと前の大雨で水かさの増した川は、もう濁ってはいないけど、勢いを変えずに流れている。
原付を止めて空を見ると、満月が出ていた。周りには雲1つない。
その空を見ながら、俺は今日までの自分を思い返した。

売れない時期が長いこと続いて、本当に辛かった。けどその頃は、2人とも平等に扱われていたから、そういう意味では良かったかもしれない。
知名度が急激に上がった今は、あいつばかりが注目されて、俺は昔と変わらないように思えた。
キャラを守る為とはいえ、粕画からも「華が無い」だの「腹黒い」だのボロッカスに言われて、収録中にリアルに凹んだこともある。
でも粕画は、俺を見捨てはしなかった。それどころか、さっきみたいに、激励の言葉もかけてくれたりした。
何で、どうして。俺みたいなのを前に出して、何の得になる?こんな暗い奴なんか、ほっといてくれればいいのに。けど、それが理由で惚れたのも事実だ。

もしも、粕画が俺の心をとうに見透かしていて、素じゃない自分を演じていたとしたら?そのせいで、余計に苦しんでいたとしたら?
嗚呼、もういっそ、目の前の川に身を沈めてしまおうか。

いや、このままではいけない。せめて

せめて、あいつの声を聞いてから。

呼び出し音が鳴り止むまで、俺はじっと待った。

【遺言】を残す時が来るのを。

k.side

彼の原付を見つけて、慌ててブレーキをかける。必死に辺りを見回すと、既に膝まで水に浸かっている彼が眼に映った。
自分の原付を引き倒さんばかりの勢いで駆け寄り、腕を掴んだ。
「やめろよ!離せ!」
「何言ってんだ!早くこっちへ来い!」
「離せっつってんだろ、バカスガ!」
「この状況で離せるか!いいから来い!」
そのまま彼を川原へ引っ張り上げた。

和歌囃子から電話があったのは、そろそろ寝ようと思っていた時だった。
『ごめん、起こした?』
「大丈夫だ。そろそろ寝ようとはしていたけどもね。・・・もう家にいるんだろう」
『いや、ちょっと寄り道してんだ。月でも眺めてから帰ろうかなって』
「和歌囃子らしいな。でも早めに帰れよ、遅いんだから」
『ああ・・・なぁ粕画』

『いつもごめんな、文句ばっか言って』
「・・・どうした、急に」
『「いや、今考えたら、俺ずっとお前に悪口しか言ってないなって思ってさ』
「・・・粕画は分かっているよ。それが和歌囃子の愛情の裏返しだってね」

『分かってるならさ・・・素のお前見せてくれよ』
「えっ・・・?」
『俺が見てるお前って『俺が好きな粕画』ってことだろ?俺が好きだって知ってるから、好きでいてほしいからなんだろ?』
「いや・・・でも何もかも素じゃないってわけじゃ」

『それでお前自身が苦しいならさ』

『もう、俺いらないよね?』
「・・・!お、おい、それって」
『明日頑張れよ、じゃ』

「ちょっ・・・和歌囃子!和歌囃子!!」

「いらないわけあるか、よく考えろ。粕画ですら、お前がいなけりゃできないことは山ほど」
「それいつも俺に言ってんだろ。『頼りにしてる』とか『頑張れ』とか言うけど、全部取って付けたっぽいんだよ、お前」
「あのねえ、意地っ張りにも限度ってもんが」
「馬鹿か、お前マジで意地っ張りだと思ってんの?秀才芸人もそこんとこを考える脳みそは空っぽ」

ばしっ!

w.side

目の前のデカブツは、物凄い勢いで俺の横っ面を張った。

「いい加減にしろ」
静かに凄みを利かせて粕画が言う。痛みと驚きで、そのまま動けなかった。その間にも、奴は淡々と俺に語りかける。

「お前は、どうやったらそこまで自分を貶められる?もう10年だぞ。もうじき中堅って時に、そこまで自分を追い込んでどうするんだ」
「だ、だって・・・」
「第一、お前は・・・そこまで・・・悩みが、あったのか・・・」

(・・・あいつが、泣いてる?)

話の合間、途切れ途切れに、堪え切れない嗚咽が漏れた。

「俺からすりゃ、お前は完璧超人だったよ。学校の人気者だし、気軽に女子と話せたし、友達も沢山いてさ・・・だから、パシられたっていじられたって、俺はお前が好きだった」
そのまま粕画は、俺を強く抱き締めた。

「もう、どこへも行くな」

「きっぽ」

「・・・お前、馬鹿過ぎ・・・」

言えたのは、それだけだった。でも、心の中で呟いた。

ありがとう、愛してる。

2人を見つめる月に誓って。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

規制くらって続きが遅れたうえにナンバリングミスorz
申し訳ない殴殺だけはやめry


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