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月夜

こ/こ/ろ 先生とKです

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 帰宅途中、空気が冷たいことに気がついた。先ほどまでいた屋内とは違う、つんと張りつめた空気。
しかし私は、それを嫌いだとは思わなかった。冷たいが、澄んでいる。鼻をつく感覚も喉を通る感触も気持ちが良い。
とうに日が落ちて暗くなった夜空もまた、透き通っている。透明な水に浮かぶように雲が漂い、その奥に星。
何より、影をつくるほどの月。今夜は明るかった。

「今日は、すごいな」

 言葉に色がついたように、白い息が溶けて消える。
私はいつのまにか足を止めて、吸い込まれるような夜空、そして月明かりに見入っていた。

「おい」

 低音は、冴えた空気によく響いた。私は声のする方を振り返る。下宿先を同じにする友人――Kだった。
彼も私と同じく学校の帰りなのだろう。彼のことだから、下校時刻ぎりぎりまで図書室などに籠もっていたのだろう。
少し疲れが見えているその顔が寒さに赤らんでいるのがわかった時、
私はKが冬の夜にはやや似つかわしくない薄着だということに気がついた。

「K、襟巻きは?」
「持っていない」
「だけど、寒いだろう。そんな薄い外套だけじゃ」
「買う金も時間もないのだ。仕方ないだろう」

 確かにKは、勉強以外のことに時間や金を掛けることをしない男だ。
その姿勢は、やや呆れると共にそれでも尊敬に値するものだと思っている。
しかし、必要最低限の生活が送れるようにはすべきだ。だから私は、Kを下宿に誘ったのだ。
今回もそれは同じである。私は自分の襟巻きを外し、Kの前へ差し出した。

「これを使え」
「馬鹿を言うな。必要ない」
「いいから。意地を張って体を壊したら、勉強だって出来なくなるだろう」

 こう言えば、Kは受け取らざるをえなくなる。むすっとした顔で受け取ったKはそれでも、首元に巻
き付けると少しは暖を感じたようだった。

「暖かいな」
「そうだろ。これから君も使うといいさ」
「いや、お前の体温がだよ」

 そんなことを言われて私ははたと気がつく。二人は往来の真ん中に立ち寒さに晒されたままだったのだ。
高いと言ったって、私の体ももう冷たくなっている。
それを暖かいと感じるほどなのだから、Kはもっと冷えているのだろう。そう思った途端、私はKの手を掴んでいた。

「冷たいな」
「元からだ」
「それにしたって冷たすぎる。帰ろう」

 私は薄氷のようなKの手を取ったまま、歩きだそうとした。なぜだか私には、それが不自然な行動とは思えなかった。
それよりも、幾分温かい私の手が彼の手を暖めてくれたらとすら思ったほどだ。
しかしKは、そこから動かなかった。

「おい」
「ちょっと、待ってくれないか」
「え?」
「もう少し、見ていたいんだ」

Kは上を向いていた。先程の私と同じである。通り抜けるような夜空と、そこに浮かぶ丸い月を見ているのだろう。
私はKの手を引くのをやめ、同じように上を見上げた。

「月が、綺麗だな」
「ああ、綺麗だ」

 どちらともなく呟いた声は、白い息となって消える。
往来には、並んだ二つの影が延びていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

アニメ化を機に改めて読んでみたら相変わらず萌えたその勢いで書いてしまったw
読んでくれた方、ありがとうございます

  • 萌えました…!!ありがとうございます! -- 2010-02-11 (木) 20:19:42

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