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監獄フリーク

『監獄フリーク(前半要英訳)』というコメディ洋画から ツンデレチンピラ×金持ちのドラ息子

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

汗くさいスチール製の二段ベッドで目を覚まし、朝めしを食ったらそこらをぶらぶらして、
昼めしを食い、夕めしまでぶらぶらして、いよいよ夕めしを終えたら、最後にぶらぶらして寝る。
退屈とマンネリズムの極みともいうべき日々を強い意志と正常な精神でもって乗り越えられるものは少ない。
たいてい妙な宗教に目覚めたり気に入らない輩を殺したり運動場の片隅でこっそり大麻を栽培したりと
各々退屈しのぎに熱心だ。模範囚の称号を得て晴れてシャバに出られるまでの
長い長い空白の時間を、それぞれ必死に埋めようとしている。
だが今回に限り俺にその心配は無用だ。
俺が人生の大半をこんな肥溜めで過ごすはめになった元凶が、俺のすぐわきで膝を抱えてすすり泣いているからだ。
――正確に言えば、"元凶"の息子だが。
毎日毎日なにかしら理由をつけては泣いているが、またぞろ自分の悲運を嘆いて自己憐憫にひたっている。
俺は調達屋から2ドル35セントで仕入れたトランプを一枚ずつ指で弾きながら元凶の息子に話しかけた。
「死にたくなけりゃメソメソするなと何度言った?」
クラブのエースを弾いて床に落とすと、ネルソン・ビーダーマン3世判事の息子、ネルソン・ビーダーマン4世が
みじめな顔つきで俺のほうを見た。そばかすだらけの頬は涙で光り、紅潮していた。
「だって……だって、マクダウェルが僕に触ってこう言うんだ……『うまそうなピーチパイだ』って。意味ありげに僕のお尻を叩いた」
「さっきのシャワー室でか?」
「うん。きみはシャワーを頭からかぶっている最中だったから気づかなかったんだ。
『僕はジョン・リシツキーのジュリエットだ』って言ってやったよ」
正直いって、気づいていたがわざと知らんふりを決め込んだ。連中の会話もばっちり聞こえていたが、
俺はさも今初めて知ったかのように顔を歪めてみせた。
本来なら死にたくなるようなせりふを得意げにいい放ちながら、ネルソンは目の覚めるような
色鮮やかなオレンジ色の袖で涙をぬぐった。一方の俺の囚人服は目に優しい色褪せたオレンジ色。年季が違う。

「そろそろ慣れろ。いちいちそんなことでメソメソするな。"ぷにぷにの白いイケメンくん"はモテるのさ」
「慣れないよ。外では自分の外見の良さが自慢だったけど、まさかそれが仇になるなんて」
そういってまた泣き始めたネルソンに向かってカミソリでできたトランプを弾き飛ばしたかったが、
最悪なことに俺は紙製のトランプしか持っていなかった。俺は鉄格子に向かってトランプをまた一枚飛ばした。
「最近、『ネルソン・ビーダーマンの泣き顔はそそる』と噂になってるみたいだぜ」
もちろん、この言葉には広義的な意味が含まれている。大きく分けて"性欲をかき立てられる"という意味と、
"鼻にパンチをぶち込んでもっとみじめにさせたくなる"という意味の二つだ。
生まれてこの方粗末に扱われたことなど一度もないような金持ちのドラ息子が刑務所に放り込まれたらどうなるか?
答えは目の前にある。退屈と欲求不満によってよりいっそう凶暴化した獣どもの餌食になる運命だ。
俺はこのドラ息子の破滅の道をこの目で見届けるために生まれてきたのだ。
俺の人生で最も輝ける時はまさに今この瞬間、俺の生涯の仇の息子が肥溜めの奥底で
もがいている姿をこの目で見ている瞬間だった。
「そんな……僕には悲しみを癒すことも許されないのか」
「涙を流して悲しみが癒されるのは人間だけだと言ったろ。ここは刑務所、俺らは囚人。
ただの肉の塊なのさ。わかったらタフな顔してな、向かいの連中がよだれ垂らしてお前のこと見てるぜ」
口からでまかせだったのだが、俺の言葉につられて鉄格子の向こうに目をやったネルソンの顔が明らかに強張った。
そこで、やつは拳を握り首に青筋を立ててタフな顔をしてみせた。俺にはいつ見ても
フンづまりにしか見えない顔つきだ。彼はその顔を俺に見せてから、鏡で自分でも確認しにいった。
タフな顔つきを練習し始めたネルソンの後姿を見ながら、俺はハートのクイーンを床に向かって弾き飛ばした。
ホモ連中からのアプローチを何より恐れているわりに、やつはいつでもズボンがずれていて下着が少し見えている。

そういえば留置所で見かけたときもサディスティックなアホに目をつけられてズボンを脱がされ、
下着姿で泣いていた。俺としてはそのアホに握手を求めたい気分だったのだが、
俺はアホと殴り合ってアホのズボンを脱がせ、ネルソンにはかせてやった。
以来ネルソンは俺に付きっきりで俺の言葉をまるごと鵜呑みにしている。
俺が刑務所の常連だと知ると、ますますやつは俺を信用した。
"経験豊富なジョンなら何でも知っているに違いない"と、こうだ。確かにそれは正しい。俺は何でも知っている。
ただし、やつは肝心なことをわかってない。ムショ歴が長いやつほど信用の置けないやつはいない。
それともうひとつ、やつは自分自身が判事の息子だということを忘れている。

タフ顔の練習を終えたネルソンが引き返してきたので、俺はやつに向かってトランプを飛ばした。
涙で赤くなった目尻を下げて笑い、ネルソンはそこらじゅうに散らばったトランプを拾い集め始めた。
「フレスカが飲みたい。ペプシでもない、ドクターペッパーでも、ルートビアでもない、フレスカ。
こんなタンつぼからさっさとおさらばしてフレスカを思う存分飲めたらなって、毎日思うんだ」
「ここを出たら、まず最初にお前にフレスカをおごってやるよ」
律儀にトランプを拾っているネルソンに続けざまにトランプを弾き飛ばしながらそういうと、
ネルソンは知性のかけらも感じられないようなまぬけ面で笑った。
むかつくほど白い歯が鉄格子からの光を受けてぴかぴか光っている。
「こんなに嬉しいことはないよ、ジョン。きみとおなじ刑務所に入ってよかったと、心からそう思うよ」
トランプを拾うそばから俺がトランプを投げていくので、ネルソンはついに諦めて俺のそばに座り込んだ。
両手にトランプを抱えて、熱心な顔つきで絵柄を一枚一枚吟味している。
何のことはない、やつも退屈でマンネリズムそのものの"空白"を埋めようと日々闘っているんだ。
気の狂った連中に命を狙われ、殴られ、ケツを狙われようとも、なお退屈で気の遠くなるほど長い一日。
これが刑務所の何より怖いところだ。

「ジン・ラミーやらないか?」
「残念だったな。このトランプ、32枚しかないんだ」
「そんなふうに投げ飛ばすからじゃないのか?」
「さあな」

ネルソンは肩をすくめ、再びトランプの絵柄を厳しく審査する作業に戻った。
「白状すると、僕にはひとりも友達といえる友達がいなかったんだ。おそらくみんな近寄りがたかったんだろう、
父は町の名士で家が裕福だったし、おまけに僕は頭も顔も良いから。今思えば、なんてつまらない人生だったんだと思うよ。
ムショに入ったのは思わぬ大事件だったけど、きみに出会えたのは僕の人生で一番の贈り物だ」
よくもまあ、こんなせりふをしらふで男相手に言えるもんだ。
俺は汗くさいベッドから起き上がり、肘をついてネルソンの顔を覗き込んだ。ネルソンの大きな目が俺を見上げる。

「そいつは俺のせりふだ、ネルソン。お前は俺の一番のダチだ。絶対悪いようにはしない」
棒読みでそれをいいきる前に、ネルソンの両腕が俺の首周りに巻きついていた。
反射的に絞め殺されるかと身構えた俺に、ネルソンは囁くような声で「ありがとう」と三回繰り返した。
それからネルソンはたっぷり十秒間は俺を抱きしめたあとようやく離れ、機嫌よく両手のトランプを眺めながら
きれぎれに歌を口ずさんだ。ネルソンが何かといっては口ずさんでいる定番の曲だ。
うろ覚えなのかそもそも歌えないのか、1、2フレーズしか聞いたことがない。
これを聞くと俺の中のネルソンに対する恨みつらみがよりいっそうふくれ上がる。
枕を頭からかぶって鼓膜を鉛筆で突き破りたい気分をなんとか抑えて、俺は二段ベッドの下段に再び体を横たえた。

「Yo, come on move this♪ Shake that body, Shake that body♪ pumpin'…piece of mine…doin' fine♪」
ネルソンの見事な歌声を聞きながら、俺は目を閉じた。
明日のシャワーはバリーのすぐそばに場所を陣取ろう。髪を洗いながら石鹸を取るふりをして
ネルソンの腰のタオルを奪い、よろけたはずみにネルソンをバリーの胸の中に押しやってやる。
それから三食すべてのめしに使用済のコンドームを入れさせよう。ひとつやふたつじゃない、一食につき5つは必要だ。
一時間おきにネルソンを殴らせ、ナチ連中にイビらせよう。看守にいいがかりをつけさせて
ビリビリ棒で殴らせるのもいい。それからホモ連中に"ネルソンの白桃は生娘みたいに締まってる"と吹き込もう。
正直なところかなりの眠気がすぐそこまで来ていたのだが、ネルソンの歌声は
実に見事にネルソンいびりの策略を練る俺の集中力を高めてくれた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ちょっとはみでてしまった、ごめん
ちなみに>留置所でズボンを脱がされ下着姿で泣いて~という下りは未公開シーンであった下り


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