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想う、ふたり

当主と補守。
***を境に視点が変わります。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

Aと補守が練習場のベンチに座り、深刻な表情で話をしている。
補守と次の仕合のことで確認したいことがあったのだが、
割り込めるような雰囲気ではなかったので、踵をかえしてロッカーに向かった。
彼と組む当主が他に増えたということもあり、一時より会話が減った気がする。
(俺と上手くいったから、出番が増えたんだぞ)
さっと頬に熱が帯びる。
まるで嫉妬じゃないか。
先の思考を消したくて、頬を軽く叩いた。
「一人で何してんの」
ロッカーの入り口前で、同期の男がこちらを見て笑っている。
「やらしーこと考えてたんだろ」
「お前じゃないんだから」
「俺の仕事はそういうリ一ドを考えることですから」
彼は切れ長の瞼を更に細めて笑う。
「で、真相は?」
「しつこいなあ。何でもねえって」
「恋の悩みなら相談に乗るぞ」
「杯Qの相談に乗ってくれよ」
「まあそれも乗ってあげて良いんだけど。今は、俺より先に相談する相手がいるっしょ」
同期は笑いながら「じゃっ」と、肩に触れて去った。
怪訝に思うと、背後から足音と自分を呼ぶ声。
先程までAと話をしていた補守が息を切らせて近寄って来た。
「えっと、まだ時間ある?ちょい今度のことで確認したいことがあって」
「あ、俺も」
「じゃあ、ここじゃ何やし、どっか部屋空いとるかな」

打合せ室に向かう彼の後ろに付いて行くと、突然「仲ええなあ」と、話を振られる。
先の同期の男を指しているのだろう。
やはり同じ位置として気になるのだろうか。
「まあ、ずっと一緒なんで」
「ええよな、同期て」
「はあ」
「出会うべくして出会ったんやろうなあ」
「えっと、そんな大層なもんでもないです。フツーです」
「そっか」
会話が途切れて、足音だけが廊下に響く。
今度はこちらから話をしなければならないだろうか、と迷う間に
彼は空いている部屋をひとつ見つけたようだ。
「閉まってるな。鍵もらってくるわ。ちょっと待ってて」
立ち去る彼の背中を見つめて、ふと昔読んだ彼の経歴を思い出す。
彼にはいたんだ。
出会うべくして出会ったひと。絶対的な存在が。
まだ、その人のことを忘れられないのか。
なげる自分を目の前に、その人を追い続けているのか。
(俺とのことだけ、考えていれば良いのに)
ドアに持たれかけたまま腰を下ろし、深くため息をついた。
左手の指先でこめかみを強く押す。
「何考えてるんだよ・・・」

***

困らせることを言ってしまったな。
鍵を取りに向かいながら、先程の会話を悔やむ。
自分以外との強い繋がりを目の当たりにして、嫉妬してしまったのだろうか。
Aとの話を早々に終わらせて彼を追いかけてしまったのも、彼の姿が見えなくなったからで。
これから話すことも、別に今日でなくても良かったわけで。
焦っているのか。若い子に対して、大人げない。
事務室に入り、鍵を取って記録簿に名前と時間を記す。
「じゃ、借りてきます」
チャリと音を立てた鍵を右手で握りしめた。
事務室から出て、窓を眺める。
遥か彼方に想う、一人の影。
(お前は今もなげているのだろうな)
いつの間にか手放してしまっていた約束。
(俺はここで叶えるよ)
暮れてゆく空。季節はもうすぐ終わる。
足早に彼の待つ場所へ向かった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・*)イジョウ、ジサクジエンノカタオモイデシタ!


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