Top/52-461

愛を乞うモノ

うみねこのなく頃に ロノウェ×戦人。
ep4まで一気読みしたんだが、ep5がどこにも売ってない記念。ヘソ噛んで死のうかと思ったんですが、
妄想の魔法は使えることを思い出したんで、心のep5を書いてみたよウーウー。
というわけで全然まだ読んでないので設定に矛盾があっても笑い流していただきたいと切に希望。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 戦人が湯船に身を沈めると、僅かに動きを止めた。
「……いい匂いだな」
「お褒めに与りまして」
「お前が何かしたのか?」
「ティーローズの系統をベースに少々アレンジを。いわゆる香油でございます」
 薔薇の種類を言われても戦人にはピンとこなかったが、ロノウェの調合した香りは気に入ったようで、バスタブの
中で猫のように身を伸ばす。広いバスルームはバロックめいた装飾に彩られ、華美ではあるが頽廃的だ。その湿
度の高い密封された空間に、戦人に合わせた甘く爽やかな香りがゆるゆると広がってゆく。戦人は薫り高い湯気
と適温の湯に、深い息を吐くと共にすっかり弛緩し、湯を掬っては手の間からこぼれるそれをぼんやり見つめた。
浴室であってもいつものように完璧な身なりで、脇にひっそり控える執事に裸身をさらして気にした様子はない。
「ホントに何でも器用にこなすよな。お茶に菓子、メシも作るし、部屋の掃除、ベッドメイキング、……それに俺の
世話か。別に付きっきりじゃなくてもいいんだけどよ、って何回言っても、聞きゃしねーし」
 主のぼやきに悪魔の執事は忍び笑いを漏らす。

「お客様を持て成すのが家具の務め、そして主に尽くすのは家具の喜びですよ。かつての客人であり、現我が主
であらせられるバトラ・ベアトリーチェ」
 ロノウェは優美な動作で上着を脱ぎ、手袋を外すと、申し訳程度にシャツの袖をまくる。失礼いたしますと声をか
け、浅いバスタブに横たえていた戦人の体を起こした。スポンジを手に取るとたっぷりと泡を起こし、戦人の背中を
洗い始める。湯のしぶきはなぜか一滴もかからない。戦人は俯いて何も言わなかった。
「……それにしましてもお客人であった当初から比べられますと、戦人様もずいぶん扱いやすくなりましたねえ。
最初は入浴のお世話をするたびにそれはそれはひどく騒がれて」
 皮肉交じりの笑みに戦人も振り向いてニヤリと笑い返した。負けず嫌いはこうなっても健在だ。
「へえ、お前のアレはお世話のつもりだったのかよ。俺はてっきり新手の嫌がらせだとばかり思ってたぜ。イヤだっ
つっても、暴れてもお構いなしに無理やり服ひんむいて、頭から湯はぶっかけるわ、ゴシゴシ泡まみれにするわ、
あげく間違えましたとか爽やかに笑いながら水ぶっかけたこともあったよなあ?」
 ロノウェの皮肉交じりの笑みはますます深くなる。

「おやおや、私めの痛恨のミスを覚えておいでとは、赤面の至りでございます。しかしながら私も長年、お嬢様の
下で家具を務めさせていただいておりましたが、入浴中のお客様に力任せにバスタブの中に引き込まれ、頭から
靴の先まで泡まみれのずぶ濡れにさせられてしまう経験はなかなかに得難く、貴重なものでございました」
 戦人はその時のことを思い出したのだろう。いっひっひと肩を揺らして笑いだした。
「あん時のお前の顔ったらなかったぜ。呆然としてたよなあ? 水ぶっかけられても、塩味のクッキー食わせられて
も、あの顔思い出すとおかしくて笑いだしちまって。そんな俺とお前見てベアトがずいぶんしつこく聞いてきたけど
な。まあ、そんなことやってりゃ、しまいに素っ裸でいるのもどうでもよくなっちまったよ」
「さようでございますか。では大人しく引き続きお身体を預けていただきましょう」
 戦人の減らず口を黙らせるように、頭も泡立てて洗い、肩から腕をもみほぐすように軽くマッサージを施すと戦人
の体が完全に脱力した。とはいってもさすがに身体の前面はかたくなに自分自身で未だに洗っている。しかし、こ
の様子ではロノウェがそのうち戦人の全身を洗いたてるようになっても、もはやそれほど強い抵抗は示さないだろ
う。

「……ところで、戦人様」
「んー」
 濡れた紅い髪が首筋にまとわりつくさまを楽しみながらロノウェは目を細めた。
「そろそろよろしいでしょうか?」
「何がだよ」
 首筋から背筋にかけてゆっくりと揉み解され、戦人は充足の吐息を漏らす。やがて眠くなってきたと呟きながらも
、首をわずかに振った。身体の動きに合わせて湯が揺れ、とぷりと僅かに音を立てる。
「契約の件でございます」
 その言葉を聞いた途端、弛緩しきっていた戦人の身体が強張った。横目でおそるおそるロノウェを見るが件の
悪魔は胡散臭いほど爽やかに笑っていた。
「……あー、あー、それな、うん、まあもうちょっとこう、検討をだな」
「検討も何も、契約を交わすか、交わさないかの2択でございますよ? それに考えるお時間は十分に差し上げた
かと」
 うっと戦人が詰まる。対して悪魔の家具頭は当りは柔らかいものの、今回は引くつもりはないらしく、優美に笑み
を浮かべながら返答を暗に促していた。
「魂をいただくと言っているわけでなし。はっきり申しますとお取引といたしましては破格でございますよ? 多少と
もお付き合いをさせていただいた戦人様に対する、これは私の好意だと受け取っていただきたいものです」
 さらに追い込まれた戦人はうう、と口ごもる。
「だからってよお……」

 話は数日前に遡る。

「……無尽蔵の黄金を生み出すはずのベアトが、お前を高給で召し抱えたって言ってたよな。でも今俺はお前と
契約した覚えはないし、お前に支払う対価も持ってはいない」
「その件は御心配には及びません」
 自分を手伝うと申し出てくれたロノウェに感謝しつつも、彼の正体が正体であるために契約の件だけははっきり
確認しておこうと話を切り出したのである。
「お嬢様の名を、戦人様が受け継がれた経緯が経緯ですので、厳格であるべき契約が曖昧なまま宙に浮いてい
るのです。すなわち、お嬢様の名を受け継がれた戦人様に、私とお嬢様が取り交わした契約も受け継がれている
のか否か、という問題です。私は受け継がれた、と判断してここに居させていただいております。そして対価はお
嬢様から先払いで支払われております。ですから、戦人様におきましてはお気遣いは無用でございます。……ですが、」
 ほらきた、と戦人は胡散臭そうにロノウェを睨みつけた。悪魔がタダで手助けするわけがないのだ。
「私とお嬢様が交わした契約書には、お嬢様が仇なす者共に報復する際に助勢をいたしまして、お嬢様の興を
削ぐことは含まれておりませんでした」
 ロノウェの持って回った言い回しに戦人はポカンと口を開けたままだった。

「つまり、お嬢様が買ったケンカ、売ったケンカに手出しは厳禁されていたのでございますよ。ぷっくっく!」
 堪えきれずにロノウェが嘲笑してもまだ戦人には事態が呑み込めなかった。
「まだ分りませんか? こう言い直しましょう。これから先、戦人様があの魔女や探偵などと称する下賤のモノ共に
お嬢様に受けたような仕打ちを被ったとしても、私としては高みから見物している他はないということなのです」
 大きく戦人の目が見開かれた機を逃さず、ロノウェはすいと顔を近づける。勢いに呑まれ、鼻先にロノウェの顔
があっても戦人が身動き一つしなかった。
「悪魔は、厳密な存在なのです、戦人様もご承知のように、契約なしでは諍いの際、指先一つ戦人様のために動
かすことができません。このような話が出たついででございます。新しく契約を結ばれますか? 戦人様。無論魂
を差し出せなどとは申しません。今の貴方に提供できるもので結構でございます」
 笑みを含んだまま戦人の耳元に囁く。ごくりと戦人の喉が鳴った。ロノウェに指摘されて改めて気付いた。ロノウ
ェ以外に多少なりとも信頼できる味方など元からいなかったのだ。しかもこの先の展開もさらに過酷になることが予
想され、この目の前で微笑んでいる男の力なしでこの先を乗り越えられようはずもないことは明らかだ。
 ……しかし、悪魔と契約なんて。とびきり狡猾で、とびきり口の上手い、この悪魔と契約なんて。
 ロノウェは無言で戦人を見つめていた。修辞学を司る己の能力を駆使しなくても、戦人が思い通りの場所に転
がり落ちてくることは明白であったからだ。やがて――。
「……何が望みなんだ」
 俯いて声を震わせた戦人に、ロノウェがどのような顔をしたかは分らなかった。

 そして現在の苦境に至る。
「だからって、キ、キキ、」
「キス、でございます。破格でございましょう? 悪魔をこ、れ、ほ、ど! こき使ってキス一つで済ませられるなん
て。いやあ戦人様は運がよろしゅうございます。お嬢様が私に支払った代価をお知りになったら、目を剥くこと間違い
なしでございますよ?」
 これほどを嫌みたっぷりに強調してロノウェがにっこりと笑うと戦人は俯いて顔を手で覆った。
「ムカつく! ムカつくが何も言い返せねえ自分が憎い!」
「1日にキスを3回。今の貴方様でも十分に提供いただけるものでございましょう?」
 戦人は覆った指の間からちらりとロノウェを盗み見る。
「おや、意味が分りませんでしたか? 詳しく言い直しますと今の孤立無援で万策尽きて五里霧中で途方に暮れ
た無力の戦人様でも十分に提供、」
「黙れえっ! このイヤミ悪魔ぁっ!」
「お褒めに与りまして」
「褒めてねえだろ! 明らかに罵ってるだろ!」
 ロノウェのペースに乗せられ湯船の中でぜえぜえと息を荒くしていた戦人はやがて深いため息をつき、打って
変わった弱々しい声で呟く。
「ヤ、ヤローにチューなんか気持ち悪くないのかよ」
「ええ。戦人様に口付けを頂けるなんて胸が躍ります」
 ぐぐ、だのぐお、だのと呻いていた戦人はやがてがっくりと肩を落とした。じたばたと足掻いているが、もとより選
択肢はなかったのだ。おそらくは、ロノウェもそれを承知で戦人の最後の我儘に付き合ってくれているのだろう。

「……分ったよ」
「と、申しますと?」
「このやろ……。だから! それでいいっつってんだ!」
「はっきりと言葉にしてくださいませ。契約は正確かつ厳密でなければなりません」
 思いのほか、冷徹に響くロノウェの声に気後れしながら、戦人は言葉を探した。
「う、だから……。俺は、お前と契約する」
「契約内容に異存はございませんね?」
「ああ」
「では、我が主。この言をもちまして、私、ソロモン72柱が序列27番ロノウェと
右代宮戦人様の契約締結とさせていただきます」
 厳かな声でロノウェが告げると戦人は緊張した面持ちで頷いた。
「で、でもよ、何も風呂場でこんなことしなくても」
「手っ取り早いですから」
「何が」
「このまま、ファーストキスを頂こうかと思いまして」
「な、何だとーっ!!」
 がばっと湯船から立ち上がりかけた戦人の肩をがっしりと掴みつつ、ロノウェはにこやかに笑いかける。
「初めての口付けまで頂戴できるとは役得でございますねえ。初日でございますから、挨拶代わりに」
「そんな挨拶ゴメンだ! つか何で俺が初めてだって知ってんだよ!」
「私、悪魔でございますから」
「理由になってねえ!」
 喚き立てた戦人の口元にロノウェは指を一本立てて黙らせた。
「契約、でございますよ?」

 顎を優しく持ち上げると、戦人の抵抗が弱々しくなった。ロノウェの腕を掴んではいるが、その力もロノウェを静止
するほどではない。追い詰められてゆく表情と羞恥と焦りが交差する眼差しをロノウェは目を細めて楽しんだ。
「戦人様、濡れた手で掴まれていては私のシャツが台無しになってしまいます。もっとも、今回は大目に見て差し
上げましょう。もっと濡れることをいたしますから」
 戦人が何か言おうとする前に、軽く口付けた。ちゅっと音を立てて離れると戦人は茫然としている。その子供っぽ
い仕草に笑みを浮かべながら、今度はねっとりと唇を奪った。戦人の身体が今度こそ強張る。濡れた裸身を湯船
越しに抱きしめながら、あくまで優しくキスを繰り返した。身を震わせていた戦人の身体から力が抜けるのはすぐ
だった。ん、ん、と鼻から息が抜ける甘ったるい喉の奥からの鼻声には戦人自身は気付いていないようだ。怯えさ
せないようにゆるゆると背骨に沿って指を這わせると、それにも敏感に戦人は反応して、びくんと身体を震わせる。
バシャン、と湯が跳ねた。
 優しく、蕩けるように、優しく。
 ロノウェは内心で密かに笑った。悪魔らしい邪悪な忍び笑いと、初心な戦人の反応に苦笑する二つの入り混じ
った思い。

 出会った当初は毛を逆立てた猫のように警戒していた。茶菓子を供しても、食事を運んでもあるいは雑用をこな
してやっても気配をうかがい、探るような目つきは長く続いた。それを時間をかけ、信用させ懐柔した。戦人は懐
に一度入ってしまえば危ういほどに懐いた。今では入浴の際に裸身を晒し、寝起きの際に服を脱がせ着替えさせ
ても寝ぼけまなこで身体に寄りかかってくる始末だ。戦人本人は自分の変化に気づいてはいないだろう。ああ、怠
惰のベルフェゴール、確かにこの快楽は御し難い。
 ロノウェは元の自分の主を嘲笑った。
 黄金の魔女、ベアトリーチェ。北風と太陽という作戦はなかなかに良策であったと思いますよ。しかし、日の光は
染み入るものではなくては。いつも輝いているものなくてはなりませんでした。そう、たとえば、このように。慎重に
、細心の注意を払って、時間をかけて穏やかに。だからほら、今、戦人様は頬を染めて悪魔の口付けを受けている。
付け焼刃の太陽ではこうはいかない。そう、本当に手に入れたいなら、手間を惜しんではなりません。魔女の
存在を認めさせる? ああお嬢様、貴女は日向の水溜りのように最後まで手温くていらっしゃった。いいえ、いい
えお嬢様。魔女の存在も悪魔の存在も不要でございますとも。戦人様はこの『ロノウェだけを認めればよい』ので
す。強欲は悪魔の美徳、嫉妬は甘き美酒。知っておりましたか、お嬢様。私は戦人様を一目見たときからそのお
身体も魂も、頂戴したくてたまらなかったのでございます。悪魔に魅入られてしまうとは。思えば戦人様もなんとお
気の毒な方でございましょう。

 不意に悪魔がくつくつと笑いだしたので戦人はトロンと溶けたままの眼差しをぼんやりとロノウェに向けた。
ロノウェは温和に笑みを浮かべ、戦人の濡れた紅い髪を何度も梳いてやる。戦人は髪を愛撫される未知の快楽に
うっとりと目を細めた。
「身体を洗った湯をまだ流してなくてようございましたね」
「……え?」
「身体が隠せてよかったではありませんか」
 戦人は一瞬目を見張り、やがて恥ずかしそうに目をそらした。自分でも下半身の変化には気付いていたのだろう。
 ロノウェは楽しそうに囁く。
「だから浴室でようございましたでしょう? すぐに処理ができます。ご安心を、契約外ですが、アフターサービス
させていただきます。他ならぬ、戦人様の為ですからね。ぷっくっく!」
 愛は一なる元素。身も心も魂でさえも。
 ロノウェは快楽に溶けきっている戦人を見てとると、ゆっくりとその前に跪いた。
「……我が君。貴方に全てを奪われたこの哀れな悪魔に、どうか慈悲と、憐れみを」
 戦人の手の甲にロノウェは敬虔な口付けをそっと落とした。ほんの一瞬、祈るような仕草さえ見せ、
ロノウェは目を閉じた。そして戦人の身体を再び抱きしめ、淫猥な遊戯で戦人を汚していったのである。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

何か待っててくれた方もいたようで、とりあえず出せてよかったです。
しかし、ep5が見つからない…。年末冬祭りまで待つしかないのかのう…。

  • 萌えすぎて子宮爆発しそうでした -- むくを? 2009-11-07 (土) 00:08:54
  • ロノ戦萌え過ぎました!! -- める? 2009-11-07 (土) 19:14:27
  • フォー! こんなとこにまでコメントいただけるとは思いませんでした! 書いてよかったです。ありがとうございましたー! -- 410? 2009-11-08 (日) 21:55:30
  • 萌えすぎた…もっと見たいです!GJ!! -- ? 2009-12-09 (水) 09:44:55
  • コメントありがとうございます。ご縁がありましたら2月のイベントで新作をどうぞ(礼 -- 410? 2009-12-20 (日) 01:27:51

このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP