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保首と当主と補守
↑の順でチャプターごとに視点が変わってます。
オリジナルではないけれど、モデルがいるといえば現実を無視しすぎているので・・・。

好きに想像して頂けたら。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

chapter1「A→B」

誰もいないロッカールームで、一人ぱらぱらとノートをめくり、
今日の戦った相手のデータ記録を見返す。
目を閉じて、勝てる工程をイメ一ジする。
だが、上手くいかない。膨れ上がる黒い膜がその景色を侵食する。
やっとあの人の支えとなれるチャンスがきたのに。
その為の研究も、努力も尽くしてきたはずなのに。
堰を切るかのように突如沸き起こった、自分自身への憤り。
振り向き、力任せにノートを床に叩きつけた。

はっと気がついて、立ち竦む。
目の前には、ノートを拾う一人の影。
苦楽を共にした仲間、友人。そして大切な、  。
躍進に喜ぶ彼の姿をずっと夢見てた。その傍にいれることも信じていた。
じっとこちらを見つめる視線。心の底を見透かされる感覚。
戦いの場と同じように向き合っていることに気がついて、思わず口元が綻ぶ。
あの場所では、勝つことが全て。
ゆっくり息を吐き出す。強張っていた体から、力が抜けた。
「・・・無様な所見せちゃったな」
近付くと、彼の手からノートが差し出される。
手をのばして取ろうとすると、彼は腕を引いて避けた。
黒目がきらりと光った。
「今日、付き合えよ」

chapter2「B→A」

大きな雨粒が窓を強く叩きつけていた。狭い車内に、雨音だけが絶えず響く。
「やまないな」
「やむよ」
「しばらくやまないだろ」
「いつかやむよ」
「そりゃそうだけど」
彼は言い返すのをやめて、困ったように微笑んだ。
「どうする?どこ行く?」
「ここでいい」
「・・・えーと」
わざと困らせることを言ってみる。彼もわざとだと知っている。
問題は、どう言葉を繋げるか、だ。
「こう雨がうるさいと、そんな気分にもなれないというか」
「するって一言も言ってないよ」
「あー・・・。そうですね・・・」
そのつもりだったけれど、先に拒否されたので否定する。
取り繕った励ましを、彼は望んでいない。全部、わかっている。わかってしまう。
手を伸ばしてシャツを引っ張った。
何、と近づいたその頭を引き寄せてぎゅっと抱え込む。
唇が耳たぶに触れた。
腕の中にいるのに、考えもわかるのに、どうしてこんなに遠いんだ。
ぽんぽん、と優しく背中に触れる彼の手のひら。
しまった。こちらの不安を感じ取られた。
「大丈夫だよ」
両肩を掴まれ、体が離れる。
腕を取って睨んでみたが、彼はいつものように微笑むだけだった。
「送るよ」
頷くことしかできなかった。それが正解だから。
わからなければ、間違えることができたのに。

chapter3「C→B」

夜中に突然の来客。髪も服も雨で濡れていたので、有無を言わさず浴室に押し込んだ。
独り身だから気兼ねされないのは良いとしても、おもてなしできないのは悪い気がする。
用意した真新しいシャツを着た彼が浴室から出てくる。ソファに座り込み
「ウチには一度戻ったんですが、何か、ちょっと」と来訪の理由もぼかす。
理由はどうあれ、こうして若い子に頼りにしてもらうのは、嬉しい。
温かいお茶をテーブルの上に置くと、彼は「すみません」と小さく呟き
両手でカップを取って啜った。
「泊まっても良いからな」
肩を叩くと、彼は笑みを浮かべて「はい」と答えた。
シャワーを浴びて戻ると、彼はソファの上ですやすや吐息を立てていた。
変な体勢になってはいけないので、慎重に抱えてベッドに寝かせる。
毛布を被せる際に、ふと顔を覗き込む。
長い睫毛。整った顔立ち。無防備な若さ。
きれいだ。
頬に手を伸ばしそうになって、慌てて手を引っ込めた。
何をしているんだ。
思いもしなかった衝動に顔が熱くなって焦る。
冷たい水でも飲もうと背を向けると、ついっと背中を引っ張られる感覚。
振り向くと彼の手がシャツを掴んでいた。
寝ぼけた掠れ声で、彼はその名を呼んだ。
ここにはいない、彼の想うひと。
手が離れ、ぱたりと落ちた。

先ほどまでの浮かれた熱はすっかり引いている。
ひざまづいて、放り出されたその手をベッドの上に置き、
再度、その端正な顔を見下ろす。
愛おしくなって、彼の柔らかな髪をそっと撫でた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・;)イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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