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What can I do for you?

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                     |  BLゲー 幸運犬 カポおたおめ記念
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  カプは偏らないようにしました。
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 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
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俺は、あいつのために何ができる?

短い髪をわしゃわしゃと乱しながら、イヴァンは傍らに置かれた(というよりも、
投げ捨てられていたと言った方が的確だろうか)カレンダーに目をやった。
ご丁寧に赤鉛筆で丸のつけられているその日まで、あと3日。
「っ、だぁー! もう、どうすりゃいいんだよ!」
心の奥からわき上がる苛立ちを紛らわそうと、そのカレンダーを手に取り、
床へ投げつける……が、それもやはり空しいだけであった。自らに向けられた苛立ちは、
その程度でどうにかなるようなものではない。もっと深く苦しく、重いものなのだ。

イヴァンが苛立っていたのは、彼自身が何も知らないから、だった。
彼はジャンのことを”ダチ“だと思っているし、またジャンからも同じように
思われている、と思っている。とはいえ、彼はジャンのことについて何も
知らなかった――3日後に誕生日を迎える、ということさえも。
確かに、これまでそのようなことを話すようなきっかけもなかったし、
まさか『あと何日で誕生日なんです』なんてことを自分から言い出すような馬鹿はいない。
そうわかっている……わかっているはずではあっても、やはり自分が『何も知らない』という
現実を目の当たりにしてしまうのは、さすがにショックが大きかった。
その上ジャンの誕生日についてはベルナルドから聞かされたのだ。
それも「何だ、知らなかったのか?」という言葉のオプション付きで。
イヴァンはそのときのベルナルドの顔を思い出しては、腹の中で「今度会ったら
ありったけの前髪むしってやる」と呟くのだった。

……ともかく、イヴァンは焦っていた。
あと3日というタイムリミットが、彼の思考を更にかき乱していく。
何がいい、どうすればいい、俺には何ができる?――結局、行き着く答えはただ一つ。
「俺の戦乙女に、頼るっきゃないよなァ」
だとすれば、あいつにどんな景色を見せてやろうか。どうせ行くのなら思いっきり
華やかなところがいいだろう。安っぽい場所じゃ、つまらない。ならば――
イヴァンは、引き出しから地図を取り出し勢いよく広げ、場所の見当をつけ始めた。
その表情は最初のような厳しいそれではなく、プレゼントを待ち望む子供のような、無邪気なものに変わっていた。

俺は、あなたのために……何が、できますか?

「そうだ、それでいい。……よろしく頼む」
いつも手にしている刃のように研ぎ澄まされた声でそう告げてから、ジュリオは静かに受話器を置いた。
ふうと一息ため息を落とし、肩の力を落とす。”仮にも”ボンドーネ家の子息として生まれた彼は、
それなりの部下のあしらい方を心得ている……つもりではあるのだが、それでもやはりこうして
命令を下すとなるとどうしても肩に力が入ってしまう。
――しかも、それが「人を殺めるための命令ではない」のであれば、尚更。

ジュリオが話していた相手は、とある店のオーナーだった。
話の内容は、「一日店を貸し切らせてほしい」ということ。指定された日付がほんの数日後だったと
いうこともあり、オーナーもはじめは渋っていたものの、ボンドーネ家の名と提示された金額を
聞くなり、手のひらを返したようにあれやこれやとパーティープランを出してきた。
……受話器の向こうで、ジュリオが苦笑していたことも知らずに。
そんなオーナーの態度はともかく、その店のシェフの腕の良さはかなりのものだ。
幼い頃から『ボンドーネ家の名を汚さない男になる』ためのあれこれを教え込まれてきた
ジュリオだからこそ、その店の名を聞いただけでわかる。
……まさか、こんなときにそれが役に立つとは、思わなかったのだが。
「ジャン、さんは……喜んでくれるだろうか」
ふと、記憶の底に眠るあの頃の表情を思い出す。今はあの頃よりも大人びてはいるものの、
輝きは色あせないままだ。
あの輝きを絶やさないためなら、自分は盾にでも剣にでもなる。
「裏切り者の子息」の名前だって――使えるのならば使ってやる。

だって俺には、それくらいしかできないから。
ジュリオは小さくそう呟いて、机の上に置かれたままになっていた手帳に目をやった。
指定された日まではあと数日ある。まだまだやるべきことは残っているはずだし、
またできることも見つかるかもしれない。それならば――
そう思ったとき、先ほどまでオーナーと連絡を取っていた電話が鳴った。
『いきなりすまない、ジュリオ。……仕事だ』
ベルナルドの冷静な声で、体の芯が張り詰める。頭の中は一気に切り替わり、次の指示を待っていた。

俺は、お前に何をしてやれる?

目の前に並べられた紙に一枚ずつ目を通し、ルキーノは甘い香りのする紫煙を吐いた。
10着分ほど、と頼んでおいたデザイン画はどれもこれも彼の好みには合わず、
あぁやっぱりこれは自分が直々に出向くしかないんだな、とため息をついていたところだったのだ。
もうすぐジャンの誕生日なんだが、とベルナルドから聞かされたとき、真っ先に思い立ったのは
ジャンのスーツを新調してやること、だった。GDとの戦争が落ち着いたときにも何着か
仕立ててやったのだが、それでも新生CR:5を背負って立つためにはまだまだ足りない。
毎日全く違うスーツを着ていてもいいほどなのだから。

短くなった煙草を灰皿に押しつけ、ソファーに沈み考える。
ジャンに着せるのであれば――やはり、体の線の細さが映えるデザインがいい。
野暮ったい、それこそ顧問の方々が着るようなあんなものは彼には似合わない。
もっと洗練されたデザインのスーツを着せてやらなければ――

頭の中にデザインが浮かび上がる。同じようなスーツは見つかるだろうか……いや、ないなら
生地も指定して作らせればいい。金の問題は何とでもなる。ジャンのためだ、と言えば
ベルナルドも苦い顔をしないだろう。
……そしてそうだ、と思い立つ。スーツが入っている箱のうち、一つを違った趣向にしてやろう。
前の家におそらく残ったままになっているハイスクールの制服を、ジャン用に仕立て直して
入れておいてもいい。それか、いっそのことドレスを入れておくのもいいかもしれない。
スカートがふわりと翻るようなものもいいが、ここは大人しくマーメイドラインのシンプルな
デザインにしておくべきか……
そこまで考えて、ルキーノはようやく自分の思考があらぬ方向に逸れ始めていることと、
顔がだらしなく緩んでいることに気づいた。両手で頬をばちんと叩き、気を引き締め直す。

幸い、今日はこれから外回りの予定だ。仕事を早めに終わらせて、昔馴染みのあの店に寄ってみよう。
あそこなら自分のイメージにぴったり合う――ジャンによく似合うスーツを仕立ててくれるはずだ。
「そうと決まれば、早めに出発しなきゃ……な」
ルキーノは世の女性方を虜にした笑顔で、そう呟いた。

俺は、お前のために何ができるだろうね。

今年も、この季節がやってきたか。
一旦帳簿から目を離し、すっかり温くなってしまったコーヒーを口にする。
去年はそれどころじゃなかったが、ジャンの誕生日を祝ってやるのもこれで何度目になるだろうか。
これまでジャンはただの構成員のひとりであったから、個人的にどこかの店に誘うか、もしくは
見かけたときにおめでとうと一言言ってやるくらいしかできなかったのだが――今年は、違う。
今のところは”見習い中”であるとはいえ、立派なCR:5のボス、なのだ。祝うのであれば、
それはもう盛大にやらなければならないだろう。
……独り占めできないのは、残念だけどね。
ベルナルドはその言葉を冷めたコーヒーで胃の中に流し込んだ。この言葉は口に出すべきではない。
腹の奥底に仕舞い込んで、墓まで持って行かなくてはならない――そのくらいのものなのだ。

ジャンとはもう相当長い付き合いになる。だからこそ彼のことならば何でも知っている――と
思っていたが実際はそうでもなかったらしい。彼の誕生日をどのように祝ってやるのかを
考え始めると、とたんに思考が止まってしまうのだ。
何をすれば彼は喜んでくれるのか、彼にどんなことをしてやればいいのか――考えても考えても
答えは出ず、ただいたずらに時間だけが過ぎ……タイムリミットが、ますます近づいてくる。

「さて、どうしたものか……」
そう呟いて、もう一杯コーヒーを淹れようとカップに手を伸ばしたとき――一つの案が、浮かんだ。
ジャンは誰よりも”仲間”を大事にする男だ。それならば、他の幹部も巻き込んで、より一層派手な
パーティーにしてやった方が喜ぶんじゃないか?
残された時間は残りわずかだが、他の4人と協力すれば……何とかなるかもしれない。
「俺がひとり抜け駆けしようとしているなんて他の奴らが知ったら――
どうなるかわかったもんじゃないしな」
ベルナルドは思わず笑みを零した。他の3人からの嫉妬するような目線を浴びるのも悪くないが、
それはまた――別の機会に。

そうと決まれば、まずは他の幹部を呼んでミーティングだ。
ベルナルドは並べられた電話のひとつに手を伸ばし、慣れた手つきでダイヤルを回した。

次々に景色が流れていく。
もはや悪趣味と言いたくなるほど大きな車に乗せられ、ジャンはただひたすら文句を言っていた。
「だーかーら! どこに連れてくつもりだよ! 俺は忙しいんだって……!」
「だぁーもう黙ってろボケ! どのみち今日の仕事はもう終わりなんだからよ!」
荒々しい言葉を返してくる運転手はイヴァンだった。彼は急にやってくるなりジャンを車の後部座席に
押し込め、どこへ行くのかも言わないまま車を走らせている。ジャンがぶつくさと文句を言うのも
無理はなかった。次期カポである彼には、やらねばならないことがたくさんある。今日もこの後、
ジュリオとともにとある屋敷へ向かい、交渉を――
「って、ちょっと待て。『今日の仕事はもう終わり』って……どういうことだ?」
「どういう意味もねーよ。っつかこんな日なのに何で仕事なんか入ってんだ?」
「こんな日……?」
「はァ? お前、まさか……あぁいや、何でもねぇ」
ジャンの疑問符にイヴァンは顔を顰めたが、すぐに何かを思い出したかのように言葉を濁した。
その態度でジャンの疑問符はますます増殖したのだが、彼はすぐに考えるのをやめた。
どうせイヴァンの馬鹿が考えることだ、大したことじゃない……そう思ったからだった。

やがて車はやたら豪勢な屋敷の前で停車した。
ここで降りるのか、と辺りを見回していると、イヴァンがそっと後部座席のドアを開けた。
さすがは昔ロザーリアお嬢様の運転手をしていただけあって、対応はやたらとスマートだ。
「ほら、降りろよ」
……口調だけは、相変わらずだったのだが。

促されるまま目の前の屋敷へ向かうと、そこには見慣れた大きな影があった。
「おぉ、いいタイミングだなイヴァン。俺も今到着したとこだ」
「あったりめーだろォ? 俺の戦乙女なめんな」
「ルキーノ……? お前も、なんでこんなとこに」
「まあ、それはあとでわかるさ」
そう言って、ルキーノはいつものようにウインクをしてみせる。そして手にしていた包みをジャンに
手渡してから、屋敷の中へ入るよう促した。
「えっと、これ、は……」
「奥の部屋でそれに着替えてこい。なるべく急ぎで、な」
「いやちょっと待てって……う、わっ」
まあまあ、と言いながら背中を押すルキーノの力に抵抗できるわけもなく、
ジャンはただ大人しく指示に従い、奥の部屋へと消えていった。

「……お前、本当に強引だよな……」
「ん? 何か言ったかー?」
「ナンデモナイデス」
ルキーノの目が一瞬妖しく光った気がして、イヴァンは口から出かかった言葉を腹の中に押し込んだ。

「何だ、ふたりとももう着いてたのか」
しばらくして、メイン会場へと続く廊下から姿を現したのはベルナルドとジュリオだった。
「おう、準備は終わったのか?」
「もうすぐで終わる、と。……ジャンさんは?」
「あいつなら今着替えてるところだ。ベストなタイミングになりそうだな」

そんなことを言い合っていると、奥の部屋からばたばたとジャンが戻ってきた。
「すまねえ、待たせたな……って、ベルナルドとジュリオも来てたのか?」
「あぁ。皆様お待ちかねだ」
「へ? 皆様??」
「すぐにわかるさ。……行こうか、ハニー?」
「あ、あぁ……」
いつものようにダーリン、と返すことすら忘れ、
ジャンはただ手を引かれるまま、メイン会場へと足を進めた。

――そしてメイン会場へと繋がる大きな扉が、開かれる。

「うお、まぶし……」
まばゆい光がジャンの目を刺す。思わず閉じてしまった目を恐る恐る開くと、そこには……

たくさんのテーブルいっぱいに並べられた料理と、シャンパングラス。
そして輪の中心には――大きなケーキが、あった。
「これ、は……」
「お前、今日誕生日だろう?」
「だから……一番ケーキがおいしい店を、探して……貸し切りました」
「たんじょうび……」

何だか、ひどく懐かしい響きだった。
この仕事をするようになってから、こんな風に祝ってもらえたことは……なかったと、思う。
せいぜいベルナルドや爺様方からおめでとうと言ってもらえるか、飲みに連れて行ってもらえるくらいで。
しかも去年はあんな騒ぎだったから……誕生日だなんて、すっかり忘れてしまっていた。
「みんな……本当にありがとうな。俺なんか何もしてないし、ここまでしてもらえるなんて、思わなかった」
後ろに控えていた幹部の方へと向き直り、ジャンは少し照れくさそうに言った。
その言葉を聞いて、イヴァンがすっと前へ出る。
「はぁ? 何もしてないとか言ってんじゃねーよ」
その勢いに乗って、ルキーノが続く。
「お前が、俺らのカポとして、そのままそこにいる。それが俺らにとって、一番嬉しいことなんだよ」
「……そういうことだ。誕生日おめでとう、ジャン」
「ありがとう、ございます…生まれてきて、生きていて、くれて」
そう口々に言われ、ジャンはほんの少し目を潤ませながら、小さく「ありがとな」と、呟いた。

「さーて! せっかく用意してくれたんだし、メシ食おうぜメシ! 冷めちまうぜ」
幹部をけしかけるように、ジャンが声をかける。
照明の中で、彼の髪が、顔が、心からの喜びを示すように、きらきらと輝いていた。

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 | | □ STOP.       | |
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 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
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英語だと一人称でも二人称でも”you”なんですよね。


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