アメリカ帰り
更新日: 2011-04-25 (月) 15:19:53
幼なじみ萌えが襲ってきたのでお借りします。
オリジナルです
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
去年からカリフォルニアに留学していた幼なじみのケンが久しぶりに帰ってきた。
こんなにあいつと離れていたのは初めてのことで、何となく会うのが恥ずかしくて迎えにいかなかった。
母は暇だったから向こうの親御さん達と成田へ行ったらしい。バイトから帰った僕を、キッチンに引っ張り込んで話しだした。
「ケンちゃんさあ、すんごい変わってたよ。ちょっと大人っぽくなってた気がする」
僕の中では一年前の姿のケンしか浮かばない。薄い反応が気に入らなかったのか、母はなおも引き止めて話す。
「あんたが来てないのを残念がってたんだから。昔は何かっていうとお互い泊りにいったりしてたのに、薄情者。あ、でも今日は止めときなね。明日から向こうのご両親、旅行に行くらしいから。
今日くらいは水入らずで過ごさせてやりなよ。ああ、私もお父さんにどっか連れてってもらいたいなあ。ヨウちゃん、さりげなくあんたから言ってくれない?」
話の内容がズレてきたので、部屋に逃げることにする。
それにしても電話しとくべきか、迷う。
最初の内は頻繁にメールをしていた。でもしばらくすると話が合わなくなってきた。
向こうは今日パーティがあっただの、ルームシェアしてる友人と何しただの、納豆が高すぎるだのと、海外ドラマかよ。
おまけに、だんだん英文字が増えてきて、自分の知っているケンがぼやけてきた。最後にメールしたのは一ヶ月前。それ以来返事も書いていない。
一回電話がきたことがあった。でも声は時間差があるうえに、金かかるから、とすぐに切られた。あの時何話したんだっけ?
今あいつはすぐそばにいるのに、まだ遠くにいるような気がする。
少し人見知りで、子供の頃よく泣いてたあいつが留学するなんてね。変わった、という母の言葉がよけいに僕を不安にさせる。
でも、明日には会わないと。2週間しかいないんだから。
次の日、結局、何も連絡せずにいきなり家に行くことにした。
呼び鈴を押すと、しばらくしてケン本人が出てきた。そういえば、今日から親御さん旅行か。
「ヨウスケ!」
ぐいっと身体を引き寄せられ思いきり抱きしめられた。あげく、左右に振られた。
おかげで第一声に何を言うか考えてきたのに、色々ぶっ飛んだ。
全く動かない僕に、ケンは慌てて身体を離す。
「悪い。ついいつもの癖でさ。ここ日本だもんな」
引っかかる言い方だ。今のはアメリカンでフレンドリーなハグってやつですか。
ケンは確かに変わってた。少し日に焼けていて、健康的な感じだ。
前は短めの髪をハネさせていたのに、今は前髪まで目が隠れるほど伸びている。
「おばさん達は、旅行だって?」
「そうそう。久々に一人息子が帰ってきたのにこれだよ。結婚記念日だから、譲れないんだとさ」
先行っててと言われ、二階の部屋に行った。ここは一年前と変わっていない、ってこれは当たり前か。
七五三の時に一緒に撮った写真がまだ飾ってあった。
ケンが今にも泣きそうな顔をしている。あいつこの後おもらししたんだった。
その横にはやっぱり成人式の時に一緒に取った写真。ケンの目が腫れている。唐突に感動して泣いてたんだっけ。
本当にずっと一緒だったよな。
しばらくすると、ケンがコーラとグラスを持って入ってきた。
「なんにも言ってこないから、こっちからお前んち行こうとしてたところだったんだ。サプライズって感じで」
コーラをつぐ腕を何気に見ると、二の腕の辺りに痣のようなものができている。
「おまえそれ、もしかして」
刺青が彫ってあった。それもハートがTバックを履いている、良くも悪くもアメリカっぽいデザイン。
こんなことする奴じゃなかったのに。あきれたよ、と言うとがっかりとした表情になった。
「ルームメイトが入れるっていうからさ、留学の記念にと思って一緒に彫ってもらったんだ。
向こうじゃ皆タトゥー入れてるし、別に変じゃないだろ」
「向こうの事情なんて知るかよ。刺青持ちはプールとか銭湯とか入れなくなる」
絆創膏で隠すから平気だ、とケンは呑気に答えた。
「向こうでさ、でかいプール持ってる奴がいて、よく泳ぎにいってたから、こっち戻ってきてまで泳ぎたいとは思わないな。何、ヨウスケは一緒にプールとか行きたかった?」
そうじゃなくて、と言いかけたが止めた。
多分ふてくされた顔をしてたんだろう。場の空気を変えようとケンはお土産、といってTシャツを投げた。
オバマTシャツ……。
「うわ、リアクションなしかよ。ウケると思ったんだけど。つかさあ、久々なのにさっきから、ギスギスしてるのな。会えるの楽しみにしてたのに。メールもよこさないし。何なんだよ」
今度はケンがふてくされた。うなだれて黙り込んでしまった。
そういえば、あの一回だけきた電話を思い出した。
お前の声が聞きたかったんだってあいつは言って、すぐに切られたんだ。
「ちょっと、忙しかったんだよ。そっちはそっちで楽しそうにやってるみたいだったし」
「それ、こっちのセリフ。俺たった一人であっちに行ったんだぜ。なのにお前が俺のこと忘れて楽しくやってんのかと思うと」
なんだ、それ。すねてたのはケンも僕も一緒だったってことか。
心のどこかで何となくほっとした自分がいた。
結局自分が苛ついていたのは、あいつが僕の知らない奴らと一緒に楽しそうに過ごしてることに、嫉妬してたのかもしれない。
僕は子供の頃すぐ泣き出すケンにしたように、頭を撫でた。すると向こうも昔と同じように、頭を持たせかけてきた。
「あっち行ってから、ずっとヨウスケのことばっか考えてた。でもお前はそばにいないし、こんなふうに撫でてくれない。そのおかげで少しは成長したと思うんだ。でもやっぱ」
ケンの腕が僕の首に周り、さっきと同じように引き寄せられた。
「ダメだな、俺、お前……」
何か言ったみたいだけれど、僕の耳はケンの首と腕に押しつけられて聞こえなかった。
どうでもいい。何か会う前にあったいろんな不安が消えていくような気がした。
こいつ全然変わってない。僕の知ってるケンだ。
でも、
「その刺青何とかなんないのか? ハートにTバックって趣味悪すぎ」
「ヨウスケさあ、何が悲しくてTバック履かせなきゃいけないんだよ。イニシャルだよ! ハートにYのイニシャル」
すっきりしました。 ありがとうございます。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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