流星群
更新日: 2011-04-25 (月) 15:18:41
・夏戦争の理x侘x理で高校時代捏造
・彼女表現あるので注意
・理香と直美がでしゃばるのも注意
>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
学生時代までの侘助との思い出は、いつもわんわんと五月蝿い蝉の鳴き声と一緒だった気がする。
あれが夏休み直前だったのか、夏休みの部活なのか。
つるんでいた仲間と木陰に座り込んでいた理一は、茹だるような暑さに頭を垂れた。
日陰でも吹いてくる風が生暖かく、汗の雫が鼻から伝い落ちる。
「陣内……あのお前の従兄弟?な。」
「……どれ…」
「佗助だよ」
ああ…と理一は呻いたが、あれは叔父だとか説明するのは諦めた。
「……佗助が何?」
「ホモってマジなの?」
蝉がわんわんと鳴く。
「……何だそれ」
信憑性のよく分からない噂に、理一が眉を寄せる。
高校2年生。
人とはどこかテンポのズレた理一は、とっくに流れに置いていかれていたが、気付けば回りは皆恋愛と下世話な好奇心で浮足だっていた。
佗助にも何人か彼女がいたのは見たことがあったから、その流れに特段逆らっているわけではないのだろう。
出が複雑なせいなのか、他人と深く付き合うのが苦手な佗助が、けして人嫌いでないのは理一も知っている。
理一にだけは彼女が出来たり別れる度にぼそりと伝えて来たし、彼女の誕生日だとかクリスマスだとかの度にショーウィンドウの前でうんうん唸っている姿は意外でおかしかった。
「佗助、彼女いるよ」
「そりゃ、あれだよ。カムフラージュだよ。
理一、一緒に寝たりするんだろ。気をつけろよ」
「バカ」
理一は呆れ顔で友人を見、首に巻いたタオルで汗を拭う。
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その日の夜だったのか、或いは日を置いていたのか覚えていない。
受験が終わるまで距離を置こうという凄まじくありがちな理由で、理香が彼氏に振られた次の日だ。
丁度なんとかいう流星群が降るという夜。当然彼氏との約束が白紙になった理香は凄まじく荒れていて、
直美と理一、それに佗助を無理矢理引っ張って高台に来ていた。
---直美が新潟から来ていたということは、あれはやはり夏休みだったのだろうか。
直美と理香の恨み言と罵詈雑言は昔からマシンガントークな上に恐ろしく饒舌で、
特に理香の元彼氏など顔も知らなければフルネームすら知っているかわからない直美が、あそこまで相手をこき下ろす様は感動すら覚える程だ。
散々に落ち込んでいた理香が立ち直っているのだから、いいことなのかもしれないけれど女は怖い。
ヒートアップする二人を追うのは諦め、理一と佗助は傾斜の途中の、草むらに腰を下ろす。
「振られる度にあれだから怖い」
「……………」
「佗助は?彼女は?」
「昨日別れた…というか、フラれた」
「…………」
またかとお前もかという言葉はどうにか飲み込んだ。
「……オマエが、ホモって噂知ってる?」
その代わりに口をついた言葉は、飲み込んだ言葉と同じくらい無神経で、理一は自分で眉を寄せる。
「…………」
しばらく、沈黙が続き、理一は唾を呑む。
「噂になったのそこだけか?」
誰がそんなこと、という予想した答えとは違った。噂の主は想像がつくのか。なにかそれがすごく嫌だった。
「他になにかあるのか」
「…………うーん、俺ホモかもしれない」
「……はあ?」
いつもよく分からないこの男が、今日はますます意味が分からない。
「男が好きなのか?」
「それはない。」
「女に興味ない?」
「すごくある」
特殊な文化に造詣がない理一には、それ以上佗助に問う言葉が見つけられない。佗助は理一から目を反らし、夜空を見上げた。
「好きな奴がいるんだ」
「………男?」
佗助は頷きはしなかったけれど、たぶんそうなのだろう。
佗助がどうであれ、疎むようなことにはならないと思っていたのに、いざそれを突き付けられると肺に重たいものが詰まる。
「好きっていうのか、元から好きだったから上手く言えないけど」
「誰?」
ちらり、と佗助が視線を向けてくる。理一の質問に答える気はないらしい。
「見てると、エロいことがしたくなる」
もう夜更けだと言うのに、風はやけに生暖かい。
「……エッチ」
「理一、きもちわるいな」
冗談めかした理一に、佗助が眉を寄せた。
「あ、流れ星!」
翔太が声をあげた方を見る。空を見上げた翔太は、高く天上を指差した。
その指に釣られて夜空を見上げると、理一の目にもキラリと降る流れ星が見えた。
「佗助、お前はそいつに告白とかするの?」
「うーん……とりあえず…」
はっきりしない答えを唸るようにつぶやきながら、佗助は夜空を眺め続けている。
倣ってもう一度見上げた理一の目の前に、また星が降っていく。
「キスしたいキスしたいキスしたい!」
あまりに唐突な願いごとに、理一は思わず吹き出す。
「全然間に合ってな…」
佗助に振り返ろうとした理一の視界がぐるりと回る。
草むらとはいえ、地面に強かに打ち付けた頭の傷みは洒落にならなかったし、全体重をかけられた両肩はぎしぎしと悲鳴を上げる。
それでも、そんなものよりずっと弱い刺激に全神経が集中した。ふに、と柔らかく唇に触れただけの佗助の唇。
たぶん理一の見たことのない誰かに似たくせっ毛が頬を掠め、目を閉じることもできないまま佗助の睫毛だけを見ている。
「………………」
「………………」
例えばもっと大人のキスの仕方だってお互いに知っていたし、急激に血管を拡張して流れる血液は、心臓以外のところにも集まっていた。
「エロいなことがしたい」そうふざけた佗助や、この「とりあえず」のキスのことを考えながら、地面に投げ出された肘から先をどうにか持ち上げる。
その手が佗助の肩に触れると、佗助が驚いてビクリとした。
脳の酸素が足りない状態で何をしようとしたのかは、後になっても覚えていない。
でもたぶん、おそらくは---
「理一、佗助!何やってんの、上がってきなさいよ!」
全ての思考が突然霧が晴れたように全て飛び、ハッと体を引いた佗助が勢い付きすぎたのか、
それともどんな力エネルギーが作用したのか、理一と佗助はそのまま坂道を転がり落ちた。
「理香ー!理一がケンカしてる!」
ようやくそれが止まった頃に、直美がそう叫んだのと、理香の「コラー!」という怒声が聞こえた。
勢い馬乗りになった理一が佗助を見下ろし、なんと言っていいのかもわからず渋面を作る。
ふざけて投げキッスの真似をした佗助の頬を思いきり叩いてやると、いつの間にか駆け寄ってきた理香が理一の頭を殴る。
もう夜だというのに、蝉はしつこく鳴いていた。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
書き込みもたついてご迷惑おかけしました!
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