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振動×元医局長

究明病棟シリーズ4より、振動×元医局長。半ナマ注意。
エロなし生温いキスまで。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

医者は神様じゃない。
時には間違った判断もするし、自分の生んだ欲求に屈折してしまうこともある。
常に完璧でいようとするなと、そう教えてくれたのはアンタだったろ。

「足の調子はどうだ。」

面として聞かされた診療に沢井は一瞬コーヒーを口に運ぶ手を止めたが、
直ぐに薄く微笑んだ。

「お陰様で順調です。」

そう言ってコーヒーを啜る彼の視線は相変わらず振動を向いていない。
そんな沢井を何となく気がかりに感じながらもまるで変わらないその仕草と風貌に、
進藤は無意識にあの日の彼を重ねていた。

――彼、沢井悦二が海/南/医大を去ったあの日から一年。

察しの良い後輩の計らいで医局長室は昼休みの間だけ出入り禁止になっていた。
テレビや雑誌などのメディアを通じて目にすることはあっても、
こうして顔を合わせるのは実に退院の日以来。

「思い出話に花を咲かせたつもりはないぞ。」
「…分かっています。」
「後遺症があったらどうする。」
「緊急とは言えゴッドハンドの異名を持つ貴方に診てもらったんだ。
…傷は愚か、後遺症なんて残せない。」

そう言って憂いがちに笑う沢井の顔付きは一年前と変わらぬようでやはり少し変わっていた。

理屈っぽいのは相変らずだったが、敵意の解かれた表情は以前より穏やかで生き生きしている。

「…」

勿体無い、と進藤は感じた。
けれどそう思うのとは裏腹に、彼の誤解されやすい人柄にどこか感謝している。
不埒な自分に戸惑った。

「…完全に癒えるには惜しい傷だ。」

主治医としてのプライドなんてものは端からない。
しかし治るものを治らないでほしいと願うのは、自分のセオリーを酷く傷付けた。
やはりどうかしている。
そういえばそう感じたのもあの日以来だった。

「まったく…医者失格ですね」

静かな声に顔を上げると、疑心暗鬼に見舞われた先に待っていたのは困ったような笑顔を浮かべた沢井だった。

「…お互いに。」

そう力無く言葉を繋いだ唇はまっすぐ対峙した頭へと伸び、やがてコーヒーの残り香を帯びて優しく潰れた。
触れるだけの、臆病なキス。
隔てたテーブルに右手をつき、腰を浮かせて必死に高く口付ける姿にはそれまでの威厳なんてまるで皆無だった。

「んっ…!」

でも逆にそんな姿に魅せられてしまった。
強がるアンタを見る度に、俺はアンタを看たくなる。

あの時と同じように。

上品に締められたネクタイを抜き取り、一度離れた唇を今度はこちらから引き寄せてやる。
唐突に力強く身を引かれ僅かに体勢を崩した沢井は、
咄嗟にもう片方の手で身を支え弾かれたように瞳を開けた。

「振動せッ…んっ…」

息継ぎの間の訴えも虚しく半ば立ち上がった状態で頭を手前へ引かれ、開口につけこんだ舌が強欲に侵入する。
徐々に激しさを増す口付けの連続にやがて沢井は安定無く足をフラつかせた。
振動が胸ぐらを解放すると拍子に沢井の足はガクリと膝をつき、テーブルにすがって肩を上下させた。

「これでも治ったって言えるのか?」

振動はその場に立ち上がり、地べたに腰をつけた沢井を叱りつけるように見下ろした。

「…すみません」
「何故診せに来なかった。アンタほどの技量があれば自分でも治せたはずだ。」
「傷は…完治しています。ただ後遺症として…長く立って居られない時がある。特に今のような場合は…」

上がった息を整えながら淡々と語る沢井は口調こそ落ち着いていたが、いつになく焦りを見せていた。
新鮮な反応に少し動揺する。

「振動先生、」
「説明してくれ。」

内心毒づいてきたのを感じながら、振動は必死に真面目な顔を装った。
仕切り直したかのような声に辛辣そうな面持ちのまま沢井の顔が上がる。

「どういうつもりでそう言ったのか、こうしたのか。ちゃんと説明してくれないか。」
「…先にものを言ったのは貴方です。」
「先にことを仕掛けたのはそっちだろ。」

沢井は咄嗟の反論に応じようとしたが、適する言葉が見当たらなかったのか大人しく開きかけた口を噤んだ。
こんな攻防戦の先に果たして未来なんてあるのだろうか。
ばつの悪そうに乱れた襟元を整えながら沢井は地べたに折れた膝を立て直し再びゆっくりとソファーへ腰かけた。

「つまり…抽象的に言いますと、」
「具体的にお願いします。」
「振動先生…」
「俺はアンタの主治医だ。」

勘弁してくれと言わんばかりの沢井の表情を振動は抉るように見つめた。
何時なんどきも要領に優れたこの優秀な患者を逃さぬように。

「…ですから、」

意地の悪い振動の問診に沢井は暫く悶々と表情を濁していたが、
やがて諦めを決め込んで溜め息とともに静かに肩を落とした。

「残す傷は何も一つでなくとも良いと、そう言ってるんです。」

照れるわけでも不貞腐れるわけでもなく、沢井は見上げた先へただはっきりとそう告げた。
そんな姿が何よりも彼らしくていじらしい。

「医療改革の諮問委員にしては随分軽率な発言だな。」

振動は返答を聞くなり満足気に微笑むと、そのまま脱力した沢井の身を跨ぎ彼のソファーへと膝を埋めた。

「…医者にとっては致命的な後遺症だ。」

どちらとも分からない声が、切なくも幸せを噛み締めるように言った。
何度葛藤してもジレンマを生む医師としての誇りと愛情。
別物なのだと分かっていても心苦しいほどに、俺たちはいつまでも究明馬鹿だった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

至らぬ文才で申し訳ない…
ドラマ板の姐さん方にはお先に謝っておきます。

  • 進藤 -- 2011-05-10 (火) 14:47:42

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