ある夜の話
更新日: 2011-04-25 (月) 19:47:18
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└──────│オリジナル、留学生←大学生。
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「ひっ!」
TV画面の中、若い女の背後に青白い手が伸びる。
その光景に、ウィルの奴は小さな悲鳴を上げて、俺の腕を掴む手に少し力をこめる。
青白い手が女の後ろ髪を掴み、クローゼットの中に引き込んだ瞬間、俺の腕は折れそうなほど痛んだ。ウィルが力の限り握り締めてきやがったからだ。きっと、こいつの手形の痣が出来たに違いない。毎度のことだが。
「ウィル、痛い」
「す、すいません……」
半泣きでTV画面から目をそらしたウィルが、蚊の鳴くような声で言った。
レンタルしてきたホラー映画。マイナーなそれは、怖がりの怖い物好きであるウィルが借りてきたものだ。月に一度か二度、俺の住むワンルームでは一日中ホラー映画鑑賞会が行われ、
その後奴は二、三日泊まっていく。一人では怖くて見られなし、寝られないとウィルが言うからだ。
ウィルは俺の通う大学の留学生だ。学部こそ違うが、俺とウィルは親しかった。
というか、ウィルが俺にくっついて歩いているというのが正しい。大学の馬鹿みたいに広い構内で迷子になったウィルを助けたのが縁だった。
身長は、そこそこ背の高い俺より頭一つ近く高い。澄んだ青い瞳と、
美しいブロンドが特徴的な美形なのだが、それはあくまで黙っていればの話である。
気が弱く、何かにつけて泣いているような奴で、悪い奴ではないのだが手が掛かる。
大柄なので保護欲もそそられないというのは、俺の悪友の弁だ。俺もそう思う。
おまけに背が高いせいで、しょっちゅうどこかしらに頭を打ち付けては悶絶している。
この間は電車から降りようとして、思い切り額を強打していた。勿論額はこぶになった。いい加減学習すべきだと思う。
さほど興味のそそられないホラー映画を見る振りをして、ウィルの横顔を盗み見る。
端正な顔には恐怖と、抑えきれない好奇の色が浮かんでいる。目じりに涙が少し溜まっていた。
俺はウィルをじっと見つめた。ホラー映画よりも、ウィルの顔を見ているほうがずっといい。
最近ようやくそのことを認められるようになった。
この異邦人のことを、俺は好きだった。LikeではなくLoveの意味で。
友愛なのだと、思い込もうとした。だって、異常じゃないか。俺もウィルも男だし、大体今まで惹かれた相手は全員女だった。
約一名、女というカテゴリに入れるべきか悩む性格の持ち主がいたが、とりあえずそいつも生物学的には女だ。
それが、男に惹かれたのだ。その青い瞳に、ほかの誰かを映すのを見たくなかったし、こいつの好きな女の子の話なんて、どうしても聞きたくなかった。失恋したウィルを慰めながら、
心のどこかで喜びを覚える浅ましい自分がいた。最悪だった。
どうしようもなくなって、ウィルや悪友たちを散々心配させるほど荒れて、そしてようやくその感情を俺は認めた。ウィルに恋しているのだと。
告げるつもりは、なかった。打ち明けたところで、ウィルが俺を軽蔑しないだろうとは思う。人を蔑むことが出来ないタイプだから。ただ、困らせるだろうと思う。それは、嫌だった。
日本で一番の親友として、隣にいよう。俺は心に決めた。
いつの間にか、ホラー映画は終わっていた。デッキからDVDを取り出す。
けたたましいお笑い番組を、TV画面は垂れ流していた。
「お前さ、何で俺んちで見るんだ?」
ふと思いついて、俺はウィルに聞いてみた。
「迷惑でしたか?」
「いや、そういうわけじゃねぇよ。ただ、毎回俺んちで二人だなと思って」
「……一番、落ち着くんです」
はにかんで、ウィルは言った。
「女性の前で、情けない姿は見せられませんし。陽さんはからかったりしないでしょう?」
陽さん、というのは俺のことである。
「それに、いくら好きでも一日中ホラー映画を見るのはちょっとって方もいらっしゃいますし、
付き合ってくれるのは陽さんくらいです」
「……しばらく泊まっていくしな」
「はい」
「さ、もう寝ようぜ。俺は明日一限から講義なんだ」
「あ、私もです」
「じゃ、さっさと寝ようぜ」
押入れから布団を二組引っ張り出し、並べて敷く。TVの電源を落とすと、
豆電球だけ残して、明かりを消した。
「おやすみなさい」
「おう、おやすみ」
ウィルの気配を間近に感じながら、俺は目を閉じた。痣になっているだろう腕に触れながら。
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ピッ ∧_∧
◇,,(∀・ ) うっかり続きそう。 開始AA失敗してすいません。
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