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憂鬱な悪夢

こないだケンカズを投下した者ですが、再びケンカズでお借りします。少し健二が情緒不安定気味なのでご注意下さい。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
午前一時。今日は久々の集まりで大宴会が行われ、疲れ果てた親戚、家族は熟睡。
僕はといえば、スポンサーから送られてきた契約の確認の返信やら何やらに追われて、結局こんな時間までキーボードを叩く羽目になった。
「……よし」
ボタンを押して、送信完了の文字が出るのをぼんやりと眺めていると、後ろから小さく戸を叩く音がした。律儀にノックする奴なんて一人しかいない。
「なに?」
ヘッドフォンを外しながら応えると、困ったような、若干頼りない声が向こう側から聞こえてきた。
「別に、特に用事がある訳じゃないんだけど、佳主馬くんなら、もしかしたら起きてるかもしれないなぁなんて……」
そう言いながら、入ってこようとしない。
パソコンの電源を落として、戸を引くと、右手に枕と薄い毛布を持ったジャージ姿の健二さんが、廊下に突っ立っていた。なんだか今にも死にそうな顔をしてる……気がする。ラブマシーンにアカウントを取られた時の事を、少し思い出した。

「や、やあ」
「とりあえず、入れば?」
お邪魔します、とか何とか、よくわからない礼儀正しさをみせながら、健二さんが壁の隅の方に座る。……無言。目で促しても、曖昧に笑って、それで終わりだった。わけがわからない。
「用がないなら――」
「あるあるある!ありますっ!」
「じゃあ何」
健二さんは一瞬目を泳がせて、やがて諦めたように視線を僕に戻した。ひとつ、深呼吸をする。
「あの、今晩だけ、ここで一緒に寝ちゃ駄目かな」
「……………は?」
「いや、変な事言ってるのは百も承知なんだけど、その、なんていうか、ええっと、あの」
赤くなったり青くなったりしながら、健二さんはそのまま不思議な動きをしながら必死に、その、とか、あの、を繰り返していた。理由はさっぱりだけど、なんだかこの必死ぶりは、段々と可哀想になってくる。
自然とため息が漏れた。
「……いいよ」
「ほ、ほんとに!?」
「布団ひとつしかないから狭いけど」
ありがとう、と、本当に嬉しそうな顔をするから、なんだかこっちが恥ずかしくなって、直ぐに明かりを消して、布団に潜り込んだ。少しして、健二さんがぽつりと呟く。

「……さっき、夢をみたんだ」
お互いに後ろを向いているから、顔はわからない。夢で落ち込むなんて子どもみたいだよね、と健二さんは笑ったけど、なんとなく、嫌な笑い方だ。応えるわけでもなく、僕はただ壁をみつめていた。
「ここに遊びに来るんだけど、陣内家の人達は、僕事なんか忘れてしまってるんだ。ラブマシーンの事も、お婆ちゃんの事も、まるで最初から何もなかったみたいに。翔太兄、おばさん、おじさん、みんな、僕なんか知らないって言うんだ。
……佳主馬くんも」
「……っ」
いきなり強い力で右腕を引っ張られて、天井、正しくは覆い被さってきた健二さんと目があった。
「ねえ、僕は、ここがなくなってしまったら、どこにいけばいいのかな」
譫言のように、それは聞こえた。何分だろう。それから暫くお互い無言のまま目を離せずにいて、その内健二さんは布団に入る前の、あの頼りない顔に戻った。
「……ごめん、僕ってばどうかしてた。本当に、ごめん」
そのままゆっくり、僕から離れて、戸の方へ歩いていく。
「……」
「……佳主馬くん?」
気がついたら、今度は僕が、健二さんの腕を掴んでいた。

「それでも」
うまくいえないけど、言わなきゃいけないと思った。
「ずっと、……ずっと、ここにいればいい」
我ながら素直じゃないし、いまいち答えになってない。
でも伝わったみたいで、暗くてよくみえなかったけど、多分、健二さんは笑っていた。返事の代わりに腕を掴んでいた指をそっと剥がされて、指を絡められる。ふわりと抱き付いてきた健二さんからはシャンプーの匂いがして、僕は繋いでいない方の手を、彼の髪に伸ばした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ありがとうございました。


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