坂本龍馬×岡田以蔵
更新日: 2011-01-12 (水) 00:30:32
来年の太河のキャストがいろいろ発表になり
過去の漫画(公共放送の)とか色々考えてたら物凄いパッションが襲ってきたので
勢いのみで書きました。
○訛りは適当です
○歴史も適当です
○エロとか皆無なので苦手な方はスルーを。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
「瀧さんは卑怯ぜよ」
そう岡田似蔵が呟いたのは何回目に説得した時だったか。
人を斬るのはもう止めろ、折角の腕をもっと他に活かすべきだと、
会うたびに説得しようとする瀧馬に、そう彼は呟いた。
「……卑怯?わしがか」
「そうちや」
「おんしゃ何を言いよるが?」
答えない似蔵に瀧馬の心は僅かに苛立つ。
少なくとも、生まれて今まで世に卑怯と言われる行動は取っていないはずだ。
卑怯な行動を取ろうものならばあの優しくも恐ろしい姉にどんな目に合わされることか。
だから、というわけでもないけれど、お天道様にも姉にも恥じるような行為をしたことはないと、
たとえ貧しくとも胸を張って生きてきた。……それにも関わらず。
「人を闇討ちするがは卑怯と言わんが?」
苛立ちが思わず強い言葉になる。諍いをするために似蔵に会いに来たわけではないのに、一体自分は何を言っているのだろう。
瀧馬は息を吸い心を落ち着ける。今日こそ似蔵に己の思いを分かって貰わねばならない。
「わしゃあおんしに戻ってきてほしい思っちょる。武市さんは間違っちょるぜよ。……似蔵さん、意味のない人斬りはいかんちや」
「―――そんなことは分かっちょる!」
瀧馬が肩に置いた手を似蔵が振り払う。似蔵らしからぬ強い語気に瀧馬は虚を突かれた。
「……なら、なんで続けちゅうが」
「わしゃあ、学が無いき。政のことはむつかしゅうてよう理解せん」
似蔵が俯いてぽつぽつ語る。貧しい岡田家に学問に費やす金があろうはずもないことは瀧馬もよく知っていた。
そして、その事実が似蔵の中に澱のように溜まり淀んでいることも知っていた。
「そうやき、政を考えるのは武市さんに任そうて決めたぜよ。わしゃあ、わしに出来ることをするき」
自らの刀を見つめて似蔵は呟く。濁りのないその目に瀧馬は再び苛立った。
「その武市さんが間違っちょるゆうちゅうんだ!武市さんが頭もええし気ぃも真っ直ぐなのはよう知っちょる。
けんど今度は間違っちょる、……人斬りでは何も解決しぃやせん!」
「ほうか。ほんなら教えちょくれ、瀧さん」
それまで俯いていた似蔵は目をあげる。瀧馬の目をひたと見据えて口の端を上げた。あれは笑っているつもりだろうか。
「わしゃあ怖くてたまらんき。夷狄が日本を攻めようとしちょるこの時に、頼みの幕府は弱腰やき。
戦になったらわしや家族のような犬ころは死ぬ。武市さんや瀧さんもぜよ。皆みぃんなやけ。
怖くて怖くてわしゃあ考えた。阿呆なわしがどうすれば日本の役に立つが?どうすれば皆助かるが?
考えて考えて考えて、そんでやっとわしゃあこれしかないと思ったぜよ」
似蔵は瀧馬の前に刀を突き出した。その手が少し震えているのは寒さか怒りか―――恐怖のためか。
「武市さんだって考えて考えて選んだ道を進んじょる。……瀧さん、おんしゃ何しちゅう?何もしちょらんき。
何もせんで人ばっかり咎めて、咎めるけど他の道も示さんき。おんしゃ卑怯ぜよ」
瀧馬は何一つ言いかえせなかった。
瀧馬が武市や似蔵が間違っていると言うのは、瀧馬にも異国への不安や幕府への怒り、
そして何より何もできないことへの焦りがあるからだ。
何もできない、何をしていいのかが分からない己が歯痒く、自分の道を見つけたはずの武市や似蔵が、
少なくとも瀧馬から見れば間違った道へ進んでいることへの焦りと怒りがあるからだ。
しかし、彼らを責めることが自分の道ではないことも、そしてそれが何かを成すことにはならない事も、
坂本瀧馬にはとてもよく分かっていた。
「騰海舟先生とお見受けするき」
瀧馬が出した結論も、人を斬ることだった。日本に仇なすと言われる騰を斬ることこそ瀧馬が選んだ道だった。
結局瀧馬も己の腕しか使えるものはないのだ。
「おう、俺が騰だよ。あんたぁ誰だい?」
「土佐脱藩、坂本瀧馬ぜよ。お命頂戴しに参ったき」
「なるほどなあ。よく来たな、まあちょっと上がっていけ」
名乗った瀧馬に騰は笑う。命を取りに来たと言われた男の対応ではなかった。
「……わしゃあ、お命を」
「分かってるよ。俺を斬りに来たんだろ?斬るのはいつでも出来るからよ、とりあえず上がって茶でも飲まねえか?」
そういうと騰は瀧馬に背を向けて屋敷へ入る。そのあまりの無防備さに瀧馬は肩すかしを食った。
斬って捨てる機会を見失い、瀧馬は騰の後を追う。
屋敷に入ると、奥の座敷に騰は胡坐を掻いていた。警戒しつつ追ってきた瀧馬に自分の前を示して騰は再び笑う。
「座んなよ。誰も居やしねえって。とりあえず、話を聞かせてくれねえか。俺を斬ろうってんだ、それなりの理由があるんだろ?
それともあんたはなんだい、相手に理由も言わずにいきなり切って捨てる只の人斬りなのかい?」
にやにやと笑う騰に瀧馬は憮然とする。言いなりになるのも癪だが、只の人斬り呼ばわりされては放っておけない。
瀧馬は騰の目の前に腰を下ろし、刀も下ろした。それでもいつでも斬れるように手元からは離さないよう警戒は怠らない。
「……おんしゃ日本を異国に売ろうしちょる聞いたき。日本のためにせられん」
あえて厳めしい顔を作り瀧馬は言う。ここで侮られるわけにはいかない。
「なるほどなあ。あんた日本のために俺を斬りに来たんだな」
「そうちや」
重々しく頷くと、騰がいきなり立ち上がった。刀に手をやろうとする瀧馬を騰は制する。
「待ちなよ。あんたに見せてえもんがあんだって」
そう言うと、勝はなにか球状のものを持ってきた。台がついているその球を瀧馬の前に置くと、騰は座りなおした。
「こりゃあ何なが」
「何だと思う」
「……異国の大砲の弾なが」
瀧馬が精一杯の推測を述べると、忌々しいことに騰は大笑した。
「こんな台座がついてちゃあ大砲に詰まっちまうって。これはな、―――世界よ」
「世界?」
「そう。これぁ地球儀っつてな。俺たちの世界の地図だ。メリケンもエゲレスも南蛮も、勿論日の本だって載ってらあ」
瀧馬は地球儀を掴んだ。これが、この丸いものが世界の地図か。
「と、土佐は、日本は何処にありよるが!?」
瀧馬は必死に地球儀を回すが、異国の文字ばかりで「日本」の文字が見当たらない。
騰が地球儀をとり、ある小さな島を指さした。
「これが日の本、俺たちの日本さ。土佐は……この辺、だな」
「このこんまいのが日本ち言いよるけ」
瀧馬は呆然とした。この大きな世界で、こんなにも小さいのが日本だというのか。
「俺はよぅ、瀧馬。俺はこの小せえ日本が異国と武力で戦をして勝てるたあ思えねえんだよ。
そりゃあ一対一の果たし合いじゃ侍は負けねえかも知れねえさ。
けどよ、異国は鉄砲だ大砲だ軍艦だってたんまり持ってやがるのよ。果たし合いに応じるたあとても思えねえんだよ」
「日本が、負けるが」
「ああ、今のままで勝てるたぁどうしても思えねえなあ」
瀧馬は目眩を覚えた。無駄だ。瀧馬が騰を斬ろうが何をしようが、武市が似蔵が何を考え何をしようが、全てが無駄なのだ。
―――この小さな日本は、負けて異国に取り込まれる。
「お前さん、勘違いしていやがるな」
頭を抱え込んだ瀧馬を見て騰は薄笑いを浮かべた。
「俺はな、『武力で』勝てねえっつったんだ。全て勝てねえなんて言ってねえよ。……俺はここで勝負しようと思ってるんだ」
こめかみを叩いて騰は瀧馬の顔を覗きこむ。
「……頭?どう使うぜよ」
「商売よ。まず世界の異国相手に貿易して銭儲けるのよ。異国だって商売相手をいきなり攻めねえだろうさ。しばらくはな。
銭儲けて儲けて金貯めて、それで―――日本に軍艦を買う」
「日本に軍艦が来る……」
「そうよ。軍艦揃えりゃあ異国もそう簡単に攻め込めねえだろうよ。異国への牽制代わりにもなるし、
でっけえ船がありゃあこっちが異国に行って日本に足りねえものを学んで来れるぜ。
―――どうだい瀧馬、俺の考える日本は。その刀振り回してよ、この小せえ日本で斬り合うよりよっぽどいいと思わねえか?」
瀧馬は言葉が出なかった。今まで霧の中をどれだけ彷徨っても見つけることの出来なかった自分の道が、急に明るく輝いた。
瀧馬の歩むべき道。
日本の歩むべき道。
それを示された今、武市の、そして似蔵の歩んでいる道はやはり間違っているのだ、と思った。
今度は瀧馬が彼らに示すのだ。武市の頭脳も似蔵の剣の腕も、使いようはいくらでもあるはずだ。
幼いころからの友人たちを間違った道から救うのは瀧馬しか居ない。
……大切な人を救うことができるのは瀧馬しか居なかった。
瀧馬は騰の前にきちんと正座して頭を下げた。
「わしゃあ感服したき。わしを弟子にしとおせ、騰先生」
坂本瀧馬はようやく彼の道の第一歩を歩み出した。
〈了〉
リアルエラい人は大変だなあ……
訛りも歴史もちょっとは調べたけどやっぱり適当でお送りしました。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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