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ザ・クイズショウ 本間×神山

問題劇 DMC
半生・捏造注意
ジャンルスレの盛り上がりにあやかりました

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 動かない水面を渡ってくる風は、さらりと湿りを帯びているだけで、後には何の香り
もなく、かなしく肌に触れては過ぎてゆく。太陽は、青とも灰ともつかない空に沈み、
ぬるい光を滲ませている。
 ここはひどく息苦しい。自分以外は誰も岸にいないのに
、右手は冷たい手を握っているし、両の耳は啜り泣きを聞いている。どうやら肺は膨ら
んでいてもあまり役に立っていない、空気が足りないようだ。
思わず吸いすぎて喉につかえ、咳き込む。ごぼり、ごぼり。肺から溢れてきたのは、泣
き出しそうな色を少し溶かした、うすい灰青の湖水か。そういえば全身がぐっしょりと重い。
 これは一体誰の嗚咽だろう、水の中からだろうか、よく聞こえない。冷たい手がきつ
く握り返してくるのが痛い。
またひとつ咳をして水を吐く。味はしないが、苦しくて頭がしびれる。じわじわ、みし
りと頭蓋の軋む音がする。ああ、そうか、身体の中いっぱいに水が詰まっているのか。
次から次に湧いてきては、ここから出ようとしているのか。
 ぎしぎし、内側からの水圧で骨の合わせ目が開いてゆく。凄まじい痛みに、両の手で
頭を押さえた。出るな出るな出るなと食いしばった奥歯もきつく閉じた瞼も、腕で覆っ
ていようとこじ開ける奔流には無力。髪を掻き毟る指がぬるりと触れたものは、水か、血か。

 絶叫で目が覚めた。頭を抱えて、消毒液の香るやわらかな白い波の上に蹲っていた。
ゆっくり起こそうとした身体は強張り、頭は重く痺れている。
ふと視界に入った手の甲は、それぞれ四つずつ真っ赤に爪の痕が並んでいて、指を組み
合わせて祈りでもしていたかのようだった。
ず、と鼻をすすったところで初めて、泣いていることに気付く。
 ここは静かだ。冷たすぎない白い壁と、ゆるやかな青い空気に満たされて、眠りも目
覚めも一人きり。
 ばかになってしまった手洗い場の蛇口からぽたりぽたり、脈動に合わせて垂れるしず
くを見つめた。狭い部屋にはベッドとテーブルと、格子のはまった鉄のドアが一つきり
。天井の窓には、遠い空。
 薄い綿の袖口で顔を拭っていると、肩を叩かれた。びくん。
振り返ると、唯一そこだけが黒いドアに、輪郭を溶け込ませるようにして若い男が立っ
ていた。瞼がやけに艶めかしい蛇の眼、顔を上げずとも、触れれば切れそうな視線がこ
ちらを向いているのが分かる。
「奔摩、さん」
「次の回答者と、問題だ」
 肩に触れていてる紙の束を受け取った。微かな手の震えも、きっと見ぬかれているの
だろう、男の用事は済んだはずだが黒ずくめの身体は動かない。

代わりに、低い声が落ちてきた。
「今度からは生だからな、」
 す、と息をつく気配に、スタジオでは到底かけられないような酷い叱責と罵声を予感
して、反射的に固まりかけた喉から咄嗟に、はい、と出た声は、自分の耳まで届かなかった。
ベッドの上に座り込んだ四肢は、抵抗するだけの意思を持っていなかったのだろう。レ
ザーの袖から伸びた手で胸倉を掴まれ、自然と仰向いたくちびるから直接返事を呑み込
まれても、ちいさなまばたきしか返せなかった。
頭痛で血の気が引いていたところへぴったりと張り付いた、肉感的な熱い唇。くろぐろ
冷えた眼光の暴力的な挙動とは裏腹の、やさしい温度差に驚きながらも、その心地良さ
に束の間、痛みを忘れた。
 憎しみすら感じさせる激しさでベッドへ突き飛ばされた衝撃で、手から紙が、ばさば
さ床へ舞い落ちる。
「今までとはわけが違う、覚悟しておけ」
 少し上がった呼吸で、かすれた声を吐き捨てた男の靴が動く。殺気と悲哀が綯い交ぜ
になった後ろ姿は、もう何も言わず、ドアの向こうへ消えた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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