黒子のバスケ 火神→(←?)黒子→キセキの誰か 「七夕」
更新日: 2011-01-12 (水) 00:29:40
黒子のバスケの『火神→(←?)黒子→キセキの誰か』っぽい小説です。
ちょっと黒子視点で切なめです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
部活帰りにいつものバーガーショップへ足を運ぶのがここのところ日課になっていた。
そして今日も火神と2人で他愛の話をして帰る途中、ふと今日が七夕という事を思い出し、空を見上げる。
「火神君、今日が何の日か分かりますか?」
「あぁ、そういえば今日が七夕か」
火神は空を見上げ、天の川が見えねーな、と呟いた。
「七夕は雨が多いんですよ。今日みたいに…雲ってはいますが少しでも星が見える方が珍しいんです」
「そうなのか?」
「でも雨が降るのは織姫と彦星が再会を喜んで流した涙のせいだとも言われているんですよ」
「ふーん」
興味なさげな相槌に話が一旦途切れ、互いに空を見上げる。
曇り空は月までも朧げにし、雲間からは微かながらも星が見える。
織姫と彦星を結ぶ天の川は見えないが空の上では彼らは逢えたのだろうか。
そんな事を考えていると脳裏に一人の人物が思い浮かび、自分自身に嫌悪感を抱いた。
「黒子?どうかしたのか?」
「すみません、ちょっと考え事をしていて」
態度には出さないが火神君はボクの事を心配しているらしい。
頭に置かれた手が労わるように優しく髪の毛を乱す。
そうだ、今目の前にいるのは『あの人』ではない。
クラスメイトであり、同じ部活動の―――新しいボクの光。
火神君なら一年に一度しか逢えない恋人達をどう思うのだろうか。
くだらないと笑うだろうか。願わくばそうであってほしい。
何故だか今すぐ、彼を想う自分を否定してほしかった。
「火神君は好きな人と一年に一度しか逢えなくなったらどうしますか?」
「はっ?」
「……ただの好奇心です。気にしないでください」
再び空を見上げれば分厚い雲は月を隠し、星までも隠そうとしていた。
彼は答えを考えながら空に片手を伸ばし何かを掴むように手を握った。
「くだんねーけど、俺だったら無理矢理にでも逢いに行くな」
「火神君らしい、ですね」
「本当に好きだったら一年なんて待てねーよ。だから…って黒子はどうなんだよ」
聞きたかった言葉が聞けたはずなのに何故だか胸が酷く痛んだ。
相変わらずボクの頭を触る手つきは優しいがそれすらも痛い。
そして何よりも、彼の言いかけてやめた言葉が、痛い。
そんな痛みを忘れようと質問の答えを考える。
もしも大切な人と一年に一度しか逢えなくなったら?
それはきっと想像している以上に悲しくて寂しいのだろう。
でも禁忌を犯して大切な人と二度と逢えなくなる事も悲しい。
自分はどれだけ弱虫なのだろうかと嘲笑する。
一年に一度。必ず逢える事が保障されているのならばそれでいい。
逢えない時間は寂しく、互いの成長を不安に感じる事もあるのかもしれない。
でも、それでも、いい。
むしろ無理矢理逢ったらそれこそ想い人を裏切る事になってしまうのではないか。
それはただのエゴだと言う声が聞こえたが一年に一度必ず逢えるのなら待っていたい。
「火神君。ボクは一年に一度、必ず逢えるならそれでもいいとも思います。それまでずっと、待っていますから」
彼に一語一句選ぶように丁重に答える。
そう、待っていればいい。必ず逢えるのだから。
黒子の切なげな言葉は火神の耳には届くがその想いは『あの人』にも火神にも届けられることはない。
黒子はまだ自分の気持ちには気づいておらず、この気持ちを誰に宛てているのかさえも分からなかった。
「もう少しわがまま言ってもいいと思うぜ」
優しげな声で囁かれ、優しい手つきでまた髪の毛を乱される。
そのまま両肩に置かれた手はほんの少し熱を含んでいて、無性に泣きたくなった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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