野球 投手と外野手と内野手二人 「かえりみち」
更新日: 2011-01-12 (水) 00:29:33
同い年の当主と概屋主がモデル。プラス内屋主ふたり。
といっても書いている内に、頼りない記憶やらねつ造やらで
誰を書いているのかよくわからなくなりました・・・。
150の番外みたいなお話。
前スレの625の続きにもなるような。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
街の明かりは夜の帳を白く照らし続ける。
飲食街の人混みから離れると、ひっそりと寂しい通りに出た。
隣を歩く小柄な彼は「あの店、美味しかったな」と自分を見上げる。振り向かず「そやね」と答えた。
目の前に映るのは、閑散とした通りではない。
フイ一ルドで自分を越えた、白の放物線が何度も浮かんだ。
悔やんでも悔やみきれない、あの時。力の入れ方、指先、足の踏ん張り、気持ち。
自分が抑えれば、絶対に負けないのに。
この上背は、この腕の長さは、何の為にあるんだろう。
今一緒にいる同い年のコイツは、小さな体で、懸命に役割を果たしているのに。
「あれ」
自分の足音しか聞こえないことに気が付いた。隣に彼がいない。
しまった、違う道入ったかな、と振り向くと、少し距離を置いて彼がしゃがみ込んでいた。
驚いて駆け寄ると、足元に猫がいる。近寄ると猫はピクッと震えて、素早く姿を消した。
しゃがんでいた彼は残念そうにため息をついて立ち上がった。
「お前さ」
彼は猫の去ったあとを眺めていた。
「もちょっとゆっくり歩けよ」
昨年のシ一ズン後のキヤンプのことを思い出す。
練習場から宿舎まで距離があり、通常ならバスを利用するその道のりを、
二人で歩いて帰ったことがあった。
あの時、歩くのが早いとか遅いとか、気にしてなかった。
ただ、二人で歩いていたら、そのまま一緒に宿舎に着いていた。
下から腕が伸びてきて、頬に彼の指が優しく触れる。
「怖い顔してる」
ふっと笑みを浮かべ、こちらを見上げる。
その手首を掴むと、彼は笑いながら逃れようとして腕を引っ張った。
これ以上離れないよう、もう片方の腕も取る。
「…いや、冗談。冗談だって。離せって。ごめんごめん」
「前に言ったやん。下から見つめたらアカンて」
「だから、そーゆー冗談ダメだって」
トテトテと足音が聞こえた。
振り向くと、先ほどの猫が通りに戻ってきた。
気を取られた隙に、手を振り払われた。
「そういえば今日お前が来る前に、大船主さんと大大船主様が来てたよ」
「へえ、見たかったな」
「次は早く来いよ」
落ち込んでないで。
最後の言葉をはっきりと言わずに、彼は駆け出す。
猫はまた姿を消した。少し先で彼が足を止めて振り向いた。
空を仰ぐ。街のひかりを受けとめる夜空。
「冗談か…」
空に向かってひとりごと。
「冗談やと思ってるんなら、もう少し付き合ってくれてもええのにな」
少し時間を戻した、別の通りでの話。
***
「あーえらい目遭ったわ。つかお前何でいつの間にいなくなっとんねん!」
小柄な先輩が肩を叩く。
「付き合い良すぎなんですよ。あ」
二人の目の前に猫が現れた。
「うわっ、なんや!」
「びびりすぎ・・・」
その猫の背後に見えたふたつの影。先輩はその影に気付かず、しゃがんで猫に手を差し出していた。
影のふたり。
男が、小柄なひとの両腕を掴んでいた。
小柄なひとは今日店で会った。もうひとりは。
・・・連れって、あのひとだったのか。
トン、と足音をたてて一歩前に進む。猫は逃げるようにトテトテと、彼らに向かって駆けた。
「お前なあ」と苦笑いする先輩を余所にして、くるりと振り返る。
「あれ、どうしたん」
「そこのコンビニで水買って帰ります」
「じゃあ俺も行こ」
振り向くことはできなかった。
「・・・また先を越された」
夜空から流れた風がふわりと背中を擦った。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
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