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野球 外野手と投手と内野手 「その腕に」

背の低い概屋主と、背の高い当主と、年下の内屋主がモデル。
とはいえ好きな設定と好きなひとで想像して頂ければ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

皆がグラウ.ンドに出始めた時間、人気のない廊下で一人立っていた。
目の前には清掃用具の入った大きいロッカー。
その上にある段ボールの更に上にちらりと見える白い指先を見ていた。
それは自分の右手のバツテイ.ンググローブだった。
何故あんな所に。
いつの間にか片方のグローブだけがなくなっていた。
ポケットに中途半端に入れていたのが落ちたのか、…取られたのか。
通り過ぎた際にちらりと視界の端に映ったのは不幸中の幸いだった。
もしくは誰かが「意図して」見つけやすい場所に置いたか。
こんなつまらないことをする同僚の顔を二・三人思い浮かべる。
チー.ムの中でも特に背の低い自分をターゲットにした悪戯にしては、まさに犯人の思惑通り。

届かない。
踏み台を探すには小さなプライドが邪魔をする。人に取ってもらうのも頼みにくい。
なくしたことさえも、まだ誰にも話していなかった。

「めんどくさいなあ…」
ぐっと膝を曲げて勢いよくジャンプした。右手を思いきり伸ばす。チッと皮の感触が指先に触れた。
「ああもう」
見上げるとその指先は少し位置を変えていただけだった。
替え持って来ていたっけ…と考えたその時、左の視界が暗くなる。
背中に体温が密着する。見上げると長い棒のような黒い腕が伸びて、グローブを掴んだ。

「はい」
黒い腕が目の前に下ろされて、グローブは手元に戻る。
「…サンキュ」
「何、お前いじめられてんの?」
「可愛いがられてるんだよ」
「同じ意味だろ」
ふふ、と背の高い彼は笑顔を見せる。
同い年だが、自分とは違って背が高く腕も長く、おまけに顔も綺麗に整っている。
プロのスポーツマンだよなあ…とその顔をじっと見つめた。
手を伸ばしてその二の腕に触れる。
もしその背丈が、その長い腕があれば、昨日の試合であのボールは拾えたかもしれない。

そこで思考は途切れた。
予期せぬことが起こっていた。
「…へ?」
その長い腕がいつの間にか自分の両肩のそばでロッカーを押さえている。
つまりその腕に捕えられていた。
「ええ?」
もう一度問い返す。
「…下から見つめたらアカンなあ…」
「な、何言って…」
腕の脇から逃れようとすると、その長い腕が体に絡みついた。
後ろから抱きつかれるような体勢になる。
何の冗談だろう。これ冗談だよな。
強い力に抵抗しようにも、体の自由がきかない。
相手の熱が、体に侵食して─。

顔を上げると年下のチームメ.イトが憮然として立っていた。
一重の目がこちらを真っ直ぐ睨みつけている。
「…何やってるんスか」
「え…あー」
背中にくっついていた体が離れた。
長身の彼は笑いを堪えるようにして口許に手を当てる。
「誘われた」
「ちょっ…!」
言い返す隙を与えず、長い影は空気を絶妙に澱ませて、足早にその場から離れた。
睨みつけていた男は、その背中を見送ってぐるりと顔をこちらに向けた。

「…あいつちょっと…変だよな。ははは…」
取り繕いの言い訳は、彼の無言の前にかき消されたようだった。
普段なかなか感情のよめない彼だが、今ひどく不機嫌なのはよくわかった。
ため息をついて、諦めた。
「嫌な所見られたな…」
「嫌な所を見てしまいました」
「そりゃ悪い」
足早に彼の横を通り過ぎる。
ぽつりと呟くのが聞こえた。
「…グローブ、取れて良かったですね」
「ああ」
背中で応えて、グラウンドに向かって歩く。
すたすたすた。
規則的な早い足音。
…ん?
「おい、お前なんで知ってるんだ」
振り向くも、そこに彼の姿はなかった。

「我ながら幼稚すぎたな…」
あの人のグローブを偶然拾って、思い付いたつまらない悪戯。
ふっ、とため息をついた。
「先越されてどうすんだよ…」
先ほどの睨むような視線とは変わって、伏し目がちにうつ向いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

単に「背の低い子が背の高い子に物を取ってもらう」シチュが書きたかっただけでした。

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お待たせしました。
こちらこそ失礼しました。

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