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生 某狂信者っぽい人と某元漁師な人 「荒野と別の地」

某ナマモノ。某狂信者っぽい人と、元某漁師な人で。

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

歌わない奴にはわからないだろうけど、歌うことは人生だ。
俺は歌うほうの部類なんでそう思う。多分お前もそう思ってるんじゃないかと思う。
そんで、誰かと歌うのは仕事でもあるけどそれだけでもない。時折意味を持つ。
仕事なんだけど、生き甲斐でもあるんだけど、何て言ったらいいかな。
共鳴と言ってしまえばそんなもんだ。でもそれじゃ、あんまり普通すぎる。
ぴったり、合う、この感覚って言うのは不思議だ。

「あの、何してんすかー?」
「ん、メールチェック」

練習後のレッスン室に座り込んでたら、すっかり着替え終わった後輩達が声をかけてくる。
汗の流れるまま携帯をいじくっている俺を置いては、先に帰りにくいんだろう。
悪いね、ソングリーダーが動かなくて。良いんだぜ、放っておいてくれても。
俺は好きでここにいるんだから。

「あ、鍵は俺閉めとくから、先あがってよ」
「…え、でも」
「いーから。ほい、かいさーん」

ぺこぺこ。指先で携帯電話のボタンを探りながら、俺は顔も上げず手を振った。

レッスン室の床はまだ冷たくて気持ちが良い。もたれ掛かるバーも鏡も、ひんやりしている。
俺の背中を汗が伝う。息の中にはまだ熱がこもっている。
夏のように、荒野のように。

「は、はーい、アリガトございまーす」
「お疲れ」

埃舞う荒野のように。
あ、飲み会の誘い。これは後で返事しておこう。それから下らない出会い系メールはさっくり削除。
珍しい友人からの、何てこと無いメールに少し頬を緩めたら、ほたりと鼻先から汗が落ちた。
そしてその後、もっと珍しいメールに今度は汗が体中からまた噴出した。
『お疲れ』
って、タイトルだけじゃ全く何の変哲も無い。

「…ユっ…」

『久しぶり、元気ですか。もうすぐ大阪です。行って来ます!』
内容も、それだけ。何の変哲も無い。
差出人がお前じゃなければ。

「ひさしぶり…」

俺は思わず声に出す。目の脇を流れる汗が、涙じゃないぜと思う。
こもった息の熱が声と混じった。自分の声なのにやたら遠く感じた。
ああ、久しぶりだな。お前は元気かな。
全くいつの間に、だ。いつの間にメールなんか覚えた。
普通の奴なら驚かないよ。こんな普通のメッセージ、全然驚かないよ。

でもお前、この韓国人め。畜生、また日本語上達してやがる。
最早ペラペラどころか、ネイティブじゃねーか。
メッセージパネルの光が、天井の蛍光灯に負けじとじじと光っていた。そこに声は無かった。
だけど俺は思い出していた。

『よーう、ゆーすけ』

変なイントネーションの、まだたどたどしかった日本語と、なのに色々喋るあの性格。
真っ直ぐぶつかって来る役の解釈。真正面から歌い合ったその感覚。
その、感覚。
歌うことは人生だ。
その中でこんなに、ぴったり合うのは、お前だけだ。お前だけだ。
不思議なことに、国境も言葉も超えていた。
俺はメッセージパネルを指でなぞった。
そしてお前は知らないうちに日本語がまた上手くなって、漢字まで適切に使い分け始めた。
知らないことが、いつか増え始めていた。

「…久しぶり、っと」

荒い息が、荒野のように。埃舞う荒野のその中のように。
今はバラバラの、お前の地のように。
そう感じたのは、ただ願望だったのかもしれない。ゆっくりゆっくり、返事を書く。
お前の声は本当に好きだ。あまりに自分と違うのに、これしかないというところを突いてくる。

本当に、そこを埋めるんだ!って、言わなくてもお前はわかっていた。
久しぶりだな、そっちこそ元気か?
漢字使っても、読めるよな?
俺はうまくやってるよ。なあでもさ、お前の歌がちょっと懐かしいよ。

「ちょっと、な」

こもる熱を声にのせて呟いた。荒野の歌声。お前の高い響き。
耳に残るは、高らかな狂信者の歌。
また歌おう。またいつか歌おう。
どこででもいい、いつでもいい。なあ、歌うことは、俺達の人生だ。
仕事だろ、って笑える話でもあるんだけど、またお前と歌いたいよ。
お前と歌いたい。
目を閉じて俺は熱を吐ききった。真正面から俺は、誰よりもお前と、そうやって生きてきたんだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

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