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オリジナル 高校生もの

昨日投下した高校生801未満の続きです。
一応青木×澤村のつもりで書いてます。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

かあん。小気味いい金属音とともに、テレビの向こうで歓声が上がった。
球はぐんぐん伸びて、ライト側フェンスに直撃した。サードランナーがホームベースを踏む。
俺は思わず立ち上がり、叫んだ。
「よっしゃあ!」
テレビの中で俺の愛する竜戦士たちが跳び跳ねていた。延長11回、やってくれると俺はもちろん思ってた。
さっきまでの暴言はちょっとした気の迷いだ。
「あら、終わったの?
 じゃあチャンネル回してよ、まだドラマやってるから」
母さんの声が台所から聞こえるが、そんなのもちろん却下だ。
「まだヒーローインタビューあるから無理!」
心の中で青木にお礼を言う。今日の帰りあいつに会わなかったら、俺はこんなに素晴らしい試合を見逃すところだった。
「放送席、放送席」
アナウンサーの声も心なしか弾んで聞こえる。お立ち台に上がったのはもちろんサヨナラのバッターだった。
マスコット人形を抱えて観客に手を振るその姿は、日本男児たる者一度は必ず憧れたことのあるものに違いなかった。
しかし、さっきのは実にいい当たりだった。テレビを眺めながら思う。
俺はホームランの感触を思い出していた。

芯で捉えられたボールに重さはない。拍子抜けするくらいにあっけなく、バットときれいに反発し合うのだ。あれは本当に気持ちがいい。
そんなことを考えているうちに、ヒーローインタビューは終わった。
「母さん、何チャンネル?」
首を回して母さんに声をかけると、少し呆れたような怒ったような声が返ってきた。
「もうとっくに終わっちゃったわよ。
 野球と違って、ドラマに延長はないんだから。」
私だってたまにはテレビくらい見たいわ、とこぼしながら食器を拭く母さんに非常に申し訳なくなって、明日は母さんの好物のおはぎを買って帰ろうと心に決めた。
ただし明日もテレビは譲らないが。
「じゃあ俺、勉強するから」
言って階段を上がる俺に、母さんはどうだか、とため息をついた。親というのはさすがだ。俺はもう今日は寝るつもりだった。
明日は早く学校に着いて、今日の芸術的サヨナラについて青木と語り合おう。

「おーす、青木」
朝俺が目一杯早く(といっても始業30分前だが)教室に着くと、青木はもう席に着いて今日の予習をやっていた。
「おー澤村」
俺が声をかけるとその手を止めて、こちらを向いた。相変わらず犬みたいに人懐っこい笑顔だと思った。

「昨日はサンキューな。
 お前のおかげでいいことあったわ。」
俺が言うと青木は目をまんまるにして、それから顔を真っ赤にして笑った。
「まじで!?俺、超嬉しい!」
ああ、本当に犬みたいだ。今にも尻尾を振り出しそうだった。
「俺今日落ち込んでたんだけど、今ので一発で元気出たぜ!」
立ち上がって、椅子の背越しに俺に抱きつきながらそう言う。スキンシップの過剰な奴だと思った。ますます犬っぽい。
「はあ?お前、なんか落ち込んでたのかよ。」
首と肩の間ににぐりぐりと押し付けてくる頭を手で押しやりながら訊いてやると、奴はいかにも重要なことであるかのように、言った。
「ほら、昨日巨人がサヨナラ負けしちゃったじゃん?」
はた、と俺は動きを止めた。今信じられない言葉を聞いた気がしたが、念のためもう一度確認してみる。
「…今、巨人って言ったか?」
「え、うん。」
その声が聞こえるやいなや、俺は俺の首に巻きついていた青木の腕を引き剥がし、肩に乗っていた頭を押しのけて立ち上がった。
「さ…澤村?」
青木はわけがわからないといったふうに俺を仰ぎ見ていた。こんな奴を一瞬でもいい奴だなんて思った俺が馬鹿だった。
「巨人ファンと話すことはない」

俺は吐き捨てるとその場を立ち去った。
といっても、斜め前でこちらをくすくす笑いながら見ていた谷川さんのもとへ行っただけだが。
「あはは、男の子ってほんとにわけわかんないことでケンカするよね。」
そう言って笑う谷川さんはとても可愛い。そうだ、本来「可愛い」っていう単語はこういうことを言うのだ。
青木みたいなでかい野郎に使うような言葉じゃない。どうやら昨日の俺はどうかしてたようだ。
と、そんなことを考えていたからなのかもしれない、青木が背後から近寄っていたのに気付かなかった。
「澤村ぁ、お前どこのファン!?」
そんな声と同時に急に後ろを向かされて、ひっ、という間抜けな声が出てしまった。
そして青木がこっちをあまりにまっすぐ見てくるから、なぜだかちょっとどきどきした。
「ちゅ、中日だけど…」
そう言うと青木は俺の両肩を掴んだまま大声で言った。
「じゃあ俺も今日から中日ファンになる!」
だから嫌いにならないで、と何度も肩を揺さぶる青木を見てたら、俺はまたしても噴き出してしまった。ほんとに馬鹿というか、犬みたいな奴だ。
「馬鹿、別にいいよ。別にこんなことで本気で人を嫌いになるわけないだろ?」

ほんとに?と涙目で俺に問いかける青木は、でかい野郎なのにやっぱり可愛いかった。
ああほんとに、と答えると、そのまま抱きつかれた上に泣かれた。しょうがないから背中を撫でてやったら、また澤村大好き、と叫ばれて、顔が赤くなるのがわかった(だっていくら相手は野郎でも恥ずかしいじゃないか)。
「あはは、二人ともラブラブね」
谷川さんに言われ、俺はちょっと慌てて青木を引き剥がすと、こいつがスキンシップ過剰だからさ、と照れ笑いをした。こういうからかいは得意じゃなかった。
でも青木なら器用に返すんだろうな、と思いながら隣のでかい犬を見ると、真っ赤な顔で俯いていた。
それを見ていたらなんだか俺も妙に恥ずかしくなって、口ごもってしまった。
谷川さんはそんな俺らを見て、さらにくすくす笑っていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

お粗末さまでした!

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