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sweet pool 哲雄×蓉司

哲雄はいつも俺を助けてくれる。
朝でも夜でも、外でも家の中でも。それはどんな時、どんな場所でも変わらない。
・・・では自分はどうだろうか。
哲雄が与えてくれる優しさや安らぎを、自分は彼に返せているだろうか。
俺は哲雄に、何も――

ガチャ、と玄関のドアが開く音がする。哲雄が帰ってきたのだろう。
ドアの隙間から入り込んでくる雨音と同じぐらい、自分の心音がうるさくて落ち着かない。
リビングで机の上に料理を並べていると、聞き慣れた足音が近づいてきた。
「ただいま」
「お、かえり…」
哲雄の姿を見て、自然と体温が上がる。
朝出ていく時にはしっかりと着込んでいたスーツも、今はよれて複数の皺が刻まれ、その肩には水滴の痕がぽつぽつと残っている。
整髪剤で整えられていた前髪も、外の風に煽られ乱れていた。
「夕食、出来てるから」
「ああ」
「先、風呂入ってきたら?髪濡れたままだと風邪引くし」
「分かった、そうする」
「……」
「どうした?」
「…いや、何でもない」
「そうか」

風呂場に向かう濡れた背中を、蓉司はぼんやりと目で追う。
その視線の中、廊下に一歩踏み出したところで、哲雄が急に立ち止まり振り返った。
「出るから。それ、冷えないうちに」
それだけ呟いて、哲雄はリビングを後にした。
蓉司は一瞬何を言われたのか分からなかったが、すぐにまた気遣われたのだと知った。
夕食が冷えないうちに、早めに風呂から上がると言ったのだ。
そんな些細な哲雄の優しさが、今は苦しい。
やはり自分は与えられるだけ与えられて、哲雄に何も返せていない。
その事実をつきつけられる様で、ぎしりと胸が痛んだ。

2人で夕食を済ませ後片付けに入った時、食器を片付けようとする哲雄を見て、蓉司は慌ててその手を掴み、引き留めた。
「い、いいって哲雄。俺がやるから」
「別に…これぐらい手伝う」
「そんな、手伝わなくていいよ。ソファに座ってテレビでも見てろって…仕事、疲れたんじゃないか…?」
「けど、」
「―ッ、…!これは俺の仕事なんだ!手を出さないでくれッ―……、ぁ」
勢い任せに口から放たれた自分の言葉に、顔面蒼白になる。
違う、そんなことが言いたかったんじゃない。
ただ、これ以上助けられてばかりで、何も出来ない自分が嫌だっただけで―。
気まずさから哲雄の顔を直視出来ず、蓉司は視線を逸らして言葉を飲み込んだ。
哲雄はいつもの無表情のまま、わかった、と一言呟いてから食器をテーブルの上に戻し、白いソファまで移動すると、リモコンを手に取りテレビの電源をつけた。

こんなはずでは無かった―。
テレビから流れてくる楽しそうな笑い声が、自分を嗤っている様に思えて、蓉司は無性に泣きたくなった。

あんな些細なことで声を荒げてしまうなんて、自分は少し頭を冷やした方がいいのかもしれない。
そう思い、蓉司は夕食の後片付けを済ませてすぐ、浴室へ向かった。
生ぬるい湯につかりながら、うなだれる。
夕食の時―、今日哲雄がどんな仕事をしたのか、どんな出来事があったのか、本当はもっといろんな話をしたかった。
そして、外にいる時とは違う、胸が締め付けられる様な哲雄の優しい笑顔を、見たかった。
けれど、今日は何もかも最悪だった。
本意ではないとは言え、自分の勝手な焦りで哲雄を遠ざけた。
哲雄はあまり表情が変わらないから分かり辛いけれど、あの一言が彼を傷つけたかもしれない。
心には重苦しい後悔だけが募っていく。
湯船に浸かったところで結局は何も変わらなかったことに、蓉司は落胆した。

リビングに戻ると、哲雄の姿が見えず、もう寝室の方に向かったのかと思ったが、よく見ると白いソファの上で仰向けになって眠っていた。
規則正しく息が漏れるその唇に、意識が集中する。
今日の出来事を謝る様に、蓉司は優しく哲雄に口付けた。

「ん……ッふ…」
微かに触れるだけのつもりが、心地よさに唇を押しつける形になる。
「んっ、…む……はッ」
生温い体温から離れ、目を開くと、じっとこちらを見つめている哲雄と視線が絡まった。
「なっ!?…いつから…!」
「今さっき……けど、それより」
片手で身体をぐいと引っ張られ、耳元で囁かれる。
「続き、したいんだけど」
爛々と輝く獣の視線が、蓉司の瞳を射抜いた。
逃げられない。逃げる必要もない。
蓉司は小さく頷いてその背に腕を回し、哲雄に身を委ねた。

白いソファの上、蓉司は哲雄の隣に座った。
寝室まで行こうと言う哲雄の誘いを断ったのは、蓉司自身だった。
哲雄がジェルやタオルを、近くにあった机の上に置く。
その動作は、今から自分たちが何をするのかを暗示していて気恥ずかしい。
用意し終わったのか、哲雄が蓉司の隣に腰を下ろす。
相手が口を開くよりも先に、蓉司は彼の名を呼び掛けた。
「哲雄…」
「何だ」
「今日は先に、俺が……」
じっとこちらを見てくる哲雄の視線が、今はひたすらに痛い。
「いつも、してくれるだろ…その、舐めるやつ……今日は俺も、したい・・・」

小さな声で、詰まりながらも精一杯伝える。
「蓉司…」
今日聞いた中で一番優しい声が、部屋に響いた。

蓉司は床に膝をつき、ソファに座る哲雄の両足の間に体を割り込ませる。
ジッパーを下ろし、中から哲雄のものを取り出す。
自分から言い出したものの、当然ながらこんなことをするのは初めてだった。
やり方など、わからない。
いつも哲雄がしてくれていた行為を思い出しながら、ゆっくりと手を動かす。
両手で握りこめば、熱い脈動が直に伝わってくる。
自分のものとは明らかに違う大きな熱に、蓉司は小さな恐怖と共に沸き上がる情欲を覚えた。
自分の手淫が上手いかどうかなんて考えたこともなかったが、哲雄のものを扱きながらふと、自分の行為に哲雄は本当に感じてくれるのだろうかと不安になった。
そんな焦りからか、蓉司は手を使うのもそこそこに、哲雄のそれを口に含んだ。
けれど怒張したそれは大きすぎて、全ては含みきれず、舌を這わせるのがやっとだった。
「んぐ…っ…む…」
息苦しさに呻きながらも、必死で口に含んでいると、骨ばった手のひらで優しく頭を撫でられる。
「…ぅ、…ぁ…ふ…ッ」
哲雄のそれから自分の口内に放たれた液体を舌で感じ、蓉司は何かが満たされていくのを感じた。

哲雄が感じてくれている―。
そう思うとさっきまで生苦く感じていたそれも、甘酸っぱく舌を痺れさせた。
ちゅく…、と口の中で糸を引かせながら必死に舌を動かしていると、哲雄の手が汗ばんだ額を押して自身から蓉司を引き離した。
「蓉司、もう、いい…」
「ん…」
口から離すと、先ほどより大きく立ち上がったそれが目に入った。
しかし次に視界に飛び込んできたのは、真白い数枚のティッシュペーパーだった。
「蓉司」
そう言って口にティッシュペーパーを押しつけられる。
哲雄はたまに空気の読めないところがある・・・いや、あえて読まないのだろうか。
とにかくそういう部分があるのは知っていた。
そしてどうやら今回も例外ではない様だった。
「もう、いいから」
口の中の液体を吐き出せ、という事らしい。
蓉司はムッとして口の中に溜まっていたものを一気に飲み込んだ。
「うッ、げほっ、ごほっ!…ッは…」
むせ返し肩で息をする蓉司を、哲雄は目を丸くして見ていた。
「哲雄は…いつも、俺の、…した後飲み込むだろ…俺だって、そうしたい…」
「……」
心地好い動作で、哲雄が蓉司の髪をすく。
しかしその瞳には迷いが見える。

「何か今日、変だ…お前」
「…」
「何があった」
その言葉に塞ぎこんでいると、哲雄がぐいと蓉司の体を抱き寄せた。
「言いたくないなら別に良い…けど、心配になる」
蓉司の体に哲雄の匂いが染み込んでくる。暖かい温度、心地よい鼓動。
「俺、哲雄に心配かけてばかりだな」
蓉司は自嘲する様に笑いながら、心の底で泣きたいと思った。
「守られてばかり、与えられてばかりで…俺は哲雄に何一つ返せない…それどころか、また心配させて」
「蓉司…」
「もう嫌なんだ、そういうの。俺だってお前に、――」

最後まで言い終わらないうちに、蓉司の体はソファに縫い付けられた。
哲雄に押し倒されたと気付いたのは、きつく口付けられてからだった。
「ん…っ…!?」
哲雄の舌が口内を暴れる。
抑えられない熱を、蓉司に分け与えるように。
「…ッは……てつ、お…?」
「…っあんまり…そういうこと、言うな……」
「な、んで…」
「もたなくなる・・・俺が」
「!?」

突然のことに、頭が回らない。
目の前に見える哲雄の瞳が情欲に濡れている。
分かるのは、ただそれだけだった。

服を脱ぎ去った蓉司の、汗ばんだ胸の上を、哲雄の手が舐める様に滑る。
「はっ…ぁ…」
甘い喘ぎがリビングに広がる。
哲雄はそこに生える小さな突起を甘噛みし、もう一方の突起を手で煽る。
「ゃ…ぁっ……!」
下から押し上げる様に、上から押し潰す様に、突起の窪みに沿って這わせる様にと、哲雄は丹念に舌を動かす。
「ぅ、…は、ぁ……んっ、」
ちゅ、と突起の先を吸われ、蓉司の下肢からはじわりと欲望が滲み出す。
「ぁあ…っ、しろぬ、ま…ッ」
「何…?」
「…それ…や、め……ッ…!」
台詞を聞き終わる前に、哲雄がもう一度突起を甘噛みする。
「ぁ、…あぁ…ッ!!」
蓉司は敏感に反応し、一瞬背を反らす。
視線を下ろすと、震える蓉司の腹部に白濁が飛び散っていた。
舐められ、噛まれただけでイってしまった―。
その事実が恥ずかしいのもある。
けれどそれ以上に、また自分が与えられた様な気分になり、蓉司はうつ向いたまま顔をあげられなかった。

「もう、いいか?」
「ぅ、ん…」
ぼんやりとした頭に哲雄の声が降ってきて、蓉司は促されるまま足を開いた。
抵抗はしない。ただ、哲雄が欲しい。
「んッ…!」
蓉司の窪みに長い指が1本、差し込まれる。
用意していたジェルを馴染ませながら、ゆるりと円を描く様に動く。
「ぅ…ッ…」
「蓉司…」
「へい、き…」
中を優しく混ぜる哲雄の指に、きゅうと肉壁が絡みつく。
ほぐれていく窄みに、哲雄は2本、3本と指を増やす。
蓉司は感じ入る様に、体内の動きに集中した。

「・・・入れるぞ」
哲雄のものが入ってくる。
「あぁッ…くッ!…は、…」
熱く太いそれに、身体が引き裂かれそうな感覚に陥る。
痛みよりも強烈な、ずくずくと疼く中の熱に耐えられず、思わず自分から腰を揺らした。
「ぅ、…ん…哲、雄…」
覆い被さってくる哲雄の背に腕を回す。蓉司の淫肉がぎゅうと哲雄に絡み付く。
心が、体が哲雄から離れたくないと哭き叫ぶ。
熱い締め付けに耐えきれず、哲雄が小さく息をついた。

「蓉司…」
鼓膜に響く熱を帯びた呼び声を聞きながら、この行為は何かに似ていると思った。
そう、例えるなら愛情の様な――

哲雄の雄がある一点に触れると、蓉司の身体が素早く跳ねた。
「あぁッ…!!」
蓉司の反応を見て、哲雄がその一点を責め立てる。
「はッ…!…ゃッ…そこ、…」
快感の波に押し流されそうになり、意識を留めるために哲雄の背に爪を立てる。
哲雄が一瞬痛みに顔をしかめた。内側の熱が外にまで伝染して、びくびくと痙攣する躰が哲雄と同じ体温になる。
最後が近いと感じて、哲雄は蓉司の立ち上がったものを右手で掴み、掌全体を使い優しく扱き上げた。
「んっ…」
ぬるりと伝い落ちる白濁が、哲雄の手を汚す。
哲雄は自分のものを包み込む熟れた肉の締め付けに再び息を漏らし、蓉司のあふれ出る液をさらに練り込む様に、掌の全ての皮膚を使って蓉司自身を追い込んでいった。
「ぅッ…ぁ、哲雄…も、ぅ…」
「ああ…」
哲雄は蓉司の先の割れ目をこする様に撫で、中の一番奥深くを自身で貫いた。
「は…―ぁ、ッ…!!!」
「くッ…」

中に放たれた哲雄の性に、蓉司は心が満たされていくのを感じた。
自分の上に覆い被さってくる哲雄の背を強く抱きしめる。
「蓉司」
ビクリと肩がはねる。
「蓉司」
もう一度、さっきよりも甘みを帯びた声をかけられ、蓉司はゆっくりと顔を上げ、哲雄の瞳を見た。
しかしすぐに視線を逸らしてしまう。
「悩んでるのか、まだ」
甘い香りを漂わせながら、哲雄が問う。

守られてばかり、
与えられてばかりで、
俺は哲雄に何一つ返せない―

2人の間に沈黙が続く。
しばらくして蓉司が視線を戻すと、相変わらず哲雄が自分を見下ろしていた。
それに気付いた哲雄が、静かに口を開く。
「お前、気付いてないみたいだから、言うけど…俺がお前に何かを与えてるって言うなら、お前だってそうだ……だから、気にしなくて良い…」
すぐには分からなかった言葉の意味がふと明確になり始め、蓉司は目を見開いた。
まさかと思った。自分が哲雄に何かを与えた記憶は、ない。
哲雄はいつの事を言っているのだろうかと考えていたら、そういうの よくわかんねーけど、と呟くように続けられて、その素っ気なさに蓉司は思わず今の状況も忘れて噴き出してしまった。
何だよ、とバツが悪そうに言う哲雄自身も、どこか楽しそうだった。

こんな時でも哲雄は変わらない。
一度安心すると、さっきまでのわだかまりが嘘の様に薄れていった。
そんな現金な自分自身にも、思わず笑いがこぼれる。
「ごめん…俺、なんか1人で勝手に悩んで…」
「別に良い。そうやって悩むお前も……俺は好きだ」
流れる様な台詞で、単刀直入に告白されて、笑顔も引っ込み、耳まで真っ赤になる。
「……そういうの、やめろよ…卑怯だ…」
「何が?」
そう言って、哲雄が蓉司の顔をのぞき込む。
耳まで羞恥の熱を感じながら、蓉司はそらした視線を哲雄に戻す。
その時瞳に映った哲雄の表情に、蓉司ははっとした。
微かに意地の悪さを感じさせる少年の様な、哲雄の笑顔。
いつの間にか増えていた鮮やかな表情に、蓉司は息を飲み、漠然と思った。

もしかしたら自分は本当に―、哲雄に何かを与えているのかもしれない。

その何かが何なのかは、今はまだ分からない。
こんな風に思うのも、ただの自惚れかもしれない。
けれどもしかしたら―、

間近にある哲雄の頬に触れながら、蓉司はそうであって欲しいと、願わずにはいられなかった。

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 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧  予想以上に時間が・・・
 | |                | |     ピッ   (・∀・ ) 申し訳ない
 | |                | |       ◇⊂    ) __
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