ヴォイス 羽井×哲平
更新日: 2011-01-12 (水) 00:24:25
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| ゲシク。声。の元ヤンオタ。
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ぬるい上にオタがチョト乙女かもしれぬ。
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桜が咲いている。
街灯に照らされて、ぼんやりと薄紅の花弁が浮かび上がっている。
公園の隅に1本だけぽつんとあるその樹は、その幹の下に花見客をは
べらすでもなく、夜風に吹かれて飄々とした佇まいを見せている。
「な、穴場だろ?」
煙草をくわえている時のように口の端を上げ、得意げな顔をした羽根
意さんが僕を振り向いた。
「…誰もいませんね、凄い!」
「だから言っただろうがよ」
「こないだはやっちゃいましたからね~羽根意さん。まさかあんな作
り物を本物と見間違えるなんて!今回は本当にあって良かったー」
「鉄平、てめぇ」
「アッ、すみません!」
ぐぐっと寄った眉間に慌てるけれど、羽根意さんは機嫌がいいのかそ
れ以上何もしてこない。
羽根意さんの機嫌が良くなるぐらいに、そして僕の口が軽くなるぐら
いに、夜の闇に浮かんだ桜はとにかく綺麗だ。…僕の口が軽いのは元
からだけど。
「とにかく、夜桜見物には十分だろ」
「はい」
羽根意さんは手元に目を落としながら、コンビニで買ったばかりの煙
草のフィルムを開ける。
僕は、シャープペンの芯やシャンプーの入ったコンビニの袋から缶
コーヒーを取り出す。
桜が見える位置にある石段に二人で腰を下ろす。
なんだか全て指示された段取りのように僕たちは自然と隣り合って座
った。
「なんだかなぁ…」
火を付けた煙草をくわえた羽根意さんの呟きに僕が顔を上げると、視
線がぶつかる。
「こないだのエセ花見ん時は、まだ五人一緒だったんだよなぁ」
真顔だった羽根意さんがふっと表情を和らげる。この瞬間が僕は好き
だ。僕ら五人のことを考える時、羽根意さんはとても優しい表情をす
る。きっと本人に自覚はないんだろうけど。
僕らがそれぞれの道を踏み出す前夜。
あの五人揃った夜のことを思い出す羽根意さんの表情に、僕もつられ
て笑う。
「エセ花見って」
「結果的に、桜じゃなかったからな」
「楽しかったじゃないですか」
「うるせ」
拗ねないでくださいよぉ、と言ったら、拗ねてねぇよバカ、と笑って
羽根意さんの手が伸びてきた。
首を絞められるのかと思って身を竦めたら、くしゃっと僕の頭を撫で
られる。
鼻先を煙のにおいが掠める。
「まぁでも」
僕の髪に触れたまま、羽根意さんは声をワントーン下げた。
「今日は、鉄平と一緒だからいいか」
「…羽根意さん、それってどういう」
「桜1本で十分かー、って意味だ!」
「なんですか、それ!僕には桜1本分の価値しかない、みたいな」
「おまえなぁ、桜1本でも相当綺麗だろうがよ」
「僕が相当綺麗ってことですか」
「わけわかんねぇこと言うなよ」
羽根意さんが変なこと言うからでしょう!と言ってやりたかったけど、
口を噤んだ。
夜で良かった。僕の顔はきっとちょっと赤い。
「…はい、羽根意さん、コーヒー」
「おう、さんきゅ」
煙草の火を消して携帯用灰皿に放り込んだ羽根意さんに缶コーヒーを
渡す。一瞬触れた指先を意識するまいとしたら、よけいにドキドキし
た。
「…なぁ、鉄平」
「はい」
缶コーヒーを口に運びながら、羽根意さんが桜を見つめている。
僕はそれを横目で見て、足もとに視線を落とす。
「来年は、五人で本物の花見出来たりすんのかねぇ」
「…出来ますよ」
「そうかぁ?来年の今頃、おまえ、試験勉強追い込みとかでひぃひぃ
言ってんじゃねぇの?」
「一晩ぐらい大丈夫ですよ」
「だといいけどな」
羽根意さんと同じように、桜を見つめた。
1本だけでも飄々と花を咲かせて、僕らの視線を集める桜の樹は、な
んだか僕らの中心にいつもいた大紀さんの様だな、なんて思う。
「少なくとも」
「ん?」
羽根意さんが僕の横顔に視線を向けるのを感じる。
僕は桜を見上げたまま呟く。
「少なくとも、僕は多分来年も羽根意さんとこの桜を見てるんじゃな
いかなって、思います。この桜が咲く度に、羽根意さんと“綺麗だ
なー”なんて言ったりして…」
根拠は、ないけど…。
語尾が消えそうになりながら呟いた僕の頭に、またふわっと羽根意さ
んの手が伸びてきて、そのまま頭を撫でられる。
「…そうだな」
返ってきた羽根意さんの肯定の言葉は少し照れくさそうで、きっと羽
根意さんも「今が夜で良かった」って思ってるんだろうな、なんて思った。
桜の樹は僕らのことなんて知らずに咲き誇っている。
来年もその先もずっとそのまま咲き続けてくれたらいいなって、僕は
こっそり思う。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 最シュー回に萌えてやっちまいました。ありがとうございました。
| | | | ピッ (・∀・ )
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