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藍色の夜 カカル×イルヤ

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「藍色の夜」でカカル×イルヤ。エロなし。トロとウニが好きでした

砂飛竜はのびのびと砂漠の空を飛ぶ。翼はない。手も足もない。
頭は首に、首は胴に、胴は尾へと流れ、風になじむ。
全身を覆う白い毛を風に長くたなびかせながら、砂飛竜は青い空を行く。
成獣は大人の男を背にのせ、空を飛べるほど大きく長い。
カカルは砂飛竜で町と町を往復し客や荷物を運んでいる。つまりは運び屋だ。
カカルが飼っている2頭の砂飛竜はつぶらな藍色の瞳と
風になびく長く白い毛を持っている。気性が極めてやさしく人懐こい竜たちだ。
カカルが鼻面を撫でてやると目を細めてあまえ、
野営の夜は、やわらかな毛で覆われたからだで、長椅子のようにカカルの背を受け止める。
ちょっと前、カカルはありえない客を拾った。運び屋の相場も飛竜の乗り方も知らない
世間知らずのくせに、妙に大人ぶった口をきく、金髪のガキだ。
あまりのいけすかなさに、目深にかぶったローブから除く金色の髪と瞳の美しさに
瞬間見せられたことを、カカルは速攻でなかったことにした。
カカルに往復5日はかかる砂漠の果てオハの精霊殿まで行けと命じた生意気なガキは、
己はコーガの精霊殿の祭司だと名乗った。ガキの見た目はせいぜい12、3歳。
ありえねえだろと思った。廃墟と貸した精霊殿が魔物の巣になる前に清めて崩すため、
祭司であるところのガキは砂漠の果てのオハを目指していた。
もともと共にくるはずだったコーガの祭司長が病で他界したため
独りでコーガを出たらしい。前金をくれと言ったカカルにガキは、
きらびやかな首飾りを差し出した。

「多すぎる。半額でいーんだよ半額で」
タチの悪い運び屋なら金だけとって砂漠におきざりだぜと忠告したカカルにガキは、
憂いを帯びた横顔でそうしたければそうすればいいと呟き、横柄につけたした。
「それで全財産だ。とりそこねたら、もう何もでんぞ」
ガキの言いぐさにカカルはむっとし言い返しかけたが、間髪いれず
「客のすることにいちいち口を出すな。ただの運び屋のくせに」と怒鳴りつけられた。
「マジにおきざりにすんぞ てめ」
苛立つカカルをなだめてくれたのは2頭のやさしい竜だった。
(そんなにおこんなよ)
(血管、切れんぜ)
翌日、2頭の飛竜にそれぞれまたがり、カカルとガキはオハの精霊殿目指し飛び立った。
端整な顔立ちの金髪のガキはイルヤという名を持っていたが、
道中カカルはガキと呼び続けた。ガキ、ガキと繰り返し呼んでいると
藍色の夜に42歳だと告げられた。12、3の頃から成長が止まったように
外見上は年をとらなくなったのだそうだ。異形なものとして扱われ、
無常を知っている42歳のイルヤにしてみれば、ガキは20代後半に見えるカカルだった。

カカルはイルヤの告白に沈黙した。
日が昇り朝が来て、ふたりは飛竜でオハの精霊殿を目指した。
砂漠を吹き抜ける風に乗り2頭の飛竜は砂丘を超える。
その日はよく晴れていたが、うだるような暑さはなかった。
白い毛を風にたなびかせながら飛竜は飛んだ。
風の音をききながら飛竜の背で感じる風はここちよい。
風紋を織り成す砂の絨毯の果てにオハの精霊殿が見えてきたとき、
イルヤは決心をかためていた。本殿を術で崩し自分も残る。きょうオハで死ぬ。
儀式を終え、あとは短剣で胸を突くだけという時、カカルに水をさされイルヤは語った。
私の知る、私を知る、さいごのひとりが死んでも今のままでいるのか?
年もとらず、ずっとこの姿のまま、ひとりで。
そのほうが死よりもずっとおそろしい。
あたりまえに年を重ねることができない人生に絶望し、
涙をながしながら命を絶とうとしたイルヤをカカルは死なせなかった。
見た目は20代後半だが、カカルは当年とって88歳。
田舎のコーガでは「長命な種」は珍しかったかもしれないが、この街にはカカルをいれて
まだ3、4人いるのだ。イルヤは決してひとりではない。

成長だってする。自分たちの種は10年おきぐらいに、
5日間ほど成長に集中する成長期がくるのだ。おそらくイルヤは2回ぐらい成長期を
すっとばしてしまっただけなのだ。何も知らず、知ろうともせず、
なにもかも思い決めてしまうのはまだはやい。
心が寂しいままで死なせたくない。深くそう思った。
数奇ではあるけれど消して不幸ではない。人より長生きするってことは、
自分の足で人より遠くへ行って、自分の目で人より多くを見ろって
言われているんだと思うから。イルヤにそう伝えたかった。だから助けた。
そうして助けた金髪のガキはカカルの家で遅れてきた成長期をむかえ、
美しい青年になった。短かった髪はキラキラと長く流れ、手足もしなやかに伸びた。
カカルに知らなかった事を教えられ、毒気を抜かれたイルヤはきれいな顔を朱に染め、
自分のことさえ知ろうとしてこなかった己の青さに悶えた。
「まーねー、しゃーないやね、ガキはね」
カカルは恥ずかしがるイルヤを面白がり、
きれいな赤に染まったかんばせを肴に杯を傾けた。
めでたしめでたしだ。めでたくない事があるとしたら、オハの精霊殿から
本を運び出すために予定外の往復をしたり、砂嵐で足止めをくらったため、
預かった首飾りではどうにもならないほど赤字が出たことぐらいだけだった。

けれどイルヤにはたっぷりと時間がある。カカルは思った。
借した金は利子つきでゆっくりと返してもらえばいいだろう。
「しばらくは、あちこち……行って見ようかと、私はひどく世間知らずのようだから……」
イルヤはカカルにそう告げ旅立った。
カカルは戸口に立ち、キラキラ光る柔らかそうな金色の長い髪が見えなくなるまで、
イルヤを見送った。もう、二度と死に急ぐようなまねはして欲しくない。
たとえ何があっても。例えば、時の流れの中で愛や恋を失ったとしてもだ。
人より「長命な種」が人に惚れたときに覚える切なさは半端ない。
愛するひとと一緒に年を取ることは決してできないから。
この先「ただ一緒に年をとっていくこと」ができない苦さに直面しても、
誰を看取っても、自分を憐れんで欲しくなかった。
人より長生きするってことは、自分の足で人より遠くへ行って、
自分の目で人より多くを見ろって言われているんだと思うから。
そうして、歩みつづけていたら時には見たくないものも、
見なくてすむものも見なきゃならないこともある。
けれど、そう簡単には目を瞑って欲しくないのだ。前を向いて生きて欲しい。
もう、二度と死に急ぐようなまねをして欲しくない。
カカルは弟を思いやる兄のような眼で、イルヤの背を見送った。

見聞を深める放浪の旅を続けながら、イルヤは行く先々で働きせっせと金を貯めた。
カカルに借金をちゃんと返したい。そうして言いそびれた礼を言うのだ。
イルヤにとってカカルはまぎれもなく恩人だ。
カカルと巡り合えなければ、きっと狭い世界で悟った気になったまま、
オハの精霊殿で命を絶っていた。ガキだガキだと呼ばわれるたび、見た目はガキでも、
42歳だと憤慨していたけれど、カカルの目に映る自分がどれだけガキだったか、
いまなら恥ずかしいほどわかる。
まとまった金を手にカカルに会いにいった日、出迎えてくれたカカルの笑顔と、
懐っこい2頭の砂飛竜にイルヤはとてもなごやかな気持ちになった。
ずっと会いたかった。旅をしながら、たまらなくカカルに会いたくなる夜が幾夜もあった。
自分をよくよく知っている風なカカルは、己を知らないイルヤにとって眩しかった。
憧憬だと言い聞かせてきた思いが、もしかしたら恋心かもしれないことに
再会したその日、イルヤは気がついた。
金貨の入った袋を手渡したとき、イルヤのほっそりとした指先がカカルの手に触れた。
年甲斐もなくときめいた。もう40を超えている、いい大人なのに恥ずかしかった。
ちゃんと礼を言いたかったのに、どもってしまう。
茜色の朝のように頬を染め、しどろもどろになりながら
イルヤはカカルに「ありがとう」を言った。「好きだ」はまだ言えそうにもない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
捏造ごめんなさい


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