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黒子のバスケ 黒×火×黒

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飛翔新連載の黒/子/の/バ/ス/ケ で火神×黒子×火神。リバ気味。

勢いだけで書いたので展開が唐突だったり反省だらけですが
突き抜け回避祈願も兼ねて投下します

今日も今日とてあいつは影が薄い。

「…火神くん」
「畜生、混んでやがんな…」
「火神くん」
「うお、ぉお!?居たのかよ!」

制服の裾を引っ張られてやっとで隣に並ぶ黒子の存在に気付いた。
もう三日も四日も居るんですから気付いてほしいです、と俺を見上げる黒子は気を抜いたら視界から消えてしまいそうな程存在感がなく、
そして気付けないのはこれのせいでもあるのではないかと思えてくる程、俺と黒子には身長差があった。

「んだよ、今日もか?」

自分の影の薄さを自負しているのなら、昼休みの購買になどわざわざ来るだろうか。
同じように気付かなかった俺に言える台詞ではないが、知る限りでは黒子はこれで三日連続、
カウンターの中に立つ職員に気付かれてはいなかった。

「はい。…火神くん、お願いしてもいいですか?」
「仕方ねえな、ホラ金よこせ」
「すみません」

自分と同じように昼食を求めに来ること人混みの中で声を張り上げ他人からモノを奪取してくる、なんて黒子には到底無理な芸当だろう。
三日前に生徒の群を眺め呆然としていたところに立ち会わせてから、こいつの分も俺が一緒に買いに行ってやることを不本意ながらしてやっていた。
まあ、こいつの分、とは言っても

「今日もあれか、いつもの牛乳か?」
「はあ。…なんで、笑うんですか」
「いーや、精々頑張って追いついてくれよ」

小さなパックの牛乳ひとつ、だった。
弁当くらい持ってきてはいるだろうから、やっとでこいつもバスケ部員らしく身長を気にし始めたのだろうか。

(本気で俺を日本一にしてくれにかかってきた、か?)
あの技術に身長が加わったらキセキの世代ですら軽々と越えられるような―――
と胸が高鳴ると同時に黒子を見下ろせなくなる日のことを何故か想像して、それもそれで不自然だな、と思った。

しかしそれでも22センチの俺との差は当然すぐに埋まるワケはなく、当分黒子とは購買でも顔を合わせた。
部活帰りのいつものハンバーガー屋でも、顔を合わせた。

「…いつも同じところに居んのに、なんで気付けねえんだ?」
「僕には分かりませんよ、そんなの」

僅かに眉を下げていつものバニラシェイクをずるずると飲む黒子の左手の本には、
今日はドッペルゲンガーに怯えながら命を絶っていったという作家の名が印刷されていた。
そして右脇に置いてある鞄から目に入ったのは、

「…3、4、5、6本…」6本、ものあの牛乳のパッケージ。
「え?…わ、人の鞄の中身を盗み見るなんて…火神くん」
「開いてたんだから見えるだろ!」

珍しく慌てた動作で鞄を閉める。冷静なこいつの意外と必死な一面を見れた、というところだろうか。悪い気はしなかった。

「なんだ、そこまでして早くデカくなりてーのか?」
「…はあ、まあ…成長期なんて一般的に言われてる歳ですし、放っといても伸びるのかもしれないですけど」

君との20センチ差はさすがにキツいです、と。
声色こそ平坦ないつもの物言いだったが、先日の"日本一にする"宣言の覚悟を見せつけられ俺のやる気を増幅させるにはその一言は十分だった。

「ならこんなトコでそんなモン飲んでるより、1本でも多く牛乳飲んでた方がいいんじゃねーのか?
まぁ腹壊した時の保証は…なんだよ」目を丸くして俺を見る黒子の視線。
両手で暖めるように持ったバニラシェイクと俺とを交互に見ていた。

「え?これも牛乳みたいなものじゃないんですか?」
「は?」
「だって牛乳の味が…」
「………………」

ミルクとバニラって同じものじゃないんですか?と続けたその声はやはり平坦で、冷静だった。

「…違うんですか」

が、やはり開いた口が塞がらない状態の俺を見て間違いに気付き

「…笑わないでください、火神くん」

恥ずかしいという感情も知っていたようで、初めて頬を赤く染める黒子を見た。

「その冷たいモン飲んで頬冷やせ、身長は伸びねーけどな」
「…からかわないでください」
「はは、もうそれ飲む意味も無くなったか?」
「いえ、味も好きだったのでまた…来ます」

小声でそう言うと一気に飲み干し、ストローが寂しくカップの底の空気をまさぐる音が聞こえた。
とっくに完食していた自分のゴミと一緒に片付け、ここで一緒になった日は
(といってもほぼ毎日会ってしまっているわけだから、毎日そういていることになるけれど)
そのまま二人で帰路につき、時に近場の公園でボールを突くという暗黙の了解のようなものにならって店から背を向けた。

「…バニラは牛乳じゃなかったんですね…冷静に考えたら当たり前か」
「大抵の奴は普通に考えても分かるだろうがな」
「…なにを食べたら火神くんみたいに大きくなれるんですか」

話題を逸らしたつもりだろうが照れ隠しにはなっていない。黒子の歩くスピードが早まる。

四月の風がぬるく顔を撫でた。

「俺はガキの頃から人一倍でかかったしな…とりあえずは成長期頼みと牛乳だろ、オマエの場合」
「…やっぱり、成長任せですか」
「確かにバスケ部の、しかもあのキセキの世代の1人がその身長じゃなあ。好きな女でも出来たって格好つけらんねーだろ」

冗談混じりで言ったつもりだった、のだが気になる話題であったのか、隣を歩く黒子が立ち止まった。釣られて自分も足を止め横顔見遣る。
色素の薄い風に揺れる髪も顔色も、今は落ちきった太陽のせいで全て黒を纏っている。

「…どうした?」
「…ですよね、格好良くいたいですよね」
「ん?」
「好きな相手の前では」

「そんな奴居んのかよ、お前」

クラスや部活の女子生徒に目をヤルこともなく、色恋沙に興味はないものだと思っていた黒子もそういう心配はするものなのか、と感心してしまった。
同時にずしんと重く、身体の真ん中あたりに響いた違和感には気づかない振りを、した。

「…まあ、人並みに」
「そりゃあ急いでデカくなんねえとな、日本でもアメリカでも男が引っ張ってくのは一緒だろう」
「でも、僕なら大丈夫です」

と、制服の裾を掴まれた。
購買で俺を引きとめるときと同じように、
自分はここにいるからと言わんばかりに。
暗闇で見下ろす黒子の表情はやはり読めない。

「何がだよ」
「相手に屈んで貰うようにします」

「そりゃまたみっともねえ…」
「だから」
「あ?」
「だから火神くん、ちょっと屈んで貰えますか?」
「ああ…はぁあ!?」

ああ、今が真昼間だったとしてもこいつの考えることは読めないだろうな、と思えるのは
突拍子もないことをいきなり言われて混乱しているからだろうか。
だって、俺が黒子に合わせて腰を曲げて目線を合わせて、それで、することなんて。

「…待て、お前が俺を好きなのは分かった、それでどうしていきなりキスなんだ」
「…部活に精が出て、頑張れるかと」
「ま、待て、まだ早い」
「…アメリカ帰りにしては意外と堅いんですね」
「そういうことじゃねえ!」

素直に聞き入れられない黒子の望み、それはこいつに好意を抱いてないからだとか、そういう関係になりなくないから、なんて訳じゃない。
率直に動揺、したからだ。きっと。

自分は影になり俺を際立たせ、日本一にすると。
ああ確かに見下ろしてみなけりゃ光から影は見えねえな、といつか思ったのを覚えている。
それでも、見えにくくとも、時々はその表情を盗み見たいと欲張ってみても罰は当たらないだろうか。

「と、とにかく、今は、まだ駄目だ」
「いつなら」
「…と、とりあえず、キセキの世代の3人や4人ぶちのめしてからだな」

それまでお預けだ、と言ってみた。
月を背にして立つ俺が見下ろす黒子は本当に影のようだ。

「見解の相違です」
「は?」
「…ご褒美を楽しみにするだけじゃ、糧には物足りません」
「んな事言っても…」
「じゃあ、今はまだ屈まなくてもいいです」

あっさりそう言うと黒子はおもむろに俺の手を掴み引きよせ、その甲に軽く唇を触れた。
4月の夜とは思えないほどの人間の熱が、そこから確実に上ってくるのが分かってしまった。

「ば、馬鹿恥ずかしいことすんじゃねえ!女か俺は…!」
「試合に勝てたら、次はちゃんと火神くんに屈んで貰いますからね」
「…畜生……」
「とりあえず今はこれで、頑張れます」

お前がさっさと身長伸ばせば済むハナシだ、と揺れる脳内と火照る顔に耐えてどうにか言い切ると、
一瞬月に照らされた黒子の困り顔が見て取れた。

(…しっかりお前も照れてんじゃねえかよ)

明日から牛乳を両手いっぱいに抱えて飲みだしたりはしないだろうか。
馬鹿なことを考えつつ、仕方ないから購買には一緒に買いに行き続けてやろう、と考えていた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
規制にgkbrしながら投下してました。ありがとうございました。


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