Top/44-508

オリジナル 「伝書鳩」

                    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
                     |  歴史を参考にしたファンタジーです
 ____________  \            / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | __________  |    ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄|  辻褄があってない部分は勘弁…
 | |                | |             \
 | | |> PLAY.       | |               ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
 | |                | |           ∧_∧ ∧_∧ ∧∧ 
 | |                | |     ピッ   (´∀` )(・∀・ )(゚Д゚ )
 | |                | |       ◇⊂    )(    ) |  ヽノ___
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _) ┌ ┌ _)⊂UUO__||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)(_(__).      ||  |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

――1961年――

親愛なる君へ
お元気ですか? 僕たちは叔母の家で元気でやっています。
叔母と従兄弟らはよくしてくれます。西の暮らしは快適です。
ただあの夜、切符を渡してくれた君の蒼い顔を思い出すと胸が痛みます。
大変なことだっただろうに、本当にありがとう。
東の生活はあいかわらず苦しいと聞くけれど、体を壊してはいないだろうか。
君は昔から病気がちだったから、僕も妹もそればかり心配しています。
もしもこの手紙が届いたら、体調だけでも教えてください。
この鳩はもうすっかり家を覚えているから、空に放してやれば僕のところに帰ってきます。
とても賢い鳩なんだ。頭が丸くて、銀目が可愛らしいだろう?
なんだか君を思い出すよ。鳩に似てるだなんて可笑しいかな。
ではまた。

ハロー
君の素晴らしい鳩のおかげで、君たちの無事を知ることができた!
これは僕にとって、あの壁が出来て以来、最良のニュースだ。
小さかったあの子も、背が伸びただろうか。
僕があげた赤い手袋はもう小さくなってしまったかな。
元気でやっているようでとても嬉しい。
僕も軍で鍛えられて、ずいぶん丈夫になったよ。風邪だってひいてない。
今は壁際で西へ向かう人たちがいないか監視している。
西へ向かう「東の人」を、「東の兵」が見張っているんだ。
まったく馬鹿らしくて嫌になる。
この間、同僚が壁を越えようとする親子を撃った。
子供はちょうどあの子くらいの歳だったんだ。
僕はまぶたを閉じさせてやることしかできなかった……。
あの子の笑い声が聞きたい。また君と歌いたい。
いつかまた会えることを信じている。
それまで元気でいてくれ。

――1971年――

親愛なる君へ
妹に恋人が出来ました。同じ学校に通う少年です。
嬉しいような寂しいような、複雑な心境ですが、
頬を薔薇色に染めた妹を見ると、これで良かったのだという気になります。
君からの手紙を読む度、その思いは一層強くなります。
これは秘密にしていたことだけど、妹の初恋の相手は君なんだ。
君からもらった手袋は、ずっと前にサイズが合わなくなったけど、
まるで宝物のように大切に仕舞ってあります。
君は気付かぬうちに婚約者候補を失ってしまったわけだ。同情するよ。
嫌な事件もあるけれど、僕たちが生活に困らず朗らかに笑っていられるのは、
君のおかげであり、叔母たち家族のおかげであり、
僕たちを生んでくれた、東に眠る両親のおかげでもあると思います。
この街が、この国が、再び一つになることを、僕は切に願っています。
それから、君が幸せになることを。
ではまた。

ハロー
あの子ももうそんな歳になったのか。
きっと美しく成長していることだろう。まったく残念なことをしてしまった!
東でも、君や僕と同じように、平和を望んでいる者は多い。
今は武器を持たない兵士もいて、争いを嫌う若者たちは増えてきている。
まだ軍にいた頃に手紙に書いた、僕の目の前で撃ち殺された親子のことを覚えているかい?
あの時のことを、休暇を使って僕の店を尋ねてきた兵士たちに話したんだ。
同じ地に生き、同じ血を分けた人間の命を奪うことに比べたら、
痛みを知ろうとしない者から受ける中傷や暴力なんて少しも怖くない。
西も東も関係なく、僕たちは一人の「人間」であるはずだ。
そう言ったら、彼らは真っ直ぐな目で頷いてくれた。
国家が何を言おうと、軍が何を言おうと、心さえ忘れなければ必ず壁は崩れるんだ。
僕も君とあの子の幸福を心から祈っている。
キスを送るよ。

――1983年――

親愛なる君へ
僕の愛しい甥っ子の手形を送ります。
妹も順調に体力を取り戻し、我が家には常に幸せな笑い声が響いています。
赤ん坊はなんとも言えない良い匂いがします。
この小さく柔らかい体の中に、とてつもない生命力が隠されていることを僕は知っています。
早く君に紹介したいよ。あまり泣かない強い子だ。
東では秘密警察が激しく動いていると聞きました。
この手紙の返事も、もし危ないようなら遅くなっても構いません。
鳩はもう3代目になるけれど、とても賢い奴だから大丈夫。
それから、今、君のために絵を描いています。
拙いものだけれど、完成したら受け取ってほしい。
描いているのは、壁から見た西側の様子です。
壁がなくなったら、君がいる場所からはこの景色が見えるはずです。
もし鳩を飛ばすまでに時間があれば、君もぜひ絵を描いてください。
それでは。

ハロー
素敵なプレゼントをありがとう。
小さな楓の葉のような手形に自分の手を重ねてみたら、恥ずかしいことに涙が出てきそうになった。
あの子は、男にはとても出来ない偉大な仕事をしてくれた。
ありがとうと伝えてくれ。
僕は風景の絵が苦手だから、自分の手を描いてみた。
(顔を描いてしまうと、万が一この手紙が見つかった場合に君たちにも迷惑がかかるかもしれないからね。)
あれから20年以上経って、僕もすっかり皺が増えた。
白髪も生えているし、声が掠れることもある。
君と会っても、気付いてもらえなかったらどうしようか?
いや、僕がどんなに変わっても、君が僕を見つけられないわけがない。
鳩のような銀の目が目印だ。覚えておいてくれ。
僕も君をすぐに見つけるよ。約束だ。

――1989年――

親愛なる君へ
ああ、君はもうニュースを聞いただろうか?
最後まで東の地を見守ると言って、国境へも行かなかった君だけれど、
あれを聞いたらきっと飛び出してくるだろう!
僕もこれから壁に向かいます。
君の銀目を必ず探し出すよ!

ハロー、レオ
4代目は宿り木にとまって、、たった一羽、僕の遅い帰りを待っていてくれた。
まったく、あの夜は気違い沙汰だった!
しかし今までのどの夜より輝かしい夜だった。
ゲートを越えた瞬間、君からもらった絵のとおりの風景があった。
そして喜びを叫ぶ、人、人、人。
西も東も関係ない、心さえあれば壁は崩れる。
必死に自分に言い聞かせていた夢のような言葉が、現実になった。
レオ、君に感謝したい。
君はあの場にいた数万人の中から、本当に僕を見つけ出してくれた。
30年近く、手紙の上でしか言葉を交わせなかったというのに、
君は僕を見つけ、僕も君にすぐに気付いた。
僕はずいぶん年を取った。もちろん、君も同じだけ年を取った。
しかしそれが何だというのだろう!
僕たちは再び出会い、壁は壊された。
東西は一つになり、新たな時代が訪れるだろう。
あの子の息子こそが、その時代の主役になるはずだ。
この手紙を書き終わったら、すぐに荷物をまとめて君の家を尋ねるよ。
また4代目は僕の到着を待つ破目になるわけだ。災難だね。
最後に、今さらかもしれないが――
誰よりも君を愛している。
                                   アルバート

 ____________
 | __________  |
 | |                | |
 | | □ STOP.       | |
 | |                | |           ∧_∧ 
 | |                | |     ピッ   (・∀・ )
 | |                | |       ◇⊂    ) __
 |   ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄  |       ||―┌ ┌ _)_||  |
 |  °°   ∞   ≡ ≡   |       || (_(__)  ||   |
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


このページのURL:

ページ新規作成

新しいページはこちらから投稿できます。

TOP