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43-514

義ら義ら 先得る×英義 Edit

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

開店前の店内。いつもにも増して騒がしく、そしていつもにも増して、耕平が困っている。
そんな様子を、英義は輪から外れて一人ぼんやりと見ていた。

事の発端は、他愛もない会話だ。
自分達がどんなキスをするのかで盛り上がって、当麻が耕平に話をふった。

「耕平さんはどんなのすんの?ちょっとしてみてよ」

明らかに、冗談半分。頬を差し出した当麻に、真面目な耕平は本当にキスをした。
可愛い、という言葉が似合いそうなキスに照れながら、こんな感じ、と耕平は笑う。
商事の絶叫が聞こえて、参考に俺にも、なんて誰かが言い出したらその後は早かった。
優しい耕平はちゃんと一人一人に対応していた。
頬とか、おでことか、瞼とか。キスを一つと数えるなら、商事の怒りはその何倍にもなっていくのが見てとれた。
そんな様子を見ながら、英義はぼんやり思う。
アイツは違った、と。
半ば強引に奪われはしたものの、荒々しさよりも優しさを想像させるようなそれを思い出し、英義は口元を抑える。
と、同時にその人物を目で探してしまう。
バレないように、目だけで。
そして、視線は絡み合う。
すぐにそらした、が、視界の端にいつもの笑みが見えた気がした。

ここに来たのは、このホストクラブを気に入ったのもある。
でもそれ以上に気に入ったのが彼、英義だ。真っ直ぐで真面目で、ちょっとからかうと真っ赤になって怒る。

先得るはずっと英義を見ていた。
そして、視線は絡み合う。
店内の様子や反応を見ていると、どうやら自分との行為を思い出したらしい。
加虐心が擽られる。今度はどんな表情をしてくれるのだろう?
期待を胸につかつかと相手に歩み寄る。英義ははっと顔を上げて後退りをした。

「何だよ…」

多分、唇の動きからそう言ったのだろう。うるさくて聞こえやしない。

「期待、してるんでしょう」

自分も囁くように。でも、唇の動きで読み取れるようにゆっくりと。ジリジリと壁に近づいていく。英義の背中が当たるのと、先得るが手をつくのは、ほぼ同時だった。
顎に手をやり、逃げられないようにして、英義が嫌がっているであろう笑みを浮かべる。今度は聞こえるように、しっかりと耳元に唇を寄せた。

「キス、されたいんでしょ?」
「そんなこっ…」

文句を言う口はふさいで、…すぐに離してしまった。
英義がぽかんとしている。が、それ以上に先得るは自分にびっくりしていた。
唇を重ねようとした時の英義の表情。それに芽生えた、よく分からない感情。その感情に任せるままに体を委ねたら、いつものようなキスが、出来なかった。

「可愛いね」

そう言って、嫌がる笑みを浮かべて、頭を撫でて、その場を離れるしかなかった。
先得るは戸惑っていた。
自分に芽生えた、よく分からない感情。これは一体、何なのか…。

「ったく、有機のヤツ…よりにもよって口にちゅーしてもらいやがって!俺もあぁやれば……英義?」

輪の中で一番騒がしかったであろう商事が、むすっとして英義に歩み寄る。そしてぶつくさ言いながらも、それでも英義の様子に気づいた。
真っ赤で、話を聞いてくれていない。

「英義?」
「っ!」

顔を覗き込めば、過剰に後ずさる。あ、商事か、などと呟いて、ますます怪しい。
自分が騒いでいた間に、何かあったのだろうか?商事はきょとん、としながら英義に尋ねる。

「何かあった?」
「…もねぇよ」
「ひでよ…」

ぷいっと顔を背け、すたすたとカウンターに行ってしまう。
いつもと様子の違う彼に、商事は追いかける事が出来なかった。
何となく拒否された気がして、しょんぼりしてしまう。今日はあまりいい事がない。
少し溜め息をつきながら壁に寄りかかった商事に、今度は耕平が歩み寄る。

「どーした商事、元気ないな」
「耕平さん…何かよぉ、英義が冷たくってさぁ…俺何かしたのかな?」
「うーん…今はちょっと、虫の居所が悪いのかもしれないぞ。商事が何かしたわけじゃないさ」

そう言われて頭を撫でられれば、今日はいい日になるかも、なんて上機嫌になれるのが商事のいいところだ。
ありがと耕平さん、と自分の持ち場に戻る商事を見送ると、耕平は身だしなみを整える為ロッカールームへと向かった。今日はいつも以上に疲れた気がする耕平に耳に届いたのは、ライターの音だった。

かちゃ、かちゃと。ライターの蓋を開けては閉め、閉めては開けている。

「遊びの、つもりだったんだけどねぇ…」

こんなに自分が戸惑うとは思わなかった。これではまるで、自分が遊ばれているようではないか。
不思議と悔しいという気持ちはなかった。だからなおのこと、戸惑う。
強く蓋を閉める。気持ちの整理の出来ない先得るの元へ、耕平がやってきた。

「先得る…どうした?元気ないようだけど」
「……」

ここは年の功にでも頼ってみようか、先得るは英義の名を伏せて話し始めた。
最初はからかうつもりで、いや今もなのだけれど、それが最近はうまく出来ない。
悲しい顔は見たくない。優しくしてしまったりする、と。
話していく内に、耕平の顔が嬉しそうに輝いていく。先得るは少々不思議そうに、耕平を見つめた。

「先得る、それは恋してるんだよ、その子に!」
「恋?」
「そうだよ、先得るにも本気になれる人が出来たんだな…俺応援するよ、頑張れよ先得る!」

嬉しそうな顔をしながら肩を叩く耕平を見つめながら、先得るは更に戸惑っていた。
恋?相手は英義だ、男が男に、なんてありなのだろうか。
鏡に向かって髪型を整える耕平にそう聞きたかったが、やめた。この男の事だ、少し困りながら、それでも応援してくれるだろう。
随分と、望みのない恋をしたものだ。先得るは自嘲気味に笑いながら、ロッカールームを出ていった。

耕平の変化を一番に見抜くのは、いつも商事だ。まぁ、毎日ご主人様を一生懸命追う犬のような彼のこと、それは半ば当たり前の事ではある。
今日の耕平は、何だか上機嫌だ。彼の幸せそうな顔を見ていると自分まで嬉しくなる。
幸い、どちらにも客はついていない。商事はぱたぱたと耕平の元に駆け寄り、体をくっつけた。

「こーへーさんっ。何かすっげぇ上機嫌じゃーん、どうしたの?」
「ん~、実はな」

耕平は軽く周りを見渡し、こそっと商事に耳打ちをする。

「先得るに本気で好きになれる人が出来たみたいなんだよ」
「えぇっマジで?!」
「あぁ、これでアイツも賞味期限がどうとか言わなくなるかもな…商事、これ誰にも言うなよ?」
「分ぁかってますって!俺が耕平さんとの話、誰にも言うわけないじゃぁん」

内緒の話を自分にしてくれた。
理由は違えど、商事にも上機嫌が移る。
そして、それが故に、耕平との約束を忘れてしまったのだ。加えて相手の事を信頼していたから言ってしまったのだ。
商事がついつい口を滑らせてしまったのは、英義だった。

「これでさ~、アイツもまともになるんじゃね?」

店の片付けをしながら、声を少しひそめながら笑い言う商事に、英義は返事が返せなかった。先得るに、本気の相手。
分かりきっていてもショックだった。自分は遊ばれていたのだ。
だけど、何故?何故自分はこんなにもショックを受けているのだろう。
気がつけば、夜の公園に来ていた。
考え込んでいて、ふらふらと歩き回っていたらしい。
疲れた。
英義は吸い寄せられるように、ブランコに座る。見上げた空には、月がぽかりと浮かんでいた。

もう既に英義は帰った、という。店の片付けをしている時から様子がおかしかった彼を、先得るは見逃さなかった。
あれは、自分の店に連れ込んだ時に見せていた表情によく似ている。帰りの挨拶もそこそこに、先得るは店を飛び出した。
心配で仕方がなかった。闇雲に走り回るも、行き先などわからない。気がつけば、夜の公園にいた。先程までの喧騒はどこへやら、静かなものだ。
先得るはとりあえず立ち止まり息を整える。と、その時。
きぃ、と金属の軋む音が聞こえた。きぃ、きぃ、と、一定のリズムを刻むそれを探して周りを見渡す。
滑り台、シーソー…小さな公園だった。ブランコに座る、不釣り合いなその影を見つけた先得るは、そちらに向かって歩いていく。

「やっと見つけた」

言いながら隣のブランコに座る。きぃ、と音が重なった。

「……何しに来たんだよ」
「ん?英義を探しに」

にっこりと微笑みながら言う。対照的に、英義は顔をしかめた。それでも、ブランコは鳴っている。

「…本気で、好きな人が…出来たんじゃねぇのかよ」
「それ、誰から聞いたの?」
「耕平さんから聞いたって、商事が…」
「どっちもおしゃべりだなぁ~…」

小さな溜め息を一つ、つく。何となく商事には話しそうな気がしていたが、まさかこんなに早くだとは。分かって聞いているのだろうか。先程の一言目から考えて、分かっていないようだけれど。
先得るが英義の方を見ると、ぱっと視線をそらした。不機嫌そうな声が聞こえる。

「本当ならその人んとこ行けよ…」
「ん?だから来てるじゃない」
「は…」

文句を言おうとしたその口を、思わず閉じてしまった。先得るの目が、とても、真剣だったから。

「俺が好きなのは、英義だよ」

嘘だ、とも言えなかった。いつもの先得ると違うのは、嫌でも分かったからだ。
ブランコから降りた先得るが自分に口づけても、英義は抵抗しなかった。舌と舌が絡まり、英義から力が抜けていく。キスを終え息を整えた英義は、力なく聞いた。

「嘘、つくな…男が男なんて…」
「英義は、嘘つく人が嫌いなんだよね?」
「……?」
「英義が言うように、男が男に…って思われるのに、更に英義の嫌いな嘘なんかつかないよ?好きなんだから」

よしよし、と頭を撫でられても、嫌ではなかった。むしろ安心している自分がいて、英義はうつ向いた。
ふと、首回りが暖かくなる。見覚えのあるマフラーが視界に入り、驚いて顔をあげたところをまたキスされた。

「寒そうだったから、ね。あげるよ、それ」

そういえば、コートもマフラーも置いてきたままだ。どれだけ身の回りに構っていられなかったのだろうかと、英義はますますうつ向いてしまう。砂利を踏む音が聞こえた。少しずつ、遠くなっていく。
視界に足をとらえた。どうやら先得るは、このまま帰ってしまうらしい。
気持ちがぐるぐる回る。自分でも整理がつかず、

「先得るっ…」

名前を呼んで、立ち上がるだけで精一杯だった。振り返る先得るは、やはり苦手な笑みを浮かべて、手を振る。

「また明日」

先得るの背中を見送った英義は、彼とは逆に歩き出した。何となく肌寒い気がしたが、マフラーに顔を埋めるとそれは気にならなくなった。
明日、会って普通の顔を出来るだろうか。商事はともかく、耕平は誤魔化せそうにないけれど。
夜の喧騒の中に戻りながら、英義は少し、笑みをこぼした。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

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