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オカ板師匠シリーズ 弟分×師匠

今更師匠シリーズにときめき悶えたので投下。棚初心者+携帯からなので不作法などあったら申し訳ない…
|<PLAY ピッ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

思い出すのはいつだって夜だ。師匠は昼が似合わなかった。もっと言えば、単純に夜の似合う男だった。
三回生の春の夜だ。珍しく酔った師匠を抱えて、俺は必死にベンチまで歩いた。いつもの大学近くの公園だった。桜は風もないのに阿呆のように散りさざめいて、その夜鳩はいなかった。サークル仲間の喧騒が遠い。
もう帰りましょうと俺は言った。春とはいえ夜はまだ冷える。屋外ならなおさらで、しかし師匠はごきげんに笑うだけだった。俺は呆れてため息をついた。
「いいよ、ここで寝るから」
にこにこしながらぼけたことを言う。やはり寄っている、口調がどこかたどたどしい。
「馬鹿言わんでください、風邪ひきますよ、それか死にます」
やや語気強くたしなめると、ふふっと笑って、師匠が呟く。
「死ぬよ。たぶん、そのうち」

いつもの調子で流すことができず、俺は少し戸惑った。多分その前の春、同じ場所で交わされた会話を思い出したからだ。
「悪霊になりますか」
「なるね、どえらいのに。お前どうする」
「どうするったって」

アルコールに澱んだ頭で考える。自分はそんなに大層な人間でもない、お祓いや除霊ができるでもない。
でも、師匠が死んで、悪霊になって、どこにもいけなくなるのは、困ります。
やや困ったような口調で答えた俺に対し、師匠は喉の奥だけで笑った。楽しそうに、悪童のように。
「じゃあ、僕が、死んで、人じゃなくなって、どうしようもなくなって、そしたら、お前が、僕を、食えばいいな。
なあ、お前が、食うんだぜ。僕がなくなるまで、最後、まで」

師匠は言って、笑って、それから、俺の肩口に頭を預けて、息をついた。
明日をまちわびる子供のような笑みだった。やわらかく手と手を絡めて、やくそく、な、と、ささやく吐息が春に散る。
鳩じゃあるまいし、と俺は笑った。それから狂いながら散る桜と夜を見た。
師匠の背中が規則正しく上下して、それはとてもおだやかだった。

俺はただの馬鹿だったのだと今にして思う。
あのとき絡められた手を、どうやって離さないでいるか、逃がさないでいるか、ただそれだけを考えているべきだったのに。

でも俺はただの馬鹿だったので、あの手は離され、俺はこうして一人でいる。
俺が馬鹿でも一人でも、春は来るし、桜は散るし、鳩の目は丸い。
あれから何度も春が来て、俺は何度もあの公園を通り、そのたびに目であのベンチを追う。
けれど古びたベンチはいつだって空だ。あのひとがどこかで笑っていても、ひとでなくなって静かにここにいたとしても、もう俺にはわからない。
だから俺は鳩を見る。精一杯の憧憬を込めて。
けれどもしあの夜に帰れるなら、もう俺は鳩などうらやまない。
らちもない過去の仮定を抱いて、閉じた瞼の闇の向こう、確かにあの夜の彼の笑み。俺は唇だけでつぶやいた。

ずっとそばにいてくださいよ。

□STOP ピッ◇⊂(・∀・ )
サイショカラオワッテタフタリ
お目汚し失礼致しました!

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