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君は美しい103 パラレル

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )某スレ用に書いたけどあぶれたのでこっちに投下

新しく某国の僧長に選ばれたのは、メールデールだった。
先の僧長は祈祷中に倒れて以来、長い間床に伏していた。
老いた彼が自分の後継者として指名したのは、
物腰が柔らかく、美しい長髪を持った青年であった。

「ハプト、何を拗ねている」
メールデールは、言葉少なに書物に目を走らせている学友に尋ねた。
「拗ねてなんていない」
「しかし君は原書など読めないだろう」
ハプトが読んでいるのは、未だ翻訳されていない異国の本だ。
「あぁ、どうせ俺はあんたほど優秀じゃないさ」
ハプトは本を放り投げた。
読んでいるふりをしてメールデールとの会話を避けても、
賢明な彼を騙すことはできないと悟ったのだ。
「こんな青二才が選ばれたのが気に食わないか」
メールデールの言葉は真実を掠ってはいたが、正確ではない。
「馬鹿を言うな。あんたの努力は俺が一番知っている」
美しいメールデール、優しいメールデール、
愛しい俺のメールデール。
一体いつから焦がれはじめたのか、ハプトにはもう思い出せなかった。

「あんたが僧長になったら、学園の女がたくさん泣くな」
ハプトは自分の気持ちをすりかえ、当てつけの科白を投げつけた。
「それは君が故郷に帰っても同じことだろう」
メールデールは穏やかに返し、さらに続ける。
「一人の女性を愛せなくても、私は世界を愛せる」
「世界の恋人か」
「そうだ」
世界の幸福を祈り、平和に尽くす。
しかし、だからこそたった一人を愛すことは許されない。
僧長とはそういった存在だった。
「あんたならきっと立派な僧長になるよ」
ハプトが言うと、メールデールはやっと微笑んだ。
「ありがとう。私は君がいる世界を守るよ」
そう言って、メールデールは窓枠に止まった小鳥を指に乗せた。
ハプトは何も聞けなかった。
自分に言われたのか、小鳥に話かけたのかもわからなかった。
それを確かめたら、自分だけを愛してほしいと告げてしまいそうだった。

一週間後、新しい僧長の誕生を祝う式が行われた。
若く美しい僧長は人々に歓迎され、盛大な式になったが、
ハプトは一人図書室にこもりメールデールのことを考えていた。
――君がいる世界を守るよ。
その言葉が胸に深く沈んで、ハプトをどうしようもなく幸せで
どうしようもなく哀しい気分にするのだった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

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