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笑う犬の冒険 てるとたいぞう 「楽園」

照退つづきです。これまでレスくれた姐さん方、ほんとうにありがとう。
さるらない程度の文量で書きました。って言ってるそばからさるったらゴメン。
書いてて気づいたんだけど、ここまでの登場人物が全員Tのつく名前だった。(朱龍は私の独自キャラなんで省く)
多分偶然なんだろうけど、全員て。おかげでやたらとキーボードのTを叩いてる気がします。
サブタイはヒライケソの曲から。前置き長っ。

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

ざわめきの中遠くから、泣きながら歌っているようなラブソングが聴こえる。
さびの部分でつい、頭の中で歌い出しそうになって、退蔵は注意力が欠けてきているのに気付いた。
そんな場合じゃなかった。目の前の男は最初から、明らかにそわそわと落ち着きがない。
歓楽街の路上で、麻薬の売人が一般人に薬を売り捌いており、どうやら山根組がバックについているらしかった。
それを調べる為、照と『退史郎』とで飲み屋や風俗店を中心に聞き込みをしていた。
男はキャバクラの呼び込みだった。けたたましい音とネオンの洪水の中で、頬のこけた茶髪の男は、聞かれた事に短く返答しながらも、2人と全く視線を合わせようとしなかった。
照が目で退蔵にチラッと合図する。退蔵もそれとわからない程度にかすかに頷いた。
照はやんわりと穏やかな言い方で、男の顔を覗き込んだ。
「念のため、所持品検査させてもらえるかな?時間とらせないから」
その途端、男は脱兎の如く駆け出した。照はすぐに反応した。地面を蹴って駆け出しながら叫ぶ。
「逃げた!退史郎!」
退蔵も全速力で走り出す。照は無線で応援を要請しながら追っている。速い。
冷たい夜風を裂いて、退蔵も後ろから追った。
すぐに袋小路に入った。男は地理に詳しくなかったらしい。酔客やホステスが、異変を感じ取って避けながらも遠巻きに様子を窺っている。
追い詰められた男は、右手にダガーナイフを持っていた。荒く息を吐いて、ナイフを持った腕が上下していた。

「…ナイフを離しなさい」
照は落ち着いていた。言い聞かせるように男に言って、ゆっくり右手を差し出した。
次の瞬間男は、ナイフを持った右手を大きく振り上げると大声でわめいた。そのまま照に向かってくる。
周りの野次馬が悲鳴を上げる。
「みんな下がって!」
叫ぶといきなり照は、素手のままで男の懐に飛び込んだ。
「先輩!!」
予想しなかった照の動きに退蔵は思わず走り寄る。
男が飛びかかる。照は外側に男をかわすと左足で踏み込んで、男の手に掌抵を叩き込んだ。
カシャンと音がしたと思ったら、あっさりナイフは地面に落ちていた。それを照は足で蹴って遠くへ飛ばす。
次の瞬間、男は地面に打ち倒されていた。
「退史郎!」
照の声に退蔵は、素早く手錠を男の手に嵌めた。追いついた応援の警官たちが、さっと取り囲む。
「確保」
照の声はそれほど大きくなかったが、静まり返った夜の空気の中で凛として通った。
制服の警官たちが男を取り押さえる中、その場から退蔵は後ずさって離れた。
同じように一歩離れた照の姿を見ると、左の耳から血が出ている。
「先輩、耳…」
ハンカチを取り出しながら駆け寄ると、照は無造作に自分の左手で耳をこすって、指についた血を見て呟いた。
「かすった」
聞いた瞬間、退蔵の背筋がスーッと冷えた。冷たい汗が額に浮かぶ。
手が細かく震えだすのを、両手を組んで止めようとした。その様子を見て照はチラッと退蔵を睨みつけた。
「何動揺してるんだ。しっかりしろ」
すぐに背を向けると、パトカーに乗り込んだ。警官が次に、逮捕した男を乗せた。
その次に乗り込みながら、退蔵は手の震えを止められないでいた。

署に着くと、照はそのまま取調室に入ろうとする。コートの肩には少し血が付いていた。
「先輩、手当てしないと」
後ろから肩に手を置いて止めようとすると、照はなんでもないように振り向いた。
「もう出血は止まってる」
「だめです、ちゃんと医務室行ってください。オレも付いていきますから」
近くに立っていた田所が、その声に振り向くと小走りに駆け寄って来た。
「負傷してんなら手当しに行けよ。こっちは引き継いでおくから」
「…悪い。じゃ、後頼む」
照は田所に頷くと、すんなり取調室から離れて歩き出した。退蔵も後ろから付いて歩く。
照から無人のエレベーターに乗り込む。退蔵は後から入った。
扉が閉まると同時に、いきなり退蔵は照の両肩を掴むと左耳に唇を寄せた。
傷口を舌を這わせるように舐める。照の体がすくんだ。
かすかに血の味がした。前髪が触れるほど近くから顔を覗き込んで、退蔵は口を開いた。
「さっきは…」
照は大きく目を見開いて、動けなくなっている。
退蔵はもう一度左耳に唇を寄せると、熱い息を吹き込みながら囁いた。
「…寿命が縮まりましたよ…」
それから突き放すように照を壁に押し付けた。照は目を見開いたまま、力が抜けたように見つめ返していた。
ポーンと音がしてエレベーターが停まる。扉が開いた途端、退蔵は照の腕を掴んで、引っ張るように歩き出した。
「ちょっと…退史郎…」
途惑いながら照も、退蔵の足に合わせて早足になっている。
医務室の扉を開けると、そこにいた女性の監察医が照に気付いて笑いかけてきた。
「あら、照さん。…出血?」
救急箱を取り出すのを見ながら、退蔵は扉の脇に立ったまま、無意識にタバコに火を点けた。
すぐに監察医が退蔵に振り向く。
「ここは禁煙ですよ」
「…すいません」
退蔵は一礼すると、消さずにそのままタバコをくわえて外に出た。

医務室を出た退蔵は、携帯で朱龍に連絡をとった。
さっき逮捕した男は覚醒剤を所持していた。山根組の末端の売人らしい。その上に三合会が関わっている事までうっすら見当がついたが、男はまだ半落ちの状態で、全てを話してはいない。
退蔵は、照が関わった内部事情はすべて積極的に朱龍に報告しようとしていた。
写真を見させられてから、退蔵は憶病になっていた。出来るだけ照から情報を引き出していると見えるように、躍起になっていた。
『早い情報でありがたいよ』
朱龍は電話の向こうで、麻雀の牌をジャラジャラいわせながら言った。
『ソレは下っ端の雑魚だが、そのうち口を割れば、最後にウチの周の名前が出てくるかもしれない』
周は朱龍が信頼している人間の一人だ。今もこの場で共に、麻雀に興じているらしい。
『周の名義で借りているアパートに、今6千万置いてある。強奪した金の残りだが、あれは元々足が付きそうだった。逮捕された男が周の名前を出せば、そこに金があるのがついでにバレるかもしれないな』
「金をどこかへ動かさなきゃいけませんよね」
『金はそれほどでもないが、それよりもっと移動させなければいけない物がある』
電話の向こうから、中国語で笑いあう声が聞こえた。朱龍は低い声で言った。
『バンブルビーズと揺頭がごっそり置いてある。そこにあるのは6億8千万になる』
覚醒剤とMDMAだ。6億8千万。退蔵の心臓が跳ねた。動揺が走るのを悟られないよう笑いながら言った。
「凄い宝島ですね」
『言うなよ?』
朱龍の声が電話口からずしりと響いた。
『オマエ言いふらすなよ?田所も知らないことだからな』
「言いませんよ」
退蔵は背筋を伸ばした。電話だから見えないにしても、笑顔で喋り続ける。
「それにしても凄い金額ですね。全部そこに保管されてるんですか」
『これは一部だ。他に隠し場所はいくつかある』
「………」
『オマエは今後状況が変わるたび報告してくれ。こっちではクスリをまず運ぶ。金はかさばるから、そうだな、1千万でいい』
退蔵は一言も聞き洩らさないように、気を張り詰めた。
『5千万はいっそ置いていってもいいな。そうだ、オマエが半分くらい、まあ2,3千万とっとけよ。残りは職場に持ち帰れ。オマエにも立場ってもんがあるだろう』
退蔵は携帯を握り締めながら、息をつめていた。

電話を切るなり、退蔵は田所の姿を探した。同僚に聞くと、照と喫煙コーナーにいると言う。
照のいる所では話せない。自然とまた離れて2人を観察する形になってしまった。
2人は紙コップでコーヒーを飲んでいた。照は耳にガーゼを貼っている。コーヒー片手に田所に話している。
「あれから進展あった?」
「無い無い。あんなチャラけたヤツなのに、なかなか口割んないんだよな」
2人の様子はくつろいでいて、その事に退蔵はなぜか胸が痛くなった。
田所と一緒にいる時の照は、どこがどうとはっきり指摘出来ないが、なんだかくつろいで安心している空気を醸し出していた。
少なくとも『退史郎』といる時には見せない顔つきだ。田所もまた、和んだ雰囲気で照を見ている。
それを見ているのは、少しきつかった。
田所は上を向いてコーヒーを飲み干すと、
「そろそろオレ行くわ。お先」
と紙コップをゴミ箱に捨てた。喫煙コーナーを出る前に、思いついたように照を振り返る。
「おまえさ、ケガとかほんと気をつけろよ」
そう言って、自分の左耳を引っ張って見せた。
「んー。わかった」
照はコーヒーを飲みながら、のんびり答えた。
廊下に出てきた田所に、退蔵は今来たように歩きながら近寄る。田所は足を止めた。
「ああ、おまえか」
退蔵は緊張した目で田所を見た。
「使ってない取調室ありますよね、あそこ使えますか?」
「使えるけど、どうした?」
「大事な話があります。他の人に聞かれちゃまずいです」
声を潜めた退蔵の真剣な表情を、田所は訝しげに見ていた。

「6億8千万…」
田所が呆然と口を開いた。
「それは…でかいな…6億8千万…」
下を向いて顎を触りながら、取調室の中をうろうろ歩きだした。退蔵は勢い込んで、机に手をつきながら田所を見た。
「田所さん、これいけるんじゃないですか?」
「なんだ?」
「これだけでかけりゃ、しょっぴく事が出来るんじゃ?」
身を乗り出して期待した退蔵を田所はぽかんとして見返すと、小馬鹿にしたように息を吐いた。
「バカか。誰しょっぴくんだ。朱龍はおろか、その下のヤツも捕まえらんねえよ」
「え?だって…」
「朱龍が直におまえに言ったんだろ?今から行ったってもうクスリなんかねえよ。6億8千万っつったら、どれくらいだ?8から12キロってとこか。証拠だって残さねえよ」
「……」
「それこそおまえを試してんだろ。そんな事にも気付かないのか?今、のこのこ踏み込めば裏切ったのはおまえだってモロバレだぞ」
退蔵は額に手を当てて、自分の中で整理しようとした。オレは突っ走りそうだったのか?
「…最近のおまえは本当に、退史郎という別の人間になったみたいに見えてたけどさ」
田所は口の片側だけを上げて笑った。
「おまえ甘いよ。まだまだ全然甘い」
退蔵は自分の髪をくしゃっと掴んで目をそらした。飛びつこうとしてた。こんな事早く終わらせてしまいたいあまりに。
組織を壊滅させる。朱龍を逮捕する。それで全て終わりになるんだ。早く終わらせてしまいたかった。
壁の掃除。
突然、組織に入って3日目にさせられた壁の掃除を、脈絡も無く思い出した。
機械的に、何も考えずにモップで拭いた真っ赤な壁。
バケツの水が、何度変えても赤く濁った。
もし、先輩が。
そう考えついただけで一瞬何かがサブリミナルのようによぎって、慌てて想像の回線を遮断した。
何も想像したくない、今のこの片鱗だけで胃が捩じれそうだ。
早く、早く終わらせてしまいたい。退蔵は大きく息を吐いた。

逮捕した男はなかなか口を割らない。取り調べで周の名前が出るのには、まだ時間がかかりそうだった。
覆面車のワゴンで、照と『退史郎』は麻薬の売人が現れるという裏通りを張り込んでいた。
青空駐車場の端に車を停めてから、まだ10分しか経っていない。運転席の退蔵は、助手席の照に声をかけずにタバコに火を点けた。
照はチラッとタバコに目をやると、またフロントガラスに目を向けた。
退蔵の時は、タバコを吸う時には必ず一言声をかけていた。多分それを思い出している。退蔵は自分の煙に目を細めて、上部だけ細く窓を開けた。
照の右手が、座席に投げ出されていた。退蔵はぼんやりそれを見た後、無造作にその手を握った。
指先が冷たい。あっためてあげる。
「…なんで、手、握るんだよ…」
照は目を伏せたまま、うろたえたように口ごもった。退蔵は照の顔を見て、窓の上部に向けて煙を吹き出してから笑った。
「手つないでちゃだめですか?」
「…変だろ。男どうしで…」
「そりゃそうだ」
右腕を伸ばして灰皿に灰を落としながら、ずっと退蔵は笑顔でいた。目を合わせてこない照の顔を覗き込む。
「それ、一般論ですよね」
「………」
「兄貴のこと、すきだったんでしょ?」
恋人繋ぎに指を絡め直した。照の指が緊張している。退蔵は照の顔を見た。
「兄貴にこうしてもらいたかった?」
「………」
一瞬、照の目に悲痛な色が浮かんだ。
傷ついた顔をしてる。踏みにじられた道端の花みたいだ。
退蔵の中で奇妙な感情が混ざり合った。2つの感情。
そっと庇ってやりたい気持ち。それと同時に、いっそズタズタに踏みつけてしまいたい衝動。
何故こんな気持ちになるのか、自分でもよくわからない。
次にかけるべき言葉が見つからないまま、ただ、指の感覚にだけ集中していた。
指先から伝わる体温。柔らかい感触。拳銃を持つ手とは思えない。

照が顔を上げて、初めて退蔵の顔を見てきた。
「…手を離せよ。気が散るだろ」
「イヤです。オレはちゃんと見てます」
「………」
照が指をほどこうとするたび、ぎゅっと掴んでいた。
結局最後まで売人は現れなかった。その間ずっと、退蔵は指を離さなかった。

「今日か明日あたり、周のアパートがわれると思う。おまえ行くんだろ?」
田所は足を組んで、椅子に背をもたれさせて言った。
「2千万くらい取っとけって言われたんだっけ?派手な使い方すんなよ?」
「オレが持ち帰れって事ですか?」
「当然だろ、全額署にお持ち帰りじゃ朱龍に怪しまれるだろが。言われた分はもらっとけよ。アリだよ」
「2千万なんて大金…」
「車とかいきなり買うなよ?バレないよう地味に使え」
田所は指のさかむけを剥がしながら喋っていた。
「一番人気のない馬に大枚はたいて、オッズを逆転させてから全部すっちまうっていうのも、ある意味爽快だぞ。スッキリする」
「…経験済みですか?」
横目で見ながら聞いた退蔵に、田所は笑って見返してきたが、それは疲れた顔だった。
「今回これだけでかいのを見送るのも辛いけどさ、おまえが自力で在庫を見つけられたら、その時は一斉検挙出来るかもな。まあ今は仕方ないよ。『3千万ありました』で十分だろ」
これを知ったら先輩はなんて思うだろう。田所への厭味ではなく、苦い気持ちで退蔵はうなだれた。6億8千万円分のクスリがこれで流通させられる。
田所は慰めるように退蔵の腕をポンと叩くと、
「6億8千万かあー…」
と、もう一度他人事のように呟いて、大きく背伸びをした。

田所と別れた退蔵が廊下の角を曲がると、遠くに小動物のようにうずくまっている背中があった。
照が何かを拾い集めていた。ただし、その隣にも一緒に拾い集めている姿があった。
千夏だ。2人で散らばった用紙を集めている。
退蔵はそのまま後ずさって、廊下の角まで戻って様子を窺った。2人の声が聞こえる。
「はい、どうぞ」
「悪い。ありがと」
「照さんて時々こういうの、ありますよね?」
2人でちょっと笑っているような感じがあった。これはなんでもない事だ。2人は仕事仲間に過ぎない。
なのに2人でいるのを見ると落ち着かない気持ちになる。
耳をすませている自分に嫌気が差してきた時、2人がそれぞれに別れて歩き出す気配がした。
1人はそのまま向こうへ。1人は退蔵のいる方向へ。カツカツという音から、ヒールの靴で近づいてくるのだとわかる。
人がいないのをいい事に、退蔵はもう少し後ずさって待った。
角から現れたのは千夏だった。退蔵は普通に千夏の方へ歩き出した。
すれ違った瞬間、退蔵は千夏を振り返って声をかけた。
「その香水」
「えっ?」
千夏が足を止めて振り返る。退蔵は出来るだけ感じ良く見えるように笑いながら言った。
「凄くいいね。幸せそうな香りがする」
千夏はびっくりしたように退蔵を見て、頬を赤らめると、
「…そうかな。…ありがとう」
と嬉しそうにして、きれいに微笑んだ。退蔵がにっこりすると、はにかんで軽く頭を下げ、速い足取りで歩いて行った。
どぎまぎしているような足取り。
それを妙に冷静な気持ちで観察しながら、退蔵は考えていた。
なんだ。簡単なことだ。最初からこうしとけばよかった。
これでこの2人を見て、ざわつく事もなくなるかもしれない。

その日の夕方、キャバクラの呼び込みの男が周の名前を出してきた。
取り調べを進めるのは田所だった。じわじわと強奪した金の話に近づいていた。
退蔵は照を探していた。デスクワークが山ほどあって、その処理に追われていると聞いていた。
組織犯罪対策課は明かりが消えていたが、照の机にだけ電気が点いている。
近づくと、照は机に突っ伏して眠っていた。
規則正しい寝息が聞こえる。ライトが当たって、頬が白く照らされている。
退蔵はそっと、椅子にかけてあった照のコートを肩に掛けようとした。
『退史郎』ではなく『退蔵』の頃、張り込み中眠ってしまった照に毛布を掛けた時のことを思い出した。
今から考えるとあの頃は、贅沢な時間を過ごしていたんだと気付く。仕事は過酷でも、楽園のように幸せだった。
あの楽園はもう、消えてしまったんだろうか。
コートを掛けると手を離す間もなく、照が身じろぎして目を開けた。
起こしてしまった。それもあの時と同じだ。
そう思っていたら、照は退蔵の顔を見上げて、やけに明るい表情で呼びかけた。
「退蔵」
また呼び間違えた。これで3回目。
退蔵はごく普通にそう思っただけだったが、照は違った。
明るい表情がスッと消えた。ゆっくり2回瞬きをした。
だんだん気付いていくようだった。自分が間違えたという事に。
照はゆるく頭を振ると、何も言わずに席を立って、そのまま部屋の外へと出て行った。
照のコートを掴んで退蔵も後を追う。
「どうしたんですか、先輩」
照はどんどん歩いて行くと、非常口から外へ出た。退蔵も後からついて歩く。
「先輩」
燃え切らないまま夕日が沈んだ後の、冷たく蒼い曇り空の下に、照がぽつんと立っていた。
コートを抱えたまま、退蔵は大股で近づいて行った。
「風邪ひきますよ」
雲が闇を連れてくる。冷え切った空気の中で、照の肩はひどく寒そうに見えた。

コートを広げた退蔵に、照は後ずさって言った。
「いいんだ。頭冷やしたいから」
退蔵はコートを照に押し付けた。
「だめです、着て下さい」
照はコートを受け取ったが、抱えたまま着ようとしない。
空から小さく、何かが光りながら落ちてくる。ひとつ。またひとつ。
冷たい雨か。今年初めての雪か。
「…兄貴の夢、見てたんですか」
退蔵は少し猫背になって、照の顔を覗き込んだ。
照は黙って立ちつくしている。風で前髪が震えていた。
「オレでよかったら、兄貴の代わりになりますよ」
退蔵は背筋を伸ばすと、少し横柄に言ってみた。また少しだけ、意地悪な気持ちになっていた。
「いや、いいんだ…わかってるから…」
照はゆっくり瞬きしながら言葉を探していた。前髪が風で煽られる。
目の中で、強く、弱く、光が揺れた。照の言葉が冷たい空気の中に落ちた。
「退蔵は、死んだんだ…」
――驚くほど静かに、涙がこぼれおちた。
消えそうにかすれた声は、実際突風にかき消された。
「もう、どこにもいない…」
考えるより先に、退蔵は腕を伸ばしていた。照の頭と背中を抱えて、力づくで抱き寄せる。
そのままきつく抱き締めた。腕にぎゅっと、痛いくらい力を込めた。
オレはここにいる、ここにいる。
きつく抱き締めながら、退蔵の目からも涙が流れ落ちた。

つづく

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!

ほんとにさるった!最後の最後に!言霊!?その上ナンバリング最初0にしたけど1だし。スイマセン。
深刻な展開にする一方なんで、独自設定だらけになってるけど、付け焼刃の知識なんでいろいろとアレだとは思います。
至らない点が多いかと思いますが、生暖かく見てやって下さい。(あまりに変なとこがあったらコソーリ教えてください)

辻褄やセリフを合わせる為に、ちょくちょく元ネタの動画を見に行くのですが、見るたびに
ちょwあんたらwwアホスwwOTLwwwてなる。
(それは言わない約束)

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