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原作バチスタシリーズ 田ロ×兵籐

〈注意〉
完全原作ベース、田ロは42歳、兵籐君(ドラマ未登場)過去捏造
イノ/セン/ト/ゲリラ微妙にネタバレ

ご了承頂けましたらドゾ、お手柔らかに。携帯から長文失礼します

|> PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ ) ジサクジエンガオオクリシマ-ス!

不定/愁訴/外来看護師待機室、通称「奥の間」。
深夜の闇に塗り潰された狭い空間は淫猥な水音と特有の熱を含んだ空気に満たされている。
その中心のソファに座り、楼主は跪いて甲斐甲斐しく奉仕を続ける夜鷹の髪を一房梳いた。
これで行灯の薄明かりでもあればさぞかし雰囲気も盛り上がるだろうなあ、などとまるで
他人事のように考えながら柔らかい粘膜の刺激を甘受していると、ふいに自分を見上げる
鷹の目、もとい鳶(トンビ)の視線に気付く。そうそう、夜鷹でなくて夜鳶だ。
「鷹」の響きで連想された端正な横顔が記憶ファイルから呼び出されて、田ロは僅かな
後ろめたさを覚えつつ浮かんだ妄想に苦笑した。ないない。これはない。
ついでにそのせいで、鳶の献身の成果は三割程度減衰してしまったようだ。

ずるり、という擬態語がぴったりの緩慢な動作で、覇気を失くした田ロの雄を口腔から解放し
鳶は露骨にため息を吐いて顔をしかめる。
「またですか!何度目ですか!?こんな時くらい雑念を振り払う努力をしてみるとか
そういう相手に対する配慮みたいなものは欠片もお待ちでないんですか」
「うーん…あんまり無い、かな」
正確には相手によるけどね、とはまあ言わないでおく。
とりあえず追加でとびきり満面の曖昧な笑顔を返しておいた。あ、見えないか。
夜鳶、こと兵籐勉は首を振った。誠に残念です、というアテレコが聞こえた気がした。
ちなみに兵籐の位置からは逆光になるが、田ロには非常灯の微かな光で表情くらいは読み取れる。
眉を寄せて唇を尖らせ、上目遣いに見上げてくる兵籐。
その表情は田ロの脳内で約1年前の外来受診者、笹木アツシ君(5歳)のそれと一致した。
崇拝するシト/ロン星人の心情を全く解さない大人に対してアツシ君が見せた、不満と失望と
諦観の織り交ざった一見複雑だが、実は至極単純な抗議。
つまり「なんで僕の言うこと分かってくれないの?」
田ロが困ったなあ、と右側へ頭を倒せばつられて左へ首を傾げる仕種までそっくりだ。
相変わらずの感情シースルーぶり。嗚呼まったくカワイイヤツめ。

『あれでなかなか田ロ先生に懐いているんですよ』
いつぞやの富士原看護師の言葉が脳内再生される。あの時は本気で勘弁してくれと
思ったものだが、どうも最近、荒れ荒んだ環境に身を晒し過ぎたせいなのか、その事実が
じんわり心に優しい。あの魑魅魍魎どもに比べたら、兵籐などまるで愛らしい
子猫のようだ。
そこまで考えて、田ロは自分の発想に寒イボを立てた。待て待て、冷静になれ。
少なくともこんな三十路も越えたクソ生意気な男の事を、そんな風に愛でる趣向はない、筈。
「…分かりました、とりあえずこの溜りに溜まった使用期限切れの精液をこの場で
排出する気があるのかないのか、それだけ教えて頂けますかね」
田ロの沈黙に業を煮やした兵籐が、憮然とした口調で尋ねてくる。
あれ?なんで俺は責められるんだろう。高科院長様が通常業務を逸脱した無理難題ばかり
押し付けてくるもんだから、ここ数ヶ月まともに手淫する暇もない、という下卑た会話で
何がどうなったか田ロのベルトに手を掛けてきたのは、確か兵籐の独断だったと思ったが。

シンキングタイムの間にもゆるゆると先端を弄ぶ兵籐に、内心呆れる。
「ない」なんて答えを選択させる気など毛頭無いくせに。あまつさえ冷静に弁えている
ふりをしながら、「ある」という答えを期待しているくせに。ほらまた透けてるぞ、兵籐クン。

自分で言い出したにも関わらず、先に根負けしたのは兵籐の方だった。
「…っ、おい」
田ロの抗議を無視して萎えかけた性器を再び咥えると、先ほどより幾分性急な動きで
根本から擦り上げ、確に弱い部分ばかりを狙ってくる。
これは巧い。堪らず素直にそう思った。そして、手慣れているな、とも。
そう考えた途端、なんだか意味不明に腹が立ってきた。
本当に意味が分からない。どうして、何が気に入らないのだろう。

「っ、なあ、これって諜報手段か、それとも籠絡手段か、どっち?」
自分でも思いがけない質問が田ロの口から飛び出した。兵籐は一瞬その言葉の意味を
計りかねたようだが、やがて息継ぎの合間に短く答える。
「場合によりけり、ですね」
どちらにも応用可能という事か。つまりそれほど多用していた訳か、こいつ。
「ふうん…、でもあんまり役には立たなかったみたいだね」
声に出してから、田ロは自分の台詞に驚いた。何を言ってるんだ俺は。というかこんな
切り返しをするキャラクターだったか?俺は。

完璧にやらかした、と確信したのは、茫然と顔を上げた兵籐の表情を見た瞬間だった。
頭から血の気が引いて、胸の奥がずきん、と苦しくなる。
「…どういう、意味、ですか」
質しながらも何を言われたのか理解している。兵籐は決して頭が悪い人間ではない。
出世の為にここまでしてきた結果が帝/華/大学医局内抗争での完全敗北、すなわち惨めな
都落ちという結果なのか、と嘲笑されたのだ。田ロの言葉は、確実に兵籐の古傷を抉り
焼け火箸で掻き回した挙げ句、更にそこへ大量の塩を塗り込めるという暴虐行為でもって
彼の心を破砕した。下腹に添えられていた細い指が、隠しようもなく小刻みに震えている。
田ロに向けられた黒硝子の眼が、怒りと、それ以上の絶望に濡れていた。

「違っ、すまない、違う…そんな事が言いたかった訳じゃないんだ」
じゃあ何だ。田ロ自身これが見苦しい取り繕いの言い訳でしかない事を自覚している。
「…いいです、別に、もういいです」
すみませんでした。小さく呟いて立ち上がろうとする兵籐の肩を掴んで無理やり向き合う。
「聞けって!兵籐、本当に俺はお前を貶めたかった訳じゃなくて…」
その勢いに気圧されて兵籐がびくりと動きを止めた。そして、堰を切ったように叫ぶ。
「じゃあ何だよ!馬鹿にして…軽蔑してるんでしょう!?そうですよ、僕は負け犬だ!
帝/華で無様を晒して追い立てられて、東/城でも田ロさんに見事にやり込められた…っ」
兵籐、と小さく田ロの唇が震えた。声にはならなかった。激昂する兵籐の肩に置いた腕に
生温い水が降る。嗚咽を漏らすでもなく、兵籐はただ涙を流す。

「悪かった、どうかしてたよ」
うわごとのように呟いて、放心状態の兵籐を抱きしめる。抵抗はなかった。
やや間をおいて、兵籐がおずおずと田ロの背に腕を回した。鼻を啜って、ぽつり、と言う。
「いくら出世の為だって、こんな事しません、そこまで落ちぶれちゃいない」
それでも、帝/華医大で兵籐は誰かに体を開いていた。それは事実だろう。
ただ、それは医局内抗争に勝つ為の画策などではなかった。田ロはそう推測する。
なんて純粋な男だと思った。揶揄でも何でもない、感動すら覚えた。
どうやら本当に自分は、ここ暫く関わっていた淀んだ偏狭社会の毒気にあてられて
どこかおかしくなっていたらしい。漸く、気付いた。

「どうも僕は、馬鹿正直に人を信じすぎる…らしいです」
兵籐自身の言葉ではない。おそらくは心無く投げ付けられた侮蔑の言葉。そして、的を得た
正しい指摘だ。それはかつて実際に兵籐を傀儡にした経験を持つ田ロが一番よく知っている。
情報戦略でもって院内政治という戦場を生き抜こうとする人間にとって、致命的な脆さを
兵籐は無意識に晒している。しかし、だからこそ彼は東/城医大を居場所とする事が出来た。
田ロはそう思っている。廊下トンビと揶揄されても、上役からの評判は決して芳しくなくとも
彼を「嫌い」だと捨てる声は聞いた事がない。皆、結局最後には「しょうがないなぁ」と笑って許す。

「馬鹿正直の何が悪い」
田ロは兵籐の頭をポンポンと撫でながら言う。
「これでお前が猜疑心の塊みたいなヤツだったら、それこそただね糞野郎だろ」
「…それ、フォローのつもりですか」
ずび、と情けない音を立ててでろでろの顔を拭いながら、兵籐が不満げにぼやいた。
「結論補正じゃなくて、前提事実だな」
意味が分かりません。的確な突っ込みに田ロは苦笑する。誰ぞの屁理屈病が感染した。
「まぁつまり何だろう、そんな兵籐クンが俺は嫌いじゃないよと…え?ちょ、どうした!?」
我ながら完璧な帰結だと思っていたら、兵籐がまたぼろぼろ目から水を溢していた。
何か失敗したか…?冷や汗をかきながら田ロは何とか宥めすかそうと試みる。だがどうしてか
兵籐はその状態でニヤけていた。正確には笑っているつもりが顔面筋のコントロールが効かず
眉は下がったまま、口角だけが引き攣っている。
田ロは訳が分からず兵籐の顔を覗き込んだ。あ、と思う。

既視感。身に覚えのある錯覚。いや、錯覚ではないのかもしれない。
おおよそ2年前、田ロの性的アイデンティティを揺るがしたあの、期待にきらきら縁取られた瞳が
じっとこちらを窺っている。ため息を吐いて、深呼吸をひとつ。
田ロはタカを括った。あの時は間違いなく、ただの気の迷いだった筈なのだが。

「……よく聞こえませんでした」
何かこう色々なものを含んで田ロがやっと吐き出した台詞は、そうして兵籐に一蹴された。
この野郎。教授室の分厚い扉越しに中の会話を完璧に傍受するご自慢の耳はどうした。
冗談めかして尋ねると、田ロの滑舌を非難する答えが返ってきた。…ほう。
小さく感嘆の声をあげると、危機回避センサーを反応させた兵籐が反射的に身を引こうと
腕の中でもがいた。小煩い鳶はさっさと黙らせる事にする。
「う…ぐぅ…っ」
色気もクソもない声が兵籐の喉から漏れる。鳥類を鎮静させる時には目を塞げ、というのが通説だが
歯列をなぞりつつ、ちら、と盗み見たら、どうやらそれは自主的に行われていたので問題ない。
「分かったか?」
問うと、派手に息をついた兵籐に恨みがましく睨まれた。
「田ロ先輩が普段、大変見事な猫を被ってらっしゃる事はよく分かりました」
相変わらずの減らない口だ。そう茶化すと、ふいに兵籐が居心地悪そうにもぞりとした。
しばしの間。そして田ロは自分のとんだ間抜けな格好を思い出して絶句する。赤面。

「…どうします、これ」
言いながら撫でるんじゃない。田ロの返答を待たず身を屈めようとした兵籐をやんわりと制す。
「そういうのはあんまり好きじゃないんだ」
兵籐はその言葉で一瞬肩を揺らした。違う違う、とあやすように膝の上へ導きながら
田ロは遠い昔、嶋津だか速見だかがおきゃんなダンシングクイーン(当時の言葉を引用するとこうなる)
を一発K.Oしたというスペシャル・センテンスを思い出し、その耳元で再現してみた。
「生憎、一方的な風俗サービスじゃ楽しめなくてね」

「…うわぁ……」
大方の予想通りだった反応を乾いた笑いで受け流し、田ロは改めて兵籐へ向き直る。
「念のため確認しておくと、俺は上昇思考が欠損してる万年講師で、リスク/マ/ネジ/メント委員長
なんていう首切り役職を背負わされてて、ついでにこの前、霞ヶ関のお偉いさん達を
約一名除いて全員敵に回して来ちゃったりして…まぁ、事故みたいなもんなんだけど」
第3項目はさすがに初耳だったのだろう、新種の生物を見る目で田ロの顔を見たあと
どうやら軽い貧血を起こしたらしい兵籐を、もう一度抱き込みながら続ける。
「兵籐クン的にはどうかな」
たっぷり数十秒の沈黙。おいおい?などと思っていると、兵籐は小さく唸ってから田ロの
肩に顔を埋めたまま、もごもご喋り始めた。
「大丈夫です…大丈夫ですよ…、さすが田ロ先輩、全て想定の範囲内です」
どう考えても大丈夫じゃなさそうに聞こえる。微妙に文脈もおかしい。だが兵籐は
ひとしきり喋り終えると、ふいに笑って、それから田ロの耳朶に唇を寄せて、囁いた。
「上等ですよ、ぞくぞくします」

これぞスペシャル・センテンス。唇を合わせて、田ロは兵籐の白衣を剥いだ。
同時に自分の首からネクタイが引き抜かれる。片手で器用にワイシャツの釦をはずしていく
兵籐の手際の良さに少々気圧されながら、負けじとベルトに手を掛ける。年長者の意地。
くつろげたウエストから指を滑り込ませると、兵籐が小さく息を呑んだ。
下肢に今度こそ消えない熱が灯るのを感じながら、田ロはその白い首筋に喰らい付いた。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ ) イジョウジサクジエンデシタ!

ありがとうございました。ベタ甘とか初めて書いたんだが、これ恥ずかしいですね
ところで田ロ×兵籐ってもしや凄いマイノリティだったらどうしよう(゚д゚( ゚д゚))

  • めちゃくちゃ萌えました…文章から色気がムンムンしてきます…田ロ講師のどエロイ雰囲気もムンムンです…兵籐クンがめちゃめちゃ好きなので原作だったらこんなこと言いそう、という風に痒い所に手が届く表現で見事にノックアウトされましたありがとうございます -- 2016-01-27 (水) 11:33:37

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