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オリジナル 「チーム・オナホ」

>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
現代もの。きのうのつづき。

走りながらハッとした。三鷹は志井の家を知らない。
デートは常に現地集合・現地解散だった。立ち止まり、息をつく。
衝動的に駆け出していた自分を片頬で嗤う。嗤いながら携帯を取り出した。
直ぐに掛けたいのに掛けられない。ちょっと全力疾走しただけで息あがっていた。
情けない。まだ31歳だと思っていた。もう31歳かもしれない。落ち着こう。
呼吸を整えてから三鷹は電話を掛けた。
(おかけになった電話番号は現在使用されておりません)
音声ガイダンスにそう告げられ夜空を仰ぐ。
共通の知人はいない。家も職場もわからない。どうしようか?

心当たりがまるでない。せめてあの店があいていればと思う。
1年半前、三鷹が志井と出会った行きつけのショットバーは3ヵ月前に閉店した。
気取らない雰囲気の、男による男同士の為の男の店だった。
仕事帰りに良く立ち寄っていたそこで、はじめて志井を見かけた夜、
一緒に飲みたいと思った。声を掛けたのは三鷹だ。
その三日後、同じ店でまた志井に会った。
小さく会釈をされ、カウンターで琥珀色の酒を酌み交わした。

三日後の三日後、また店で会った。ジャケットを脱いでテーブルサッカーとダーツをした。
テーブルサッカーで負けてプラットヴァレーを奢った。
ダーツでは勝った。濱田屋伝兵衛の野風を志井が奢ってくれた。
コーンのウイスキー「プラットヴァレー」と、とうもろこしの焼酎「野風」。
「とうもろこしを主原料にしたうまい酒が好きだ」という意見の一致をみたので、
どちらからともなく次に会う約束をした。
告白はしなかったし、されなかった。何度か店で会い、流れでホテルに行った。
それからの付き合いだ。一度関係を持ってからは、ホテル集合・ホテル解散が常だった。

携帯の番号さえ把握しておけば連絡はとれる。
住所、名前、職業。余計な事をきかない関係をスマートだと思っていた。
セフレが数人いる事が志井に知れたのは付き合って3週間目。
「志井」という名前を知ったのは付き合って3ヵ月目。
不実さを責められためしはない。
まとわりつかれるのが苦手な三鷹にとって、志井の淡々さは都合がよかった。
1年半の交際中、意識的に知ろうとしたり、伝えようとしなくても、
何となく知り得たり、知られたりしてしまう事は普通に幾つかあった。
なのに、住所がその中に入っていない。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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