野球 埼玉西武ライオンズ1411
更新日: 2011-01-12 (水) 00:16:30
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
ぬこさんおめでとう。11さんはすっかり全国区ですね。
ナンバリングに挑戦します、ミスったらすみません。
麦酒かけあたりで萌えあがった1411…
俺の王子様は、ここ数日ですっかり有名人になってしまった。
それは本当に、嬉しいようでもあり、寂しいようでもあり。
疲れてヘロヘロしながらも周りに構われては照れくさそうに笑う、そんな変わらない姿を見ながらも、
テレビや新聞の取材に追い掛け回されているのを見ると、やっぱり距離を感じてしまうのも事実だ。
ま、うすうす思っていたことでもある、と斧寺はひとりごちる。
何となく、こうなる予感はしていた。
同じ人種だからこそ、その背中だとか腕の振り、走るボールの虜にもなる。
逆に強烈に嫉妬する時もあったし、それだけの力を感じていたのは、今に始まったことじゃない。
抱き締めて照れる耳を見ているときも、撫でた髪をこそばゆそうに首を縮める仕草のときも。
俺は力になれないよ、と思っているときも、いつでもその裏にあること。
俺の王子様は、俺の白馬の騎士は、いつか俺だけのものと言えなくなるだろうなと思っていた。
幸せなようでもあり、哀しいことでもあり。
「チカラさん!なーにしてんの、始まるよ」
「…お、おお!?」
「ちからあああ、飲むぞおおおお」
「いや、穂葦さんは今回飲む権利ないっしょ」
「和久―!!こらー!!」
「冗談です」
「冗談に聞こえねわ!!」
もうすっかり白い記念Tシャツ姿の先輩と後輩が、傍らでプロレスごっこを始めた。
二人を見る周囲も、げらげら笑っていた。このポーカーフェイスの後輩すらも、口角を上げている。
ああ、今は心底、幸せだ。
この場所に、立っている。
「準備できたってよぉ!集合―!」
「合点!キャプテーン!」
ホテルの駐車場の、その一角を幕で区切っている中から、ひょいと阿家陀が邪念の無い顔を出す。
ちらりと見えたそちらには、がやがや大勢の取材陣と、テーブルに詰まれた無数に近いビールの山。
がっし、にんまり笑って、後輩が斧寺の肩に手をかける。こちらもにやりと笑う。
11月だ、また風邪を引くかもしれないな。
けれど全身で酔おう。
「タカくん、もオッケ?」
「!?」
「…お、おっけ!」
後輩がちょいちょい後ろに合図をするので、その名前に斧寺も思わず振り向いてしまった。
疲れから色の白い顔が少し顔色悪いくらいになっている。白いシャツで白い帽子だから、余計そう
見えるのかもしれない。そんな棋士は和久井の声に素っ頓狂に答えて、周囲の失笑を買った。
「ホント今回、お前、すげえよ!」
穂葦がぐりぐり笑みを浮かべながら、棋士の帽子を深く撫でくりまわす。
棋士は棋士で、ここ数日の間に何度も見た、独特のはにかみ笑顔で返している。
「ヨシ行くぞワク」
「穂葦さん、行きますか」
似たもの同士、に見える7歳差の先輩と後輩が、タッグを組んで他の当主とさらに肩を組んだ。
おっしゃあ!と叫ぶ二人に、穂氏埜はにやにや笑っている。助っ人は誰彼構わずハグしている。
大シ召も、石居も、あの大ベテランも。皆唸るような声が抑えきれていない。
「…力さん」
「ん?」
そのわんわんとした声のこもり具合に、この場所に立っている、という実感が身を焼いた。
腕を組んだら、シャツの端っこを小さくそっと引っ張られた。
「棋士」
「ありがとう、ございました」
「…何言ってんの、お前がスゴイの」
「へへへ」
8cmの身長差は、こういうとき悪くない。俺の王子様は、帽子のひさしから上目遣いに笑う。
「あ」
「…はい?」
「んー、何でも」
ああ、やっと自分から笑ったな、と斧寺は思った。同時にさっと肌が寒さを感じた。
11月だ、とまた思う。ああ、さっきまでそんなこと、頭でわかっていても理解していなかった。
冷え込む空気は地下のここまで忍び寄ってきていて、見れば記者の誰かはダウンジャケットも着ている。
高揚する身の熱が、それを理解させてなかったんだ。
「けど、実感がまだないんすよね」
「えー、マジで?」
「俺なんかが貰っちゃって、マジでいいのかなとか…」
「何で、いいんだよ!MVPなんて早々とれないんだからな」
肩を抱いて、さっきの先輩同様ぐりぐり頭をなでてやる。痛い痛いと、棋士が満面の笑顔でもがいた。
傍らでは和久井が、石居になにやら耳打ちしている。誰かの会話と俺たちの会話。
どこかからも唸る声、喧騒、ざわめき。
「お前が勝ち取ったんだ、って皆わかってる、俺も」
俺も、というのは正確じゃないかもな、とちらり思った。
俺は、ずっとわかってるよ、と。ざわめきの中で呟く。
俺の王子様は、いつかみんなのヒーローになるんだ。
「…じゃあ、貰っときます」
「そうそう!」
「力さん、好きです」
幕の後ろから、わあわあ誰かの歓声が聞こえてきた、ああ、行かなくちゃ。
「…ん?」
「力さんは、そういう風に言ってくれるから、好きです」
岸が、腕の中から目を上げた。聞こえていたけれど、だからこそ、夢かと思った。
目が合って、棋士が斧寺の首に手をかけた。
秘密の耳打ちのように頬が近づく、唇が自分のそれを一瞬かすめる。
「力さん」
その声は本当に聞こえていたのか、よくわからない。
だって名を呼んだ自分の声も、喧騒もざわめきも、その一瞬は真っ白だった。
何も聞こえなかった。だからその声は本物だったのかどうかは。
「…タカくん!行くよ!」
「えー?う、んー…行こっかー?」
「お前ホントのんびりしてんなあ…」
目を見たかったけれど、背後からの声に一度に現実が戻ってくる。誰かの声、喧騒、現実。
喜び、哀しみ、幸せ、全部がやってきた。寒さも、熱も含めて。
「…行きますか!」
「う、ん」
ぐい、と王子様に手を引かれた。はすに見える耳と、帽子からはねるあの癖っ毛は、いつもの棋士だ。
「…力さんて、唇荒れてますよね」
「…そっかな」
「そうです」
もう片方の手で、荒れてると言われた自分の唇をなでれば、自然と頬が緩む。
温みだ。
「棋士―」
「はーい」
「もうちょっと、だけな」
「はい?」
「ん、もうちょっと、だ」
「…変なの、力さん」
笑いながら呟くと、棋士は心底不思議そうにちらりこちらを振り向いた。
もうちょっとだけでいいから、ああ、俺だけの王子様でいて下さい。俺の白馬の騎士様で。
唇のそこに、熱さでも寒さでもないものが残っている。
これは、ぬくもりだと思う。
気付かれないように、繋いだ指に少し力を入れた。哀しいことでもあり、幸せなことでもあった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
しかしぬこは固定カプでなくても萌えたぎるんだぜ…
とにかくオメ!
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