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(元ネタ不明)

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「明美、大変だ」

千紘が真顔で言う。
明美は相棒がまたどんな破天荒なことを言ってくるのか半ば呆れていた。
しかしどこかで期待を噛み殺せずに、彼は顎で先を促した。

「俺が見習い悪魔で、人間の明美を悪の道に引き摺り下ろそうと誘惑を…」

そこまで聞いて、明美はもう充分とばかりに手を振った。

「もういい、予想はついた。おまえはまだ昨日の酒が抜けてなくて、
悪い夢を見たんだ。それだけだ」
「明美!!」

適当にいなそうとする明美に千紘は憤慨した。
ここで放置したら拗ねることは必至だ。
無駄に永い付き合いでもうパターンは嫌になるほど知っている。
被害は自分のところで収めようと明美は覚悟を決めた。

「わかった。…長い話になるんだろうな?」

明美がため息をつきながら千紘の隣に腰を下ろすと、
いっぺんに千紘の顔が明るくなった。
まるで子供だ、と思いながらやっぱりそんな相棒を憎みきれずに頬杖をつく明美。
水を向けると、千紘は勢い込んで話し出した。

「おまえが見習い悪魔って、ぴったりじゃないか」
「何言ってるんだよ、本当は俺も人間だったの!
それが手違いでおまえと双子になり損ねたばっかりに大変な目に遭うんだよ」

大変だと言う割には目を輝かせて話す千紘。そこで明美は疑問を呈した。

「じゃあなんでそもそも天使になれなかったんだ?」
「天使になっちゃったら明美みたいな素行の悪い奴は見てやれないの!
だからいっそのこと悪魔になってお前も一緒に…」

そこまで千紘が言ったところで、明美は間髪要れず言った。

「じゃあ何か、お前は俺を堕落させようと派遣されて来たってのか?」
「きっかけはそうだったんだけど、違うんだって!だってお前は殺せないだろ」
「ころ…勘弁してくれよ!」
「だから、俺も改心して結局ちゃんと生まれ変わったんだよ」
「天使にか?」
「違う、人間に!!それが今の俺だっていうわけで、筋は通ってるだろ」

千紘、それって…めちゃくちゃだ。
ほとんど口から出かかった言葉を辛うじて明美は飲み込んだ。
どこまでも突っ込みどころ満載の夢物語に
俺以外の誰がこいつに付き合ってやれるというんだろう。
ほんのちょっと泣きたくなりつつ、明美はほんの気なしに、
どこか誇らしげな元悪魔千紘の改心の理由を問うた。
千紘はほんの一瞬押し黙った後、囁くような声で
「…愛、なんじゃないかな」
と手元の帽子のつばをいじりながら言った。
明美は(なんで今更照れてるんだ!?)と思わず後ずさりながら、
「もし俺がその立場だったら、初めから天使に生まれ変わって、お前を矯正するだろうよ」
と言うのが精一杯だった。その言葉を受けて、千紘が真顔で考え込む。
明美はものすごく不審に思ったが、これ幸いとあえて触れないでおこうと思った瞬間、
予想は裏切られた。

「なあ明美、質問していい?」
「また天使とか悪魔とか以外の話だったらな」

明美は反射的に身構えた。
この歩くびっくり箱のような相棒は、時々想定外の言動で明美を楽しませたり、
あるいは困惑させたりするのだ。
一緒にいて驚きには事欠かないので慣れがあるとはいえ、
今回は前者であることを祈りながら明美は慎重にそう言った。
千紘は、誰も思いつかないいたずらを思いついた小学生のような瞳で
明美の顔をのぞきこんだ。

「じゃあ、崖から大久保、高田、俺が落ちそうになってたら誰を最初に助ける?」

(じゃあって…どこからつながってんだ)
突拍子のなさでは前回が上回っていたことを冷静に判断しながら、
明美はどうしたものかとしばし考えた。
「明美、考える時間長すぎだろ!マジで答えろよ~」
千紘は待ちきれずに腕を振り回して急かす。

「じゃあ、言うぜ。俺はさっきお前の言った順番に助ける」
「えーっと…何、じゃあ俺が最後なの!?なんでだよ?」

千紘のあからさまに不服そうな表情を見ながら、明美は気だるそうに説明した。

「だって、大久保は根性なしだろ?
で、奴を最初に助けて2人がかりでデカい高田を助ける。おまえは最後」
「もし俺が持ちこたえられなかったらどうするんだよ?」
「どうせ崖から落ちる原因作るのはおまえなんだろ、
『青い鳥を追いかけて~』とか。自業自得ってやつだ」
「そんなに言い切るなよ!」
「それに…もし、仮にだぞ、おまえが落ちたら…きっと俺も一緒に落ちるよ」
「明美…」

千紘が急に真率な顔をしたので、明美は不用意な発言をした自分を恥じた。
そして、いかにも女々しい口ぶりであった気すらしてきて、誤魔化すように大声で言った。

「マジで答えろって言ったのはおまえだろ!」
「そんなの…」
「何だよ」

千紘は無言で明美との距離を詰める。
やや途方に暮れたような顔で明美が見上げると、
次の瞬間思い切り千紘は明美を抱きしめた。

「ダメに決まってるだろ!明美が死ぬなんて絶対ダメ!!
俺は許さないからな」

自分から言い出しておきながら正直に答えるとこれだ。
明美は千紘の耳元でため息をついた。

「じゃあどうしろってんだよ…」
「だから、明美と俺がずっと一緒にいれば大丈夫ってことだろ?」
「いやそれは無理だろ」

大体そうかもな、と内心思いながら、
嬉々として過度に密着してくる千紘をそっと押し戻す明美であった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
ナンバリング間違えました、すみません><

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