悪趣味な選択
更新日: 2011-05-04 (水) 11:52:35
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| 昔、オリジサイトをやろうと思って書いたもの
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| __________ |  ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄| ちびっ子サラリーマンとその友人だよ
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まずはベルがなって、玄関を開けるまでの過程を簡単に説明しておこうか。
おれは普通のサラリーマンをやっていて、今日までそこそこでかい企画を任されていた。
この企画はなかなか順調に進んでいて、あとちょっとで成功するはずだったんですよ。
同僚が致命的ミスをやらかさなければね。
しかも、それで大目玉食らったのはミスをしたそいつじゃなくて、普段から上司と折り合いが悪かったおれ。
いや、分かってるよ。
世の中にこんな理不尽は腐るほどあるってことはさ。
けど、理解しているのと腹が立つのはまったくの別問題なんだよね。
こんな時、例えばあの同僚なら仲間と飲んで鬱憤を晴らすんだろうけど、あいにく、こっちは酒も飲めないし、ろくに友達もいない。おまけにストレス解消になるような趣味もないという最悪の状態。
そういうわけで、今のおれは非常に機嫌が悪い。
そんな状況下で、奴はやって来やがった。
姿を見せた途端に、「よっ。元気?」とかふざけたことを笑顔でぬかす。
おれはわざとらしくため息をつき、短く「帰れ」とだけ告げて、部屋に戻ろうとした。
こんな気分が滅入っている時に、こいつの相手なんかしてられません。
イラついている時に、さらにイラつくような真似をするほどおれはマゾじゃないし。
たが、あいにくこの男は気の利いた配慮ができる奴ではなかった。
すかさず、おれの腕を掴み、「えー何でー。せっかく来たのに」と気色が悪い声で、駄々をこ ね始める。
しかも大声で。
「何ででもだ。今、お前の相手をする気分じゃねぇんだよ。とにかく、帰れ」
「いーやーだ。絶対ヤだ」
「ガキみたいな言い方すんな! 馬鹿か」
「別にガキでも馬鹿でもいいし。てか、お前の言い方だって、ガキっぽいじゃん。見た目はすでにガキだけど」
「ああっ。身長は関係ねぇだろ。身長は」
確かにおれは日本の平均身長を大きく下回ってるさ。
お前がちょっとばかしでかいからって、調子に乗るんじゃねぇ。
「おれ、別に身長のことなんか触れてないんだけど」
この野郎。
いい加減にしないとそのニヤけ顔殴るぞ。まじで。
思い切り睨み付けてやったが、奴にはあまり効果がなかった。
「それよりさあ。あんまりここで騒いでると他の住人に迷惑にならねえ?」
「うっ」
鋭い反撃に言葉が詰まる。
ここはマンション。
当然、おれたちの会話は隣近所に筒抜けだ。
罰の悪くなったおれは「勝手にしろ」と言い捨て、部屋へと戻る。
後ろから、至極苛つく奴の「おじゃましまーす」という声が聞こえたが無視した。
「相変わらず、何もない部屋だよな」
リビングに入るなり、この台詞。
こいつは本当に人をむかつかせることにかけちゃ、天才的だと思う。
「悪かったな。気に入らないなら帰れよ」
「誰もそんなこと言ってないだろ? それより、ちょっと台所借りるよ」
「えっおい」
人の返事も聞かず、奴は台所へと消えてった。
追いかけてみると、四角い白い箱から何かを取り出しているところだった。
「どうしたんだよ。そのケーキ」
「んー? ここの店のおいしいって聞いたから買ってみたんだよ。好きだろ? チーズケーキ」
そう言いながら、ケーキを切り、皿へと乗せる。
確かにおれは甘党だから、ケーキは好きだ。
でも、何か引っかかる。
こういうタイミングでこいつが気の利いた差し入れをするなんて、絶対に何か意図があるに決まってる。
おれの疑惑は奴がインスタントコーヒーの袋を棚から出した時点で確信へと変わった。
「なあ」
「なに?」
「誰から聞きやがった」
面白いようにピタッと動きが止まる。
分かりやすいよな。お前。
「えっ、一体何の話?」
冷静を装おうとしているが、明らかに態度が挙動不審だ。
「とぼけんな。どうせおれが落ち込んでるだろうと思って、励ましに来たんだろ? 余計なことしやがって」
「だから知らねえって、お前が仕事でしくじったとか。あっ」
「嘘がつけないタイプだよな」
というより、アホだ。
「うー。何でバレたんかなあ」
「食事の飲み物は紅茶派のお前がコーヒー用意する時点で、おれに気を使ってんのがバレバレだっつーの」
一体何年間コーヒーと紅茶どっちが食事に適してるか論争をやって来たと思ってるんだよ。
こんな機会でもなきゃ、こいつが黙ってコーヒー入れるなんて地球が滅びるまでないだろう。
この前もどっちにするか喧嘩して、フライパンに火にかけたまま口論してたら、危うく火事になりかけた、あの「ブレークファースト」の悲劇を忘れたか。
……まあ今から考えれば、コーヒーと紅茶を両方用意しておけば話は早かったとは思うが、それはとりあえず置いておこう。
それよりも。
「どうせ、係長辺りからメールでも着たんだろ?」
「……うん」
やはりか。あのお節介上司め。
同い年で、おれとは違いやる気があり、人望がある係長はこいつとは高校の同級生だからわりと仲がいい。
だから、とてもありがたいことに同い年の上司様は、おれの近況を事細かに、とっても心配性で世話焼きな親友?に知らせてくれる。
まったくもって、迷惑な話しだ。
「まったく、どいつもこいつもお優しいことで」
「だって、心配なんだもん」
「余計なお世話だ。お前に心配されるほど弱くない」
「そうならいいけど……まっ、とりあえずケーキ食おうぜ。ちょうど、コーヒーも沸いたし」
そう言って、ニコッと笑いかける。
なんか釈然としないが、これ以上議論してイラつくのも馬鹿みたいなのでここは従うことにした。
確かにチーズケーキは美味い。
程よいコーヒーの苦さも相まって、イライラも幾分か解消された。
しかし、依然として心の中にはモヤモヤとしたものが残ったままだ。
おれを励ましにきたはずのこいつは、さっきから世間話ばっかしているし。
紅茶飲みながら。
まあ、なおざりの慰めの言葉をかけられたって、かえって惨めになるだけだからいいけど。だってどーせ。
「どうにもなりゃしねえだろ」
「えっ何が?」
「今更、何も変えられやしねえよ。仕事をしくじった事実も会社でのおれの立ち位置も」
口が滑った。
こんな弱音じみたこと吐いてどうする。
相手を余計に心配させるだけじゃないか。
「いや、何でもない。今のは忘れてくれ」
あー、案の定、嫌な顔してるし、頼むからその眼でこっちを見んな。
お前のその顔は苦手なんだよ。
「あのさ」
「何だよ」
「ここだけの話だけどさ、おれずっとお前に憧れてたんだよね」
「はあ!?」
いきなり何言ってんだ、この男。
いや、唐突なのはいつもか。
でもそれにしたって……
「頭もいいし、基本的に何でもできるし、おれみたいにへたれじゃないし。無愛想で素直じゃないのが玉に傷だけど」
「なんだよ急に。気色悪い」
「んー。だから、お前ならこんくらいの失敗、すぐに取り返せますよって話」
「随分と簡単に言ってくれるな……」
お前のいう能力がおれにあってそれと努力だけでどうにかなるなら、おれは即、部長とかになれるだろうよ。
いや、せめて自分の成果を適正に評価してくれるだけでもいい。
まあ、無理だろうけど。
自業自得な部分もあるが、会社での立場が非常に微妙だし。
「あのさ、お前は性格やいろんな事情でいろいろと損してるけど、お前が思ってるほど、会社で孤立してるわけじゃないよ」
「えっ?」
「どっかの係長とか、同僚とか、あと直属の課長とは仲いいんだろ。これしきの失敗フォローしてくれるよ」
「けど……」
「大丈夫だって。お前はすごくていい奴だっておれが保証する」
「お前に保証されてもな……というかなんなんだよ。そのおれはお前のこと、すべて分かっている的な態度」
「え? 全部とはいかないけど、お前のこと大半は理解してるつもりだけど」
「自惚れんなバカ」
「照れんなって。考えてみ? おれ以上にお前のこと、理解してる奴いるか? 」
「…………」
まったくと言っていいほど思いつかないのがひどく腹立つ。
「ほらな、おれしかいないでしょ? 」
自信満々な笑みがとてもうざい。
「何でこんなんと付き合ってるんだろうな、おれ」
本当に不思議だ。おれ的世界の七不思議に認定していいほどに。
「おれが優しくて気の合う、いい奴だからじゃない? 」
「お前より、優しくて気の合ういい奴なんて、この世の中に何十億人といるよ」
「比較基準は世界規模かよ。せめて、日本限定でいこうぜ」
「……もう、いいから黙れ」
ハア、なんか疲れた。
おれはフォークを皿に置くと、席を立った。
「どこ、行くの? 」
「風呂」
そう言うなり、着替えを取りに自分の部屋へと向かった。
まったく、どうしてあいつはいつもいつもおれを振り回すのだろう。
そしてどうして、結局は受けて入れてしまうのか。
考えてみた所で答えは出ない。
切れるのならとっくの昔に切っていたはずだ。
それにも関わらず、現状に変わりがないということはこれからもずっとこのままなのだろう。
ああ、腹が立つ。
あの馬鹿に対してもそうだが、それより何よりあんなありがちな言葉一つで安心してしまえる自分にだ。
他の奴ではこうはいかない事を自覚してしまった。
あーあ、馬鹿はどっちだっつの。
深いため息をつくと適当に着替えを引っ張り出し、部屋を後にした。
「落ち着いた?」
2個目のケーキを口にしながら、にやけ顔で凝視する。
やっぱり一発殴ってやろうかと思ったが、殴り方が悪いとこっちの手も痛いので寸での所で踏みとどまった。
そんなので怪我するのも馬鹿らしいし。
というか、そのケーキはおれのために買ってきたんじゃないのか。なに一人でばくばく食ってるんだ。
やることなすこと、おれをくたびれさせるのはある種の才能なのだろう。そしておそらくこの関係は今後も変らない。
何だかなあ……。
「おーい、どうした?こっちじっと見つめて? 惚れ直した?」
「アホか……」
本当にどうしようもない男なんだけどなあ……
「結局の所……」
「ん?」
「お前より優しくて気の合う奴が十億人いたって、結局おれはお前を選ぶだろうな」
独り言のつもりだったが、しっかりあいつの耳に届いていたらしい。食べかけのケーキがポロッとフォークから落ちる。そして次の瞬間には満面の太陽みたいな笑顔になった。
「え、え? まじで? それ本当?」
犬ならば尻尾をこれでもかと振ってるだろうなという勢いで問い詰める。その様子におれは言わなきゃよかったと心底思った。
「なに、なに、何だかんで結構お前も俺の事……」
「うるせー!!死ね!!」
これ以上墓穴を掘る前にさっさと風呂場に駆け込む。だって今の顔を見られるのはマズイ。間違いなく真っ赤になってる。
とりあえず、おれはあいつに躍らせれすぎる。そして今日気付いたこと――絶対におれは選択を誤ってる。そして趣味が悪い。
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| | □ STOP. | |
| | | | ∧_∧ 攻受は決めてないのでお好きに。
| | | | ピッ (・∀・ )
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