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10 YEARS AFTER

藁う戌2008、復活オメ!照と退蔵の再会記念。
本編で飲みこぼしたコーヒーは、無かったこととしてお送りしますw

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

「照さん、そりゃないですよー!」
新人は泣き言を言いながら、照の腕を掴もうとした。
「いいから、おまえは一人で帰れよ!」
照はその手を邪険に振り払った。
「ひどいじゃないですか!今までそんなこと言った事ないのに…」
「うるさいな、ダメなもんはダメなんだよっ」
退蔵は2人から少し離れて、携帯で通話していた。相手の言葉には半ば上の空で、言い争う2人を眺めている。
電話を切り、携帯をしまった後も、しばらく近づかずに眺め続けた。
「3人だっていいじゃないですかあ」
新人はごね続けている。このまま照が根負けするのを狙っているようだ。
「結構しつこいよな、おまえも…」
照は呆れたように溜息をついたが、少し押されているように見えた。
退蔵が近づいていくと、それに気付いた新人が、突然ガッチリ視線を合わせてきた。
「?」
退蔵は口角だけ上げて笑顔を作って、新人を見返した。新人は退蔵を睨みつけるようにして、言った。
「この際正直に言いますけど、オレ今、照さんと退蔵さんを2人きりにしたくありません!!」
照はうろたえて、おたおたと新人と退蔵の顔を交互に見た。
「おまえ、な、何言ってんの…」
言いかける照の肩に、退蔵がぽんと手を置いた。退蔵はゆったり笑って、穏やかに新人に言った。
「十年ぶりだから。邪魔しないで。」
「……………………」
新人は気圧されたように、退蔵の顔を見たままぽかんと口を開けた。
同時に照は、肩に手を置かれたまま、チラッと退蔵の顔を見上げた。
その照の表情を見て、新人はむくれたように口を尖らせていたが、しばらく黙った末にぼそっと呟いた。
「…十年ぶりですもんね。…わかりました」

そして今まであれだけごねていたくせに、急にあっさり雑踏の中、地下鉄への階段を下りて行った。それでも往生際悪く何度も振り返る。その姿が、長い時間をかけて遠ざかり、階段を降り切って完全に消えた。
見届けて、照はハーッと息を吐いた。
「…あいつ…やっと行った…」
退蔵は、新人が消えて行った方に目をやったまま、照の顔を見ずに言った。
「仲良さそうじゃないですか?」
「え?」
きょとんとして子供のように振り向く照に、退蔵は黙って、新人が行った方に顎を上げた。
照は、はじかれたように笑った。
「あいつは手がかかるだけだ」
久し振りに見る笑顔に、一瞬自分を取り巻く時間が止まったような気がして、退蔵はその笑顔を懐かしく眺めた。
変わらない。この人は何も変わってない。あの頃のままだ。
照も、口元に笑いを残したまま、懐かしそうな目をして退蔵を見返した。
「退蔵…。少し、変わったな」
「…そうですか?」
「ん。…なんか、落ち着いたな。」
そう言って照は小さく笑った。
十年間、ずっと間近で見たいと願っていた笑顔だ。
「照さん。オレの家来ませんか?」
退蔵が言うと、照は何故かたじろいだように、そわそわと視線を泳がせた。
「いいのか?いや、でも、奥さんや子供は寝てるだろうし」
「オレ一人ですよ」
車道を窺いながら退蔵は答えた。照が視線を上げる。
「そうなのか?」
「いつ死ぬかわからないような男と、結婚する女はいませんでしたから」
退蔵は通りがかったタクシーに手を挙げた。

立地が良く、14階建ての大きなマンションだったが、どこか殺風景だった。部屋に入るとその印象が更に強くなる。必要最低限の家電しかない部屋は、だだっ広さが強調されていた。
「物が無いでしょ?ここには寝に帰るだけなんで」
退蔵が冷蔵庫を開けた。ダイニングのテーブルには椅子が2脚だけ。自分以外に一人しか招かないと想定したように。
「ビールでいいですか?」
2缶取り出したうち、1缶を照に渡した。
「…ああ」
照はそれを受け取り、両手で持つと、何故か急に固まったように動きを止めた。
「…?」
退蔵は、照の顔を見ながら自分のビールをテーブルに置いた。照は俯いたまま動かない。
缶ビールを持つ手が、かすかに震えていた。
退蔵は照の前に回り込むと、そっと手から缶ビールを取って自分のビールの隣に置いた。それから照の肩に両手を置いて、顔を覗き込んだ。
「…どうかしたんですか?」
「ごめ…、なんか、急に…」
照は笑おうとしたが、その唇も震えていた。
「…なんだろ……なんか、…まだ、信じられなくて…」
退蔵は、肩に置いた両手をそのまま腕へ滑らせた。そのままゆっくり抱き寄せて、両手を落としたままの照の背中を撫でた。
「大丈夫ですよ」
「……」
「大丈夫ですから」
それから背中にまわした腕に、ぎゅっと力を込めた。
「……」
照がくぐもった声で何か呟いた。「退蔵」と呼んだのか「痛いよ」と言ったのか聞き取れなかったが、かまわずもう一度力を込めた。

「照さん。十年前、オレに言った言葉、憶えてますか?」
「…え?」
「オレが『殉職』した日に照さんが言った言葉」
照の顔を覗き込むと、耳までカーッと赤くなっていた。
「…おまえ…憶えてたのか」
「忘れようとしても忘れられません」
退蔵はあの日と同じように笑顔になった。
「照さん、オレね」
「…うん」
「あの日、照さんがオレに言うよりずっと前から、オレは照さんをすきでしたよ」
「……えっ」
照が顔を上げた。
「…いつから?」
「照さんがCDショップでバイトしてた頃から」
「…バイト…」
「オレはその時高校生でした」
何かの記憶が光ったかのように、照の目の中で、薄暗い照明の光が小さく反射した。
「店で万引きしようとした高校生を、捕まえたことがあるでしょ?」
「…あっ」
突然、照の耳の中で、その時店内にかかった音楽が流れ出した。

『あの日あの時あの場所で君に逢えなかったら
 僕らはいつまでも見知らぬ二人のまま』

「…憶えてました?」
「…思い出した。今、わかった」
照は退蔵の顔を見上げた。退蔵は照の顔をじっと見つめていた。
「オレはあの時からずっとすきだったんです。だから、あなたを追って刑事になったんです」
「…そんなに前から」
「照さん、自己紹介の時オレのこと覚えてなかったでしょ。オレ覚えてんじゃないかって期待してたんだけど、あ、コレ全然覚えてねーなーって」
「…思ってもみなかった」
照は何度か瞬きをして視線を揺らせた。
「それと、オレが十年前に、返した言葉って憶えてます?」
「…それは、はっきり憶えてる」
それこそ、忘れようとしても忘れられなかった。

『わかってました。…なんとなく、わかってました。
 オレ、なんて言ったらいいのかわからないけど、…すごく、嬉しいです。』

「オレね、あの後ずっと後悔してたんです。…ただ素直にすきだって、言えばよかったって。だから、今、あの時本当に言いたかった事を言います」
「…退蔵」
「すきです。ずっとすきだった」
嬉しいのか泣きたいのかわからないような表情で、退蔵は言った。
「最初に逢った時より、ずっと一緒にいた時より、昨日より、もっとすきになっているんです」
「……」
もう、これ以上何が必要なんだろう。
照は、淋しかった猫みたいに、退蔵の胸に頭を擦り付けた。

「…照さん…」
「…だけどな、退蔵」
「はい」
照は顔を赤くして、一瞬言いよどんだが、目を伏せて言った。
「…たぶん、それでも、おれのほうがおまえのこと、すきだ」
聞いたとたん退蔵はくしゃっと笑った。
「違います。オレの方がすきです」
「いや絶対おれの方がすきだから」
「オレです!!」
退蔵は笑いながら、大きな腕でガバッと抱き寄せた。
「なんだよそれ…」
照はくすぐったそうに笑いながら、少しもがいて、グーで退蔵の脇腹を小突いた。
それから真顔で、改めて言う。
「退蔵」
「はい」
「…すきだっ…」
両腕を退蔵の首に巻きつけて、ぎゅっと自分に引き寄せた。
「…わかってます」
退蔵は、自分の頬を照の頬に滑らせた。
もう二度と離れたくなかった。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
私的解釈で願望が多めになったけどキニシナーイ


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