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ナマ注意 土奇玉獅子 2747約束の話

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
通常日程終了記念。ツンデレほのぼのを…!

まだまだこれから秋は長い、とそれを嬉しくも思いつつゆっくりコップを差し向ければ、
穂葦も笑って返してきた。
とりあえず、と。まずは今年もお疲れさん、と笑う。
がちんとお互いの盃がテーブルの真ん中で交わう。
早速牛タンに箸を伸ばす穂葦に、今年はどうだったかと聞くと、まずまずかなとのんびり
した返事が返ってくる。
その言葉を糸田川は反芻した。口に放り込んだ先付けと一緒に、少し黙って意味を味わう。
「…まー、贅沢言ったらあと3勝はしたかったけど。それはしゃーない、ってか」
食うか喋るかどちらかにすればいいのに、シ一ズン終了の開放感からか先発としての
役割を果たした安心感からか、穂葦は饒舌だ。まだ酔いが回るには早い。
「自己最多将狙い?」
「そうそう、でもずっとロ一テでやれたし、今年はまずまずってやつだ」
肩の痛みがないというのは、それだけで雲泥の差だったのだろう。右側とは明らかに筋肉の
発達が違うその腕を、糸田川はぼんやりと見た。その後で自分のコップをぐいと空にする。

「なあ、焼酎いっていい?」
「早いなお前」
「今日はいいじゃねえの、今日は」
穂葦もさっさとビールを空にして、おねーさーん!と店員に声を掛けている。メニューを
ひらひらばたばたさせている。
にやとこちらを見て、大シ召も声かけてやればよかったな、と言った。馬鹿、嫌がらせかお前。
サ∃ナラ負けの敗戦投朱を飲み屋に誘うって、どんな強心臓だ。
「嫌がらせじゃあっりませーんー。同期の心遣いでっすー」
「…何のキャラだよ!」
わいわいとした飲み屋の空気になじんで、穂葦は今日は本当に良く笑う。
テーブルの木目に指を這わせて、斜めに座って、力が抜けている。珍しいというか、久しぶり
というか。
まだこの秋は続くんだが、これだけ腑抜けて大丈夫なのかとちらり頭を掠めるほどだ。
そして逆に、知らず知らず張り詰めていたこの半年のことを思い知る。自身の、やっと癒え
かけた肩の痛みなどについても。
「で、防御律2点台になった感想は?」
「ん?」
そう問うと、穂葦が今日はじめて、妙な顔をした。そりゃお前、と言いかけてその後軽く眉を
顰めて黙り込む。
シャツに中途半端な長さの髪を埋めて、襟首のあたりをすくめてしまう。
「?」

どうしたよと聞けば、そこでますます穂葦は口ごもって視線を落とした。
竹を割ったような性格のこいつにしては珍しい。
夢の防御律2点台、だと思う。それだけ投げ抜いてきてその結果という、一流ピッチャ一の
勳章のようなもの。
特に今まで4点台あたりをウロウロしていた穂葦にしてみれば、格段の進歩だ。
女房役としても至福この上なく、それがやっぱり嬉しくて言ったのに、何だこの微妙な反応は。
「…豚トロ、冷めるぞ」
「え、ああ食う」
「いきなりどうした、止まって」
「…いや、うん、お前、ワザと言ってる?」
「は?」
「あー!覚えてないならいい、あんまり突っ込むな!」
やってきた焼酎を片手に、がつがつとまるでヤケ食いだ。
俺何か変なこと言ったか?と聞いても、適当にしか返ってこない。
覚えてない?何の話だ?
「なあ穂葦」
「しつこいな!お前がシ一ズン前にしょーもないこと言ったの、思い出しただろが!」
「はあ?俺がぁ?」
「お前や!」
食べ終わった串で人を指して、穂葦は半分顔が引きつっている。相当地雷な話題らしいが。
ああ焼酎一気飲みはやめろ、喉にくるだろ、ほら案の定咳き込んで。

「…お前、今年俺が取られたら、取られた分だけやるとか言ってたろ」
「あ」
「ほんま、お前最悪」
おねーさん!もう一杯!!
ガラガラの声で穂葦は叫ぶ。完全に背中を向けてグラスを振り回して、リアクションが子供並だ。
そういえば、そんなことも言ったかと。いや当然真面目な場ではなかったはずで。
多分睦言のひとつとして言ったような、気が、しないでもない。うん。
だって俺は穂朱で、お前は当朱だからさ。
そんな風に言われたら、絶対タダじゃおかないって思うはず。
糸田川は口元が自然に緩む。
「…いや、お前は最高だけど?」
しかしそんなネタを今更思い出すか、お前。心の中では笑えて仕方ない。
わざとゆっくりグラスを振れば、氷の触れ合うカラカラという音に、完全に拗ねた穂葦が振り向いた。
睨むというか半眼で、ああ殴りたいとその目が言っている。目尻はもう赤い。
「今年のお前は、最高だ」
もう一度、静かに言った。それは本音だった。
知ってるかなお前は。お前の王求が、俺の目の前でどんな風に曲がるかを、落ちるかを。
ぶっちゃけると、お前は俺の穂朱人生の中で、初めてかつ最高のパ一ムボ一ラ一だ。

言えばいい気になるのがわかっているから、そう簡単には言わない。言ってたまるか。
けれど静かには思う。それは揺らぎ無いってことだ。
お前は、最高だ。
だから静かに言う。
「とりあえず」
ゆっくり振り返って、穂葦の目がこちらを真っ直ぐ見た。
「その台詞は、1か月後くらいにまた聞きたいもんだな」
いつも思う。お前の目つきには光なんか関係ないなと。
朝でも夜でも、こんな飲み屋のだるい照明の中でも、カクテルライトのス他事アムにおいても。
「…上等」
それが言えるなら、腑抜けてなんかいない。
知ってるかなお前は。俺は18メートル離れてても、お前の目はしっかり見てんだ。いつだって。
上等だ。極上だ。
1か月後、この秋が終わったときでも、その先でも俺に何度でも、そう言わせてみせろよ。
「それから」
「?」
「…小数点から下は」
「下?」
「…、小数点以下は切捨てで頼む!」
その目を途端に伏せて帆足は言って、一気に頭からテーブルに頭から突っ伏した。
マジで3回とかもう無理だし、マジで勘弁、とへたりこんで頭を抱えた。
「んー…まあ、そこまで言うなら、まあ…どうすっかな」
「お前鬼か!」
「まあ、今日はよろしくいただくとする」

また口元が緩むのと、心の底から笑いたいのを我慢して、糸田川は返した。
わざと真面目な顔でおもむろに手掌を合わせると、拝むな!とまた穂葦が凹む。
後でそのとき耳元で、もう一回、あの台詞を言ってやろうと思った。どんな顔をするやら、楽しみだ。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
2回は出来るらしいです。
カウントミスりました、すみません。


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