ヤクザだけどクッキー焼いちゃいました
更新日: 2011-05-04 (水) 11:24:56
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
某コピペから生まれたオリジ
今日も無事一仕事終えた俺は、鉛臭い身体を引きずりながら事務所へと戻った。
時間はもう夜中の3時。
この時間ともなれば、さすがに舎弟達は全員寝ているだろう。
電気を点け、穴の開いてしまった背広を脱ぎ捨て黒光りしているソファーに腰掛けた。
ネクタイを緩めながらくしゃりとよれてしまっている煙草を取り出して、火を点ける。
その瞬間、奥の方からガタンッと何かが落ちたような物音が静かな室内に響いた。
「ごっ、ごめんなさい…っ!」
聞こえてきたのは、先月から組員になった新入りの慌てた声。
―――名前は、何だったけか。
ソイツはペコペコと頭を下げながら、落とした物を拾い集めていく。
銀色のボウルやおたま、泡だて器……。
あまり、この事務所では見かけない料理道具達。
「…おい新入り。何やってたんだ、こんな時間に」
ふーっと煙草の煙を吐き出して、問いかけた。
俺としては当たり前の事を聞いただけだったのだが、そいつの肩は大げさなくらいビクッと大きく跳ねた。
徐々に顔が赤くなって、きょろきょろと目を泳がせる。
…あやしい。
あやしすぎる。
ふと見れば、背中に何かを隠し持っているようだった。
煙草を灰皿に押し付けて立ち上がれば、またソイツはびくっと反応する。
俺とは20センチ程違うであろう身長差のせいで、自然と見下ろすようにしてそいつに目線をやった。
「おい、背中に何を隠しているんだ。…出せ」
「いっ、嫌です!兄貴でも無理……うわっ!!」
ソイツから無理やりブツを奪うまで、そう時間はかからなかった。
チャカでも隠し持っているのだろうという俺の予想は大きく外れ、手の中には綺麗にラッピングされた箱が一つ。
妙な時計音もナシ、振ってみても変化はなくコロコロと軽い音がするだけ。
「ご、ご…ごめんなさい…っ。それ、っ、兄貴にあげようと思って…クッキー…」
「クッキー…?」
しゅるっと赤いリボンを解いて箱を開けると、中には円形をしたお世辞にも美味しそうとは思えないいびつな形のクッキーが5個。
所々黒くなっており香ばしい匂いもなく、するのは焦げ臭い匂いだけ。
「ほ、本当は、ちゃんと型とって綺麗にやりたかったんスけどっ、ほら、職業柄なんか型買いに行くの恥ずかしくて…ッ」
まだ何も聞いていないのに、ソイツは顔を真っ赤にしたまま早口で話し始めた。
……ちょっと待て、俺が聞きたいのはそこじゃない。
何故クッキーなのか、何故俺に渡そうと思ったのか、何故こんな時間まで作っているのか
聞きたい事は山ほどあるのだが、楽しそうに話すソイツを見ているうちに何も言う事ができなくなってしまった。
「…あの、やっぱり迷惑ッスか…?」
無言だった俺に気がつき心配になったのか、不安そうにソイツは俺の顔を覗き込んできた。
大きめの目をパチパチとまばたきさせて、問いかけてくる。その姿が妙におかしくて、軽く吹いてしまった。
「…いや、嬉しいよ。…ただ、礼はもっと作るのが上手くなってから言ってやる。分かったか?分かったらもうさっさと寝ろ」
「はっ、はい!ありがとうございます!!おやすみなさいっ」
俺の言葉をきいた途端、不安そうだった表情が一転して笑顔になり、何度も頭を下げられる。
そのまま料理道具を全部腕に抱えると、パタパタと駆けて奥の母屋の方へと姿を消して行った。
…お前が礼を言ってどうするんだ。まったく。
名前も知らない、ただの下っ端組員にここまでされたのは初めてだった。しかも、手作りクッキーだなんて。
「……次会ったら名前でも聞いとくか」
無意識のうちに呟いていた言葉は、誰に聞かれるでもなく静かな室内に響いただけだった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
このページのURL: