魔王×勇者「終わりなき縁」
更新日: 2011-01-12 (水) 00:11:47
初カキコです。
801スレ【魔王になって勇者犯したい。】
http://yomi.bbspink.com/test/read.cgi/801/1198362551/l50
↑のスレの>>599からの流れをオリジナルで書かせて頂きました。
魔王×勇者 です。
上記スレに行けば大体の話の流れは判りますがお付き合い頂けると嬉しいです。
ファンタジーです、グロは…多分無いです。
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この大陸の日の光が微かにしか届かない暗き世界、闇の境界と呼ばれる場所に聳える城。
常に月に照らされ青白く不気味に聳えるその城の頂点には魔王と呼ばれる者が居た。
闇と魔物を侍らせ境界を越えた人の世界に恐怖を与える存在。
人はその魔王を駆逐せんと何年にも渡り刃を向け続けた。
だが人と魔族と言う壁の差は余りのも高く何十何百という人間が彼の前に散って逝った。
人の世界が栄えれば栄えるだけ闇の境界の先をも手に入れようとする愚かなる人の王が現れ
その度に王に命じられた者が魔王に挑み、魔王はそれをあっさりと散らすと人の世界に恐怖を与えた。
今日もまた闇の境界の城の麓に人の軍勢が攻め行った。
「…くぁ~……」
城の一番高い部屋にある玉座に腰掛け、頬杖をつき欠伸をしながら城の主は水晶に映し出されている城の内外の様子を眺めていた。
「下らん……」
果敢にも剣一本で魔物に挑み呆気無く肉塊にされる兵士達の様子もとうに見飽きて水晶の映像を消した。
五月蝿い断末魔を聴こえないように部屋に結界を張ると玉座の背凭れに体重をかけて魔王は溜息を吐く。
何時から魔王と呼ばれ、何時からこの玉座に座り続けているだろう…
途方も無いほどの永い時間を非力な人間達の喚く声に耳を貸し、
哀れ過ぎる位の力量の差に挑んでは散っていく、
受け継がれた力と記憶は
【魔王は勇者に倒されるべき存在】
と語るが今まで現れた勇者と名乗る人間は自分をこの玉座から動かす事もできなかった。
気紛れに自分から動けば恐怖に許しを請い殺す気も失せさせた。
いっそこの下らぬ世界から離れる為に自刃をしてみたものの、不老不死のこの体には多少の痛みを与えるだけだった。
意識を思案へと潜らせていた魔王は結界が揺らぐのを感じ目を開いた。
結界を解き外の音に耳を立てると階下からの声は減り、
石造りの階段を上り、ゆっくりとこの部屋に向かって来る足音が聞こえた。
この階まで辿り着いた者が来たのは何年振りだろうか、
魔王は若干の期待を胸に玉座に座り直して扉を見据える。
扉番の魔物が動き、幾分時間はかかり扉が勢い良く開いた。
開いた、と言うよりは吹き飛ばされた拍子に飛び込んだという感じだった。
部屋に敷いてある絨毯に叩き付けられた来訪者は痛みに耐えるようにその場に数秒蹲ると
荒い息を切らせながらゆっくりと身を起こし目の前の玉座に座っている者に焦点を合わせた。
「…あんたが…魔王か…?」
その者は青年と呼ぶにはまだ幼い外見で、揺れる松明の微かな灯りに映える茶色の髪と瞳、
此処まで潜り抜けた防具は先ほど水晶で見た兵士達より貧相な物だった。
今までの経験から【勇者】と言うものを外見で判断する事を辞めた魔王は
視線を目の前でこちらを伺う戦士に向けたまま口元に笑みを浮かべた。
「そう呼ばれている、お前が今度の【勇者】か?」
魔王が発した単語に戦士は首を傾げながら剣を構えた。
「今度…?あんたは今まで何人の勇者を倒したんだ?」
「さぁな、お前が聞いてきた物語の数だけ対峙はしている」
魔王は視線を外し自分の長い黒髪を指に巻き付けてつまらなそうに返すと戦士は魔王に切りかかった。
が、戦士の剣は魔王の指一本で止められ、まるで弦を小さく弾くような仕草だけで吹き飛ばされ壁に叩き付けられた。
呻き声を上げながら崩れる戦士に魔王は視線を向ける事無く相変わらずつまらなそうに天井を見上げた。
戦士は弱々しく立ち上がり、何度も切り掛かるも全て同じように指一本で止められ身体ごと弾き返されては
壁や床、たまに天井に打ち付けられ、ダメージの蓄積は目に見えていた。
「まだやるか?」
ヒビの入った剣を杖代わりにしぶとくもまた立ち上がろうとする戦士に漸く魔王は視線を向けた。
「そのままでは私に触れる事無く死ぬぞ、魔導の一つでも使ってみたらどうだ?」
「………の……ぃ……」
「何?」
叩き付けられた影響か声も擦れた戦士は力を降り絞って床を蹴り、まるで矢のように魔王へと跳んだ。
一直線に向かってくる剣先をまるで枝を避けるような仕草で魔王は戦士ごと剣を払うが、
剣の影の死角から出てきたナイフが魔王の髪を掠った。
払われた剣は壁に刺さり二つに折れ、戦士は玉座の横に力なく転がった。
「……ほぅ、魔導なしで私に向かい、微かではあるが一撃を与えたのはお前が初めてだな」
床に散った数本の髪の毛を腰を曲げて拾い上げると魔王は少しだけ楽しそうに目を細めた。
「……ぃ……」
「何だ?言いたい事があるなら聞いてやる、命乞い以外だがな」
腕を立て、懸命に起き上がろうとするも蓄積されたダメージが戦士の身体を覆いその場でもがく様にしか動けずにいた。
「そ…んな…もの、使…えな…ぃ…」
「…は?」
微かに聞こえる呻き声に魔王は視線を久し振りに戦士に向けた。
「魔導が使えないとは、勇者の質も堕ちたものだな…」
「…勇者…なんて…只の肩書きだ、オレは…そんなのじゃない…」
漸く身を起こせた戦士は身体を引き摺らせながら折れた剣を拾い上げた。
「確かに只の肩書きに過ぎない呼称だな、ではお前は何―――」
戦士の動きを目で追っていた魔王は剣を拾い上げようと屈んだ拍子に外れた肩の防具の隙間から覗いた肌に見えた紋様に眉を顰めた。
「……お前、奴隷か?」
その言葉に戦士の身が固まり、もう遅いと頭で判ってはいるが肩の敗れた部分を手で隠した。
この世界には店や屋敷で奉公する商業奴隷と傭兵や兵士に徴収される戦闘奴隷が居る。
奴隷にも階級があり、魔王の前に居る戦士の肩に刻まれた紋様はその中でも一番下の階を表す者だった。
戦士は震える手で折れた剣先を魔王に向けた。
「アンタが居る限りこの国から戦いもなくならない!
馬鹿な王が戦いの度に税を跳ね上げ自分の兵を使わずに俺みたいな奴隷をアンタに向かわせてるんだ!!」
剣を振り上げ魔王に切り掛かるが、今まで微動だにしなかった魔王はその腰を上げ玉座から離れると
戦士は玉座に体当たりをする形になったが直ぐに体勢を立て直した。
玉座から立ち上がった事で戦士は魔王の全身が漸く認識できた。
自分よりも頭一つ分は高い長身に腰まではある長い黒髪を緩く束ね、
闇夜のような濃紺の衣装とマントを翻して自分の足元に転がっている戦士の折れた剣を手に取っては何かを考えていた。
「成程、最近の兵の脆弱振りはそのせいか…、奴隷を向けられるとは私も嘗められたものだ」
いっそ、また滅ぼしてやろうか
まるで唄うように笑みを湛えながら発せられたその言葉に戦士は叫びながら拳を振り上げ突進する。
あと数センチと迫った処で戦士は己の身に嫌な音が静かに響いたのを感じた。
視線を眼前の魔王から自分の腹に下ろすと自分の剣が突き刺さっていた。
「勇敢なる奴隷よ、お前はこの国が好きか?護りたいものは在るのか?」
血が口へと逆流するのを感じながら戦士は顔を上げ魔王を睨みつけると
黒髪の隙間から覗く切れ長の目の中の銀色の瞳にふと吸い込まれるような感覚を覚えた。
「ぁ…んたに……判る…もん…か…っ」
「あぁ、判らんな。弱者の気持ちなどーー」
悔しくはないのか?
聞こえた囁きに戦士は目を見開いた。
眼前の魔王はその秀麗な顔に冷たい笑みを湛えている。
「…な…ん…だと…」
「只の奴隷として人の愚かな王に命じられたまま此処に来、使い捨ての物のように死ぬのは悔しくはないか?」
腹から流れ出る血と共に頭に上がった熱も下がっているのか魔王の低い声が戦士の脳に響く。
「お前程度の力の者は飽きるほど此処に来た、だがお前だけが勇者でもなければ戦士でもない、奴隷だ
本当に勇者に成りたくはないか?」
「黙れ!!!!!」
声を振り払うように腕を振り上げ魔王を蹴って腹に刺さっている剣ごと強引に引き離れると戦士は数歩下がったその場に崩れた。
血が流れ出る腹を押さえ、息も絶え絶えながらも戦士は魔王を睨み付けると、
魔王は戦士の血で染まった剣を宙で振り何かの陣を描いた。
描かれた陣から発せられた光が戦士を包むと腹に開いた穴が塞がった。
「…何のつもりだ…?」
治ったのは腹の傷だけで今までのダメージも流れ出た血も回復した訳ではなく戦士はその場に膝を付いたまま魔王の様子を見ていた。
「私の問いに答える前に死なれるのが嫌なだけだ、問いが聴こえていたなら答えろ」
先ほどとは逆転して今度は魔王が折れた剣の切っ先を戦士に向けた。
戦士は魔王の意図が理解出来ないまま眉間に皺を寄せ、魔王が言った言葉を思い出し少しだけ考えて口を開いた。
「…この国が好きかどうかは判らない、…護りたい者は奴隷のオレに有る訳なんか無い…」
そこまで口にして攻撃の後以外で初めて戦士は魔王から視線を外して俯いた。
その時、魔王の目には目の前の人物は戦士ではなく年相応の少年が映っていた。
「…どうすれば良いんだ……」
「ん?」
「オレは…アンタを倒せなければ此処から帰れない……」
言葉にならない微かな泣き声が魔王の問いの答えを表していた。
「……お前、名は?」
泣き伏せる少年に魔王が柔らかい声で尋ねた。
「……ない、…ずっと…番号で呼ばれてた…」
手の甲で涙を拭いながら少年は開いた手で肩を掴んだ。
文様と共に刻まれた数字が今までの自分を表す単語だった。
「勇者に名が無いのは困るな、私が付けてやろう」
「………は?」
少年が顔を上げると魔王は剣を指先でくるくると回しながらブツブツと考えていた。
「アンタ……何考えてんだ…?」
「ん?名も無き奴隷を私を倒す勇者にするだけだ」
くすくすと楽しそうに笑いながら魔王はまた剣で宙に何かを書いた。
「……読めない…」
「…力以外に教養も必要だな、【タトラ】だ」
「意味は…」
「特にない、私が呼び易い言葉だと思っただけだ。
さて、タトラ、先ずはお前を奴隷から勇者にしなければな」
魔王はそう言うと遊んでいた剣を握り直して徐に自分の束ねていた髪を切り落とした。
「なっ?!?」
「戦利品はこんなもので良いか、後は…」
「アンタ何考えてんだ?!」
先程から一連の事が理解出来無い少年、もといタトラは驚いた顔で立ち上がると魔王に足を引き摺りながら近寄った。
「長年の戦いに私も飽きてきた、終わらせる為にお前には私を倒す勇者になって貰う」
「意味判んねーよ!?オレは今アンタを倒さなきゃ帰る事は許されないんだよ!!」
「そんな事は私が知った事ではない、お前は私を倒せるよう強くなるだけで良い」
今にも殴り掛かれる程近付いてきたタトラの目の前に魔王が掌を翳すとタトラの目の前が暗くなり力なく崩れた。
魔王は扉番の魔物を呼び足元に倒れたタトラを拾わせると悪戯をする子供のような笑顔を浮かべ、
血が乾き黒く染まった剣を振り何処かへと繋がる瞬間移動の陣を描いた。
闇の境界から最も近い国では国の中心の王宮で王が落ち着き無く自分の玉座に座らず部屋を行ったりきたりしていた。
「えぇい、まだあの魔城は落ちぬのか?!奴隷共め、やはり役に立たぬか!」
典型的な惰性を貪ったようなふくよかな身体の王はぜぇはぁと息を切らせ、玉座の横に常備している酒瓶を掴んだ。
「あの地の力さえ手に入れば他の隣国への侵攻が容易いというのに…」
「陛下ーっ!!大変です陛下ーっ!!」
「何だ?!魔王討伐の報告が来たのか!?」
「違います、お逃げ下さい陛下!」
慌しく入室してきた兵に怒鳴るように声を上げた次の瞬間、兵の後ろに居る者を見て王の顔から血の気が引いた。
「これはこれは人の国の王、また代替わりしたようですね」
そこには優雅にマントをたなびかせながら自分の2倍もの大きさはあろう魔物を従えた魔王の姿があった。
「…ま…まぉう……、こ…この城に何をしに来た?」
「前に来た時は貴方はまだ幼い王子でしたがこうも醜く成長するとは人とは面白い物だ」
恐怖から震えてヒキガエルの様な声を発する人の王に魔王は皮肉を混めて歪んだ笑みを浮かべる。
「下らぬ戦を終える為の相談といった所でしょうか」
そう言って魔王が指を弾くと背後に控えていた魔物が魔王と王の間に何かを投げ捨てた。
「こ…こやつは…?」
「貴方が私に向けた兵と称した戦闘奴隷の一人ですよ、
勇敢にも私も下まで辿り着き、久方振りに私に刃を入れた人間です」
魔王がざんばらになった後ろ髪を指で示すと人の王は魔王と倒れている奴隷が握り締めている髪を交互に見た。
「ど…奴隷が魔王に……?」
「貴方は自分の欲のために自分の兵を使わずに奴隷を仕向けたのでしょうが、
正規の兵より奴隷の方が役に立っているようですね?
そこで提案ですが、その者を勇者に頂けませんか?」
「何だと?奴隷を祭り上げろと言うのか!?」
魔王の提案に王は一瞬眼を見開き、憤慨して怒鳴り上げたが魔王の背後の魔物が唸ると直ぐに身を縮ませた。
魔王は手を軽く上げて魔物を宥めると瞳の冷たさを一層増して王を見た。
「提案ではありますが人の貴方に拒否権はありませんよ、
無駄な労力を注ぎ続けるより一つの物の質を上げてみては如何ですか、
彼には素質がある、私を倒すという素質が」
王は魔王の言葉に唸るだけになっていた。
「貴方は彼に勇者として必要な物を最低限与えればいい、彼は自分で強くなるでしょう」
「そ…それなら良いだろう…、その提案を呑んだ見返りはあるのか?」
王のその一言に魔王は一瞬だけ人が良さそうな笑顔を浮かべ、瞬時に自分の力を衝撃波に変えて王室の壁一面にヒビを入れた。
いきなりの人外な力の解放に吹き飛ばされた王は腰を抜かし失禁した。
「何処までも愚かな人の王よ、彼が強くなり私を倒してこの国が平和に成る時が見返りだと思え!
私がその気になれば今此処でこの国を滅ぼしてやれるが?!」
「判った!何も望まん、こやつを強くする約束しよう!!」
「判れば良い、…あ、これは彼への餞別だ」
にっこりと笑顔を浮かべると魔王は背後のものに持たせていた折れた剣を手に取り、
タトラの横に移動すると掴ませていた髪の毛を取り黒く乾いた血の部分に貼り付けると小さく呪文を唱えた。
「これが私を倒せる唯一の、お前だけにしか扱えない剣だ」
折れた剣が鈍く輝くと形を変え、濃紅の美しい剣に変わった。
魔王はその剣をタトラの手に持たせると屈み込み意識の無いタトラにそっと耳打ちした。
「お前が私を倒しに来るまで待っているよ、タトラ…」
身を起こし満足げに笑むと魔王はマントを翻して闇の境界へと帰って行った。
奴隷から勇者へと変わった少年が目覚めたのは数日後、
濃紅の剣と共に彼は魔王を討つ為に修行の旅を始める―――
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