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オリジナル

|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!

 あの時は、離れてしまいそうな指先を掴み取ろうと必死だった。
 いつだって俺はお前の為に生きてきたのに、お前は理由も告げず「別れよう」だなんて……

 幼なじみの勝也と俺は、中学の時にお付き合いを始めて、それから五年、別々の高校と大学だけど週末や時間の合う日なんかは一緒に外出したり、お互いの家へ行ったり、ずっと上手くやっていると思っていた。
 大学に入って三カ月。勝也と俺の時間が合わなくなり、次第に勝也からの連絡が無くなって、別れ話を切り出された。
 理由は話してくれない。ただ、別れたいの一点張り。俺は納得出来ず、どうしても勝也を繋ぎ止めておきたくて何度も自分の想いを伝えた。だけどそれでも別れたいと言う勝也を、俺は無理矢理犯してしまった。
 結局、俺達は別れて、幼なじみにも戻れなくて。しばらくは顔も合わせない初めてのことに虚しさだけが俺を支配していたが、気まぐれで立ち寄った少し遠いスーパーで勝也がバイトをしている姿を見て、一気にあの感情が戻ってきた。
 今も、俺はお前に恋してる。

 お盆が過ぎて気温が一気に下がった。もう秋なのかと思ったら、月がかわって再び蒸し暑さが戻り、自転車でスーパーへ向かってる中、流れる汗が鬱陶しい。
 似合わない買い物カゴを持ち、インスタント食品と少しの野菜。
 レジを見れば暇そうに小袋をまとめているアイツを見つけ、俺はそこのレジ棚にカゴを置いた。
「お……預かり、します」
 俺を見て、揺れる瞳。それからは俯いたまま商品をレジに通す。
「九百三十五円です」
 千円札を出し、レシートと釣り銭を受け取った。
「好きだ、お前が」
 スーパーのエプロンを握り、小さく頭を振る。何度目かわからない告白。そのたびに俺は振られて、それでも何度だって言ってやる。そう決めたんだ。
 それから秋が過ぎ、冬の寒さに身を震わせながらも俺はスーパーへ通っている。一人暮らしを始めて自炊を覚えた俺はインスタント食品を買わなくなり、野菜や肉、調味料などを主に購入している。
「お預かりします」
 相変わらず、勝也は俺の顔を見てくれないけど、少しだけ会話をしてくれるようになった。
 キャベツ、挽き肉、玉ねぎ。あとは家にある材料で今夜の夕飯だ。
「今日はロールキャベツ作る」

 勝也は玉ねぎの個数を入力してカゴに移す。
「手間かかるね」
 話しながら挽き肉のバーコードを読ませた。
「うん、けど大量に作って冷凍しとくから」
 キャベツもバーコードで入力。
「主婦みたい」
 会計の為に向きを変えた勝也の、俯いた顔には笑みが浮かんでいて、俺の心臓は高鳴る。
「……笑った」
「え?」
 何のことかと勝也が俺を見て、驚いた顔をする。俺は笑顔でいつものように。
「大好き」
 勝也は困ったようにまた俯いたけれど、その耳が赤く染まっているのを俺は見逃さなかった。
 春はまだもう少し先だけど、いつかまた、君と一緒に。

□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!


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