ナマモノ/邦楽/くるり/唄四弦
更新日: 2011-04-29 (金) 17:58:16
ナマモノ/邦楽/回転/唄四弦。
何故か降ってきたので具現化してみました。
ジャンル者の方がいらっしゃいましたら、当方初心者ゆえ、間違い・勘違い等
あると思いますが、生温く見てやっていただけるとありがたいです。
|>PLAY ピッ ◇⊂(・∀・ )ジサクジエンガ オオクリシマース!
レコーディングスタジオの片隅に備え付けられているちゃちな椅子。そこで文庫本を
手に、少しだけ猫背になっている。そんな彼の背中の側から、そっと髪を捉えてみた。
「さとうくん、髪伸びた?」
癖があってうねうねしてる自分の髪と、艶もコシもあるまっすぐな彼の髪とでは、
手触りがまったく違う。僕はきゅっと音がしそうなくらい綺麗なそれを、くるくると
指に巻きつける。
さとうくんが、もう何年もの間肩より下の位置にあった髪の先を襟足くらいにまで
さくりと切り取ったのは、年が明けてすぐのことだ。
僕は色変えてみたり長くしたり短くしたり、ついでに眼鏡をとってみたりかけてみたり、
ちょくちょく見掛けを変えていた。けれど、ずっと隣にいた彼は、僕とは対称的に
殆んど変えていなかった。
だから、年を明けた頃には随分と驚いたものだ。10年を越える付き合いなのに、それは
ひどく新鮮なことだった。
しかしそれからもう、1年の半分以上を経た。僕より髪の短いさとうくんをすっかり
見慣れ、彼は髪をかきあげる癖が少し減った(なくなりはしない、けど)。
それを、少し淋しいと思ったのは、我ながらまた随分とメランコリックだなと思う。
僕は彼がさらさらと髪を後ろに流す仕種が、ひどく好きなのだ。
「なあ、また伸ばすん?」
まっすぐすぎて、うまく巻き付いてくれない髪を、何度も掬う。読書を中断させたと
いうのに、さとうくんは怒らない。
「んー、せやなあ。決めてへんけど」
「伸ばしとったらええよ」
「え。切れば、って話かと思った」
彼は凛々しい顔立ちなのに、かっこつけたりせずにくしゃっと笑う。ふふ、と楽しげな
声に釣られるみたいに、僕はまた彼の髪をつまみあげた。
「違う。逆。ねえさとちゃん、伸ばしとって?」
「これからまた暑くなるのに。外のライブも増えるんよ」
「今までずっと、夏場でも長かったやんか」
彼に気付かれないように、捉えた髪の先を唇に当てる。今までほど長くないから、間近に
彼の頭がある。
もうちょっと俯いて近づいたら、首筋にキスできるなあ、なんて思いながら、髪とポロシャツの
隙間に覗く白い肌を眺める。前はもっと、掻き分けんと見えへんかってんのに、なあ。
嬉しいような、勿体ないような。
肩のあたりで、揃えられた髪。僕はふと思いついて、彼にねだるように頼んでみた。
「さとちゃん、このまんま伸ばしてさ。あれ歌うて、あれ」
「あれ?」
「君の髪が、肩まで伸びて、僕と同じに、なーったら」
僕は、わざと節を外して口ずさんでみせる。さとうくんは「ああ、『結婚しようよ』」と
すぐに言い当てて、またふふふと笑った。
「でもそれ、髪の毛の長さ的には、僕よりしげるくんが歌うたほうがええんとちがうの」
それに僕、歌う人やないんやから。そう言って、さとうくんはおかしそうに肩を揺らす。
たしかに、襟足なんかは、今は僕のほうがほんのちょっと長いかもしれない。僕は
歌う人でもある。
でも、そうじゃない。そうじゃなくて。
僕は、頑なに言い張った。
「だめ。僕じゃ、だめなんよ。さとうくんでなきゃ、」
きみでなきゃ。
きみのことばが、ほしいんだから。
こんなに長く一緒にいるのに、するりするりと捉えきれない。だけどずっと一緒に、隣に
居てくれる君から、僕に。
歌のフレーズだから、なんて理由でいい。それで構わないから。
「なあ、歌うて。なあ」
まるで駄々を捏ねるように繰り返す僕に、さとうくんは困ったように首を傾げた。仕方あらへんなあと
呟く声はひどく優しくて、それがまたやるせない気分にさせる。
僕は、捉えても捉えてもするりと指を通り抜けてしまう髪に、こっそり噛みついてやった。
□ STOP ピッ ◇⊂(・∀・ )イジョウ、ジサクジエンデシタ!
方言とか似非すぎてほんと申し訳ない。
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